1993.11.15
一軒家の風情
「オテル・ド・ミクニ」四谷
喜-3

ミヨネーにある、かの「アランシャペル」で修行した、三國清三シェフの店。いわずと知れた日本を代表するグランメゾンだけあって、予約も取りにくい。何を勘違いしているのか、予約を受ける係の電話応対に不愉快な気分にさせられたが、この店の料理をほおばれば、その怒りはどこかへ吹き飛ぶ。

四谷から歩いても近い閑静な環境にあり、一軒家の趣きが都会の喧騒を忘れさせてくれる。素晴らしい時間はまずバーから始まる。ダイニングに併設されたウェイティングバーだと思ったらとんでもない。独立した上等なバーとして、十分な魅力を発揮し、ここだけを目当てに訪れたくなるほどの雰囲気だ。

アペリティフで気分をほぐし、連れとの会話も弾み始めたらダイニングルームに移動。大きな鏡が印象的なサンルーム風のダイニングは多くのゲストで賑わい、思い思いの花を咲かせたガーデンのようだった。楽しくて幸福な時間がそこにあった。

料理はアラカルトが素晴らしいが、得意とする味を理解するには、まずコースはコースがいい。控えめなポーションで運ばれてくる品々は、「アランシャペル」の直系を感じさせ、物静かだが力強い。シンプルな白い皿も料理を生かしている。デザートはワゴンが並び圧巻。サービスは快適ながら、時折物理的な限界を感じさせたり、疲れを見せることもあった。プロに徹してもらいたい。

Y.K.