1996.03.30
苔むした滝
リーガロイヤルホテル Presidential Towers Deluxe Room
哀-3

タクシーでエントランスに着くと、そこは大きな宴会に出席する人でごった返していた。それも、年齢層の高い人たちばかりで、みんな運転手付きの車でやってきている。今日は重要な宴会があるらしい。しかし、宿泊フロントは比較的すいていた。

特別階「プレジデンシャルタワー」には専用のレセプション室があり、そちらでチェックインをする。レセプション室といっても、駅にあるみどりの窓口のようなもので、立ったままの手続きだし、もちろん飲物がサービスされるわけでもない。チェックインの担当者はテキパキと手慣れた手付きで処理していたが、まったく愛想がなく空港の税関をイメージさせた。

鍵はカードキーでなく普通の鍵だが、2名利用だったので2本用意してくれた。これは気が利いている。バトラーと名乗る人が部屋まで案内してくれた。フロントからゲストでごった返すロビーを抜けて、プレジデンシャルタワーズ専用のエレベータに乗りフロアへ向かう。

今回楽しみにしていたことの一つは、改装したての客室に泊まれることだった。しかし、部屋に入ってみると昔ながらのインテリアでがっかり。バスルームはとても暗く、深い色のタイルが張ってあり、バスタブの横に洗い場がある日本式のバスだが、洗い場がとても狭くて困惑した。外国人だったら使いようがないかもしれない。改装されていれば、ヨーロピアンテイストの部屋のはずだった。まぁ、仕方がない。

すでに客室にはフルーツバスケットが用意してあり、ウェルカムドリンクのコーヒーを持ってきた女性が「よろしければカットしてお持ちいたしますが」とまで言ってくれる。このフロアにはペイテレビ無料、プレス無料、ヘルスクラブ利用無料、シャンボールでの朝食無料など、数々の特典がある。特別階用のラウンジは各階にあるにはあるが、係員が常駐しているわけではなく、夕方になるとカクテルの材料と道具が並べられ、自由に飲めるようになっている。日中は雑誌などが置かれているが、あまり利用価値はないように感じた。

ヘルスクラブのプールはさすがに広々としている。春休み期間とあって、子供の姿が多かったが、割に行儀のよい子ばかりだった。また、このホテルで特筆すべきなのは、ルームサービスメニューの充実だ。ありとあらゆるものを220品目以上取り揃え、写真を多くとりいれたメニューは、眺めているだけでも楽しい。

だが、レストランの様子も気になったので、コーヒーショップ「コルベーユ」に出掛けた。年齢層の高い客層で賑わっていて、「大阪」という外国にきたような気分が味わえた。サービスはいい意味でも、悪い意味でも老舗ホテルのコーヒーショップらしさがよく出ている。そのあと、「リーチバー」へ、ナイトキャップに一杯だけを楽しませてもらったが、館内の他の場所とは打って変わって、とても静かで落ち着いていた。やはり客層は高年齢だ。東京の帝国ホテルとは比べものにならないくらい高い年齢層。

翌朝の朝食は、シャンボールで。無料なのはコンチネンタルなので、追加でフルーツを注文した。こちらもゲストが少なく、ゆっくり過ごせた。店内のインテリアは朝食には少々濃い目で、やはり夜向けなんだと感じた。ロビーラウンジは、このホテルで一番好きな空間だ。特に窓側の席に陣取って、苔むした滝を見ているのが、高い天井と店内に流れるせせらぎと共に心地よい。

大抵どこのホテルでも、客室のクロゼットに洋服ブラシが掛かっている。このホテルの洋服ブラシはとても汚れていて、「洋服ヨゴシ」になっていた。これに象徴されるように、全体的にくたびれ気味で、これから多くのホテルがオープンする大阪で、生き残っていくのは至難の業だと思うと、気の毒になってきた。大型ビジネスホテルとして開き直るか、はたまた、帝国ホテルやリッツ・カールトンと真正面からやりあえるだけの投資をするかどちらかだ。投資といっても、カネよりもアタマとココロを使った方がいいと思うが。あぁ、哀。

Y.K.