1996.02.12
パーキング
ホテルニューオータニ幕張 Junior Suite
怒-2

この日はなぜだか知らないが幕張メッセ周辺は混雑していた。予定通りホテルに到着すると、駐車場も満車で行列が出来ていた。とりわけ慌てているわけではなかったが、列に並んで時間を浪費するのはいやだった。雰囲気から察するに宿泊客の行列でもなさそうだったので、ドアマンに声を掛け玄関近くのスペースに預かってもらおうとしたところ、きっぱりと断られた。なにも、そんなに勝ち誇ったような調子で言わなくってもいいのにという感じで。

結局は無理矢理に駐車させてもらったが、満車時の対応はもう少しマシなものを、あらかじめ考えておいてもらいたいものだと思った。多くのホテルでは、混雑時には若干の余裕があっても満車の標示を出し、宿泊客のスペースを確保していたり、駐車場が必要かを予約時にあらかじめ尋ねるなどの工夫をしている。少なくとも、満車時でもドアマンに掛け合えば必ず何とかしてくれていたので、このホテルの対応は意外だった。

その印象に輪を掛けたのがベルマンだった。荷物の扱いがとても乱暴で、生ゴミほどにしか思っていないのかというような扱いをする。小さなカートに無理に積むから、ずるっと滑り落ちてしまう。それをまた鷲づかみにして、ドスンと荷物の上に重ねる。不器用そうにしているのなら、まるでコメディー映画のワンシーンのようだが、表情が高飛車なのでギャグになっていない。

その上、フロントには係りが一人しかおらず、そのたった一人のフロントスタッフは長電話の最中だった。しばらく待っていると、奥から別のスタッフが出てきて対応してくれたが、駐車場が満車になるほどの賑わいでも、宿泊は閑古鳥で、スタッフも最小限しか配置していないという現状にはびっくりした。フロント係に到着時の印象が悪くなった幾つかの原因について、とりあえず耳に入れて置こうと思って話すと、「だからなに?」というような表情でまともに取り合ってくれなかった。これでこのホテルの姿勢は十分に理解できた。

案内されたジュニアスイートは、充実した設備と十分なスペースがある秀逸な客室だ。海に向かってV字状に建つタワーの先端部分に位置し、概ね5角形のようなかたちをしている。特にバスルームは十分なスペースを割いた総大理石張りでゴージャスな空間だ。入り口にはドレッサーとエアロバイクが置かれ、一段上がってシャワーブースとベイシン、窓側に海を望むバスタブが配置されている。

トイレはドレッサーの奥に別に設置されている。床暖房や時計の付いた発信機能付き電話、BGM設備などもあり、非常に充実したバスルームだ。特に夕暮れ時には正面に富士山を望むことができ、赤く染まった空を眺めながらサンセットクルーズ気分のバスタイムを楽しめる。アメニティも豊富で、ありがいことにクナイプまで用意してある。

リビングスペースとベッドとの間には特に仕切りはなく、完全にワンルームタイプで、2面の窓があり、一方はバルコニーになっている窓だ。TVは大型だがリビングスペースの方にしかなく、ベッドでテレビを楽しむ人にとっては不都合かもしれない。FAXやコードレス電話も備えられているし、ライティングデスクが大き目なので、仕事にも不自由しない。ターンダウンは頼まないとしてくれないようだ。

客室としてはとても居心地がよく、何度でも利用したいと思うが、幕張にはあまり用事がないし、いざ出掛けるには中途半端な感じがする。また、ハードはよいがサービスは期待外れだった。そもそも、幕張に高級ホテルがなぜ必要なのか、よくわからない。メッセをターゲットにしているのなら、お向かいのプリンスホテルで十分だし、ワシントンホテルでもこしらえたら喜ばれるだろうに。

リゾートというには単に人工的な環境だし、この周辺がこれからどう発展していくのか知らないが、先行きは明るくないような気がする。第一、サービスなしの豪華設備といえば、ブティックホテルそのものだ。このホテルでは、もう一度来ようと思わせてくれるような、ステキなサービスにはひとつも出会えなかった。

Y.K.