1994.07.30
プレステージホテルの新スタンダード
パークハイアット東京 Deluxe Corner Room
喜-3

パークハイアット東京のオープンは、ホテルを語る上で間違いなくこの年一番のニュースだろう。隅々まで行き届いた巧みな演出で、初めて訪れた人を必ずあっと驚かせてくれるホテルだ。徹底的にデザインに思いを注ぎ、これまでにない個性的な空間が誕生した。

正面玄関で係に出迎えられると、レセプションのある42階へエレベータで向かう。次第に明るさを増す照明に注意を奪われていると、42階に到着。扉が開くと、そこはまぶしい天空の陽だまりだった。竹の植え込みを囲むようにゆったりとソファを配した「ピークラウンジ」と、世界のバスアメニティや日本のスーベニールを集めたサンドリーショップが、三角形に突き出たガラス屋根の下に佇んでいる。

入り組んだ廊下を進んでたどり着くレセプションは、ほどよい広さで、ゲストリレーションズがチェックインを担当する。今回はコーナールームを予約してあった。案内されたのは最上階の最高級スイートに隣接する客室だった。最高級スイートのコネクティングルームとして利用できるように、室内に扉が設けられている。案内をした係は、照明のボタンの位置がわからず苦労していた。部屋に関する知識がないのかと思ったが、この部屋の照明は他の部屋とは違って、隣のスイートと同じ調光システムを備えているため、操作に戸惑ったとのこと。

部屋に入ると無駄に広い踏み込み状のスペースがある。その部分は薄暗いが、更に奥に進めば3面の窓から日差しが差し込む居室が広がる。手前には幅広のソファとローテーブルがあり、テレビやミニバーもその近くに置かれている。ベッドはハリウッドツインスタイル。真っ白いデュベカバーに包まれた寝具は素晴らしく快適だ。天井も極めて高く、窓の更に上部にはピクチャーライトに照らされた額が飾られている。

バスルームはベッドの後ろ側にあり、ウォークインクローゼットからと、ベッドサイドからの二通りのアクセスが可能だ。窓辺に配置されたバスタブは心地よいが、バスタブに浸かったまま夜景を見ることは窓枠まで高さがあるので難しい。独立したシャワーブースもあり、アメニティもモルトンブラウン製を中心に充実している。

インテリアは非常に洗練されたもの。家具の素材やファブリックなどはさほど高級なものではないにも関わらず、極めて完成度の高い空間に見せているのは、完璧なインテリアコーディネートの成せる業だ。これまでホテル客室では敬遠されてきたブラックを大胆に使い、和の渋みに通ずる中間色を巧みに調和させた。調度品と呼べるほどの装飾はなく、スイッチやシャワーヘッド、カランなどは中堅ホテルで採用するような廉価品だ。

空間の洗練度と比較すると、サービスは稚拙だった。不慣れで、いちいちうろたえることが多く、見ていて不安だった。それをマネージャーも理解しているのか、苦情を述べればマネージャークラスがきちんと耳を傾けてくれる。それが救いだった。それでも空間の魅力は何ものにも変えがたいほどであり、東京のホテルに新しい時代の扉を開いたと言えるだろう。

Y.K.