1993.05.13
パリはセーヌ、サンルイ島から
「オランジェリー・ド・パリ」表参道
喜-2

表参道にあるモリハナエビルのフレンチレストラン「オランジェリー・ド・パリ」は、パリのサンルイ島にある「オアランジェリー・ド・パリ」のオーナーであるジャン=クロード・ブルアリ氏と日本を代表するファッションデザイナー森英恵さんの共同経営による、同店の姉妹店だ。インテリアや食器類に至るまで本店さながらに再現しているという。エレベータを降りると木々を望める広々としたウエイティングスペースがあり、フレンチドアを隔てたウォールミラー張りのダイニングに至るまでの道のりは、想像していた以上に非日常を演出する効果が高い。

席に案内されると、卓上で真紅の薔薇が一輪出迎えてくれ、森英恵さんデザインの位置皿、クリストフルのカトラリー、店名の刺繍が入ったナプキン、そしてキャンドルが美しくセッティングされていて、楽しい食事のひとときを予感させていた。コースは2種類あり、8,000円のコースは前菜、スープ、主菜、デザートをそれぞれ数種の中から選択でき、更にサラダまたはチーズが付くというもの。12,000円のムニュ・デギュスタシオンは運ばれてからのお楽しみ。

というわけで、この日は12,000円の上原シェフおまかせコースを注文した。アミューズには小さなガレットが出され、オードブルとして野生のキノコのテリーヌ・パセリ風味、サーモンのマリネの2皿が続く。スープは赤ピーマンのスープ冷製ロワイヤルで、これがいちばん印象に残る逸品だった。更にフォアグラのソテー・フォンドヴォーとプラムの香り、オマール海老のグリエ・アメリケーヌソース、次いでココナッツのソルベが運ばれてきた。このソルベは口直しにしては甘い上に更に甘いフルーツのソースがかかっているため、口直しにはならないような気がした。

メインディッシュは松阪牛のロティ・シャンピニオンソースとオーソドックスな品で勝負してきたが、果たしてこのお値段で本当に松阪牛が使えるのかどうか疑問だ。デザートはチーズを2種とオレンジとカスタードのタルト、締めくくりはコーヒーと小菓子という構成。一皿ずつは少量だが、きちんと調理されていて、どの料理にもスパイスが実に生き生きと使われており、華やかな芳香だった。また、自家製のパンにはチーズのペーストが添えられ、これとワインだけでも十分おいしくいただけそうだ。

ワインはブーヴクリコのイエローラベルとムートンの85年。店内は清潔で、化粧室も申し分ない。サービスは誠実で一生懸命だが、若い給仕の言葉づかいに「〜の方」が多すぎて、聞きながら疲れてしまった。この日は満席。なお、ミネラルウォーター代は注文をしなくても黙って300円が加算される。

Y.K.