1995.04.30
ライブ感のある風景
ホテルニューグランド Executive Standard Room
哀-2

横浜の老舗「ホテルニューグランド」のタワー上層部に位置するエグゼクティブフロアに滞在した。エグゼクティブフロアには幾つかのスイートとスタンダードルームがあるが、まずはスタンダードルームを試してみた。

チェックインはフロントカウンターでなく、後ろにあるゲストリレーションデスクで行う。担当した女性は非常に不機嫌だった。どんな理由があるのか知らないが、そんなに仕事がいやなら休むか辞めればいいのに。プロなら、ひとたびゲストの前に出たのなら、ホテルマンとして素質を疑われるような表情は決して出してはいけない。

ろくに説明もされないまま、後をベルに引き継がれた。案内をしてくれたベルガールは、まだ入社間もないという感じで、飄々としてはいるものの、どこか憎めない愛嬌のようなものを持っていて、チェックインでの不愉快な感情を癒してくれた。エレベータに乗ると、キーをささないと特別階には止まらないことを説明された。ところが、このキーのさし込み口、結構高い位置にあって、お年寄りには使いにくそうだと感じた。

客室にいく前にエグゼクティブラウンジのある階で降ろされ、ラウンジの説明を受けた。その後案内されたスタンダードルームは32平米あるそうだが、それよりもはるかに狭い印象。天井が低いことの他に、色使いに原因があるのかもしれない。濃いブルーの絨毯にハッキリした色のベッドスプレッドで、全体的に色調が濃厚だ。

バスルームはアウトベイシンタイプだが、バスタブとトイレのあるバスルーム内は非常に狭く、圧迫感がある。ベイシンの天板に使われている大理石は厚く非常に立派で、このホテルに伝統があることを物語っている。アメニティは籠に収められ、リボンが掛けられている。必要なものはひととおり揃っているが、タオルの枚数は各サイズ2枚ずつと少ない。ターンダウンはしてくれなかった。

インテリアとしては一般階よりも高級感はあるが、実質的な差はほとんどないといった方がいい。エグゼクティブラウンジでのサービスは、あってないようなもので、日中はコーヒー、紅茶、クッキーのみのサービス。朝食はごく簡単なコンチネンタルスタイルで、今まで一番簡素だと思っていた東京全日空ホテルの朝食よりも淋しかった。もしかすると、この日は稼働率が低そうだったのから、このありさまだっただけで、客室の埋まり具合で内容にも変化が出るのかもしれない。実際そうだとしても感心できないが・・・

唯一救いは大きな窓からの開放的な眺めだ。建物がそう高くないので、ライブ感のある景色が楽しめる。また、ぼくにとっては、バーニーズニューヨークに近いのがとてもうれしい。伝統のあるホテルなのに、エグゼクティブフロアのサービスは中途半端なので、「哀」。

ザ・カフェ

本館1階にあるコーヒーショップで軽い夕食を取った。非常に混み合っており、帝国ホテルの「ユリーカ」のように、入口には長い列ができていた。満席時の対応だが、多くのホテルでお粗末な対応をしている。ファミリーレストランじゃあるまいし、名前を大声で呼んで案内したり、並んでいるゲストに対し、「いらっしゃいませ」と声を掛ける前に、いきなり「何名様ですか?」と尋ねたりしている。

まずは「いらっしゃいませ」と声を掛け、満席で待ち時間が生じることに了解を得てから、必要ならば名前や人数を尋ねればいい。その時、台帳にばかり視線を落とし、お客さんの顔を見ない従業員が多いが、きちんと顔を見て話しをしておけば、案内の時も大声で名前を呼ばなくても、その人の近くまで行って「○○様ですね、お待たせいたしました」とスマートに案内できるはずだ。

残念ながら、この「ザ・カフェ」も悪い見本になってしまっていた。年季を感じさせるサービス人がこれでは、ホテルの格を下げてしまうだろう。しかし、店内に入ってからは、若い従業員が奮起しており、快適に食事を楽しむことができた。メニューは豊富で、オーソドックスながら、ホテルのコーヒーショップらしさがある品揃えだった。ドリアを注文したが、とても美味しかった。バリー氏デザインによるインテリアもなかなかよい。

Y.K.