1992.03.20
Adios
東京ベイヒルトン Executive Room
哀-5

東京ベイヒルトンに初めて滞在した。舞浜といえばシェラトンか第一ホテルばかりなので、他のホテルのテイストも味わってみたかった。ひょっとしたら、思いもよらなかった魅力に気付けるかもしれないと期待して。ところが、それは間違いだった。魅力的な発見は皆無と言っていい。まず、宿泊日が良くなかった。春休みに入る最初の金曜日で、とりわけ子供連れの多い日に宿泊することになってしまった。

チェックインタイムの午後3時、ロビーはものすごい数の人でごった返し、その雰囲気はおよそホテルのイメージとは程遠いものだった。近所に買い物に行く程度の気軽な服装に、走り回る子供たち。これでは、ホテルで働く人々も、国際水準の高品質なサービスなど、猫に小判だと考えたくなるだろう。実際に提供されたサービスはなにからなにまで不十分で、お客さんひとりひとりに気持ちを砕き、楽しい滞在を満喫してもらおうという配慮は、微塵もうかがわせることがなかった。

しかし、それを責める気になれない哀れみのようなものを感じ、一切のクレームは言わなかった。その代わりにもう二度と宿泊することはないだろう。今回は、エグゼクティブルームに定価で宿泊した。チェックインはフロントカウンター横のゲストリレーションデスクで行ったが、団体客と同じような扱いで、あらゆる説明が不足だった。エグゼクティブラウンジの説明もせず、その他エグゼクティブフロアに滞在することで利用できる特典については、何も教えてくれなかった。

客室まではベルが案内してくれはしたが、案内してもらうために随分と待たされた。客室は海側の40平米あるツインタイプだったが、室内はすっきりとした雰囲気で、退屈なくらいシンプルだった。ヒルトンだけあって、窓には障子と襖が採用され、バスルームの壁と同じ「荒磯紋」の柄が入っている。バスルームは狭く、ユニットタイプで物足りない。客室内に高く評価できるものは特になかった。

朝食は、本来ならエグゼクティブラウンジを利用できるはずだが、混雑を予想してか、あらかじめロビーラウンジのブッフェを利用するよう決められていた。ロビー正面に位置し、大きな窓から海を望む開放的なラウンジでの朝食は、すがすがしく楽しいものだった。サービスは粗雑で、絨毯もテーブルも汚れが目立ち、行き届かないことだらけだが、チェックインから相当の時間を経過して、これしきのことには慣れてしまった。

1992.03.20
唯一の隠れ場
「マ・メゾン」東京ベイヒルトン
楽-3

スペシャルワンプライスアラカルトと銘打ったユニークなシステムがあったので、それを利用してみた。アラカルトのメニューから、好きな料理を自由な組み合わせで好きなだけオーダーして7,800円均一で、丁度「王朝」で行っている王朝の味覚のような感じのシステムだ。

オマールのサラダ仕立て、南瓜のクリームスープ、いとよりのポワレ、牛フィレのステーキ、チーズ、グランデセールを選んでみたが、料理ひとつひとつはスモールポーションで物足りなさがあるものの、値段を考えれば納得の出来映えだった。食後のエスプレッソは別料金。このあたりがなんともヒルトンのやり口だ。料理でお値打ち感を出しておきながら、飲み物は高価な場合が多い。ワインなども割高感があったが、総じて支払った金額は、手頃だったといえる。

サービスはこのホテルの他のどんな施設よりも素晴らしかった。遅めの予約だったので、窓側の大きなテーブルを用意してくれ、静かな環境でくつろいでゆったりと食事を楽しめた。内装は家庭的だが美しく、ピアノの調べも心地よかった。週末のベイヒルトン、唯一の隠れ場だ。

Y.K.