1996.09.23
東京バルコニー
ホテル日航東京 Harbor Garden Suite
怒-4

都市博の中止はぼくの仕事にもすくなからず不利益をもたらしたが、その都市博に合わせてオープン予定だったホテル日航東京は、都市博の中止にもめげず、若者に人気で好調な滑り出しをしているようだ。東京バルコニーというテーマを掲げている通り、すべての客室にはバルコニーを設置し、東京湾越しに東京の中心地を望める客室が多く、都心に近いながらもリゾート色を前面に押し出して、ゲストにゆったりとくつろいでもらおうという意気込みが感じられる。

車を寄せた正面玄関は意外に小ぢんまりとしていて、邸宅のエントランスのよう。初めて来たにもかかわらず、ドアマンから「こんにちは神田さま、お久しぶりです」と声を掛けられ驚いたが、顔をよく見るとシェラトングランデで馴染みのドアマンだった。初めてのホテルで最初に知った人に出会えるとはうれしいことだ。

小さなエントランスを抜けると、一転して開放的で広々したロビーに出る。奥はガラス張りになっていて、レインボーブリッジ方面の東京湾を眺めることができ、中央には3階のレストランフロアへと向かう大きな階段があり立体感を出している。スイートのチェックインはアシスタントマネージャーが専用デスクで手続きしてくれ、部屋までの案内もアシスタントマネージャーが同行してくれる。普段アシスタントマネージャーとはトラブルかクレームでもないと接する機会が少ないが、こうして初めから面識を持てると何かの際には心強い。

ハーバーガーデンスイートは80平米の広さがあり、それとは別にかなり広々したプライベートルーフガーデンがあるのが目玉だ。ガーデンにはテーブルセットが置かれていて、過ごしやすい季節にはこのガーデンで食事をするのもいいだろう。ルームサービスは時間によっては中国料理レストランや日本料理レストランのメニューも注文できてよいが、もう一工夫欲しいところ。

リビングルームには大き目のソファセットが窓際にあり、アーモアにはビデオデッキとバング&オルフセンのオーディオまで用意されている。電話機も外国製のゴツい代物でかっこいいし、FAXやコードレスホンの用意もある。ソファのスペースに比べると、ダイニングテーブルが小ぶりだ。ベッドルームへは大きなフレンチドアで仕切られている。バスルームにも十分なスペースを割いていて快適だ。また、随所にオブジェが配置され、演出効果も高い。

10万円を切った価格を考えると、充実した設備の秀逸な客室だと言える。しかし、その設備で得た感激を台無しにして余りあるのは、客室係のマナーの悪さだ。チェックイン後廊下に出ると、まだ他の部屋の清掃に忙しそうだ。ワゴン等で廊下を埋め尽くすのは目をつむるとしても、ぼくらが廊下を通ろうとして彼らとかち合っても決して道を譲ろうとせず、まるでこちらの方が仕事の邪魔をする悪者だと見られているようだった。

また、清掃業者のボスなのか何なのか定かでないが、不潔なポロシャツを来た下品な中年が、クリップボードとペンを持ちながら、壁にもたれかかり、足を投げ出してそのボードをチェックしている。彼はぼくらに気付き一瞬視線をこちらに向けたが、態度を改めるでもなく会釈をするでもない。パチンコやの従業員でももう少し愛想がいい。こういう人間はゲストの目に付く場所には出さないでもらいたい。

滞在中に、まだ一度しか袖を通していないほとんど新品シャツをエキスプレスのランドリーに出した。アルマーニのクラシコでプロの業者なら気を遣って仕上げてくれるに十分な高級品だが、戻ってきたのを見ると、プレスはめちゃくちゃであらぬところにアイロン皺ができているし、ボタンはほとんどが欠けてボロボロになっていた。その旨はきちんと報告したが、なんら謝罪も弁償もなされなかった。

シティスパ「然」はりラックスをテーマにしたくつろぎの空間であるはずだが、実際に行ってみたらイメージとは随分違った。プールでは大音響でビートの効いた音楽を流し、エアロビスタイルの激しいウォーターエクササイズを行っているし、女性グループが大きな声でしゃべりまくっているしで、とてもくつろぐことはできなかった。ただ、オープンエアになっているジャクジーは潮風を浴びながら都心のビル群を眺められ、なかなか気持ちよかった。できれば人のいない時に再訪してみたい。

スパ内でスポーツマッサージを受けたかったが、予約がいっぱいで断られてしまった。仕方なく部屋でマッサージを呼んだら、おばさんがやってきた。彼女は、マッサージをはじめる前に「まぁ、この部屋はステキねぇ。どうなってるの?こっちもみせてもらっていいかしら?」としばらく部屋を見物していた。帰る時に時計を見たら、見物中の時間もしっかり料金に含まれていた。ぼくがなぜ1分100円も払ってまで、マッサージのおばさんに部屋を案内しなくちゃいけないのかな?

1996.09.23
料理が浮いてる
「テラスオンザベイ」ホテル日航東京
怒-2

宿泊の予約を入れると同時に、レストランにも予約を入れておこうと思い、「テラスオンザベイ」に電話を回してもらった。電話に出た男性の係は、非常にくらい声で張りがなく、いやいや応対しているとしか思えなかった。電話を切るまでに向こうからは何一つ尋ねられはしなかった。つまり、すべてこちらから能動的に伝えたのだが、そうでもしないと永遠の沈黙合戦になってしまいそうだった。

マネージャーとは前のホテルからの付き合いなので、彼に直接予約したかったが、その日は休んでいた。マネージャーとの付き合いがなかったら、この電話の対応で不愉快になり、この店には二度と行かないだろうが、ここはぐっと我慢した。当日はマネージャーがにこやかに出迎えてくれ、帰るまで十分に楽しませてくれた。

店内は混み合っているとはいえないまでも、食事を楽しむには程よい活気があった。隣りのレストランではブッフェを4,500円で提供しているが、行列ができていて40分待ちと案内されていたことを思えば、予約なしできても席に付けるこの店は意外と穴場かもしれない。ところがランチで7,000円からという、今時グランメゾンでさえはばかるような強気の価格設定だから、店の前までメニューを見にはやってきても、みんなそこで引き返してしまう。

実際に、7,000円からというメニューを見た時には、正直いって高いと感じた。このホテルのクラスから見ても、また、「テラスオンザベイ」というライトなイメージの店名から見ても、せいぜい対岸のインターコンチネンタルと同等の3,500円くらいが妥当に感じる。店内のしつらえも、高級というよりもアメリカンテイストの明るい雰囲気で、かしこまった食事をするような環境ではない。

しかし、料理は素晴らしかった。店の全てに逆行して素晴らしかった。珍品や手を加え過ぎた料理でなく、オーソドックスな品々だがきちんと調理された料理が並び、このシェフがここにいるのは勿体無いと思った。サービスにしても、マネージャーがいなければ、非があるわけではないがあまり誉めるところもない。しかし、ソムリエに関しては、尊大な態度があまりにも無礼で、ぼくらのテーブルへのサービスを禁じたほどだった。

Y.K.