1996.11.23
何のためのリージェンシークラブ?
ハイアット・リージェンシー・オーサカ Regency Club Deluxe Room
怒-5

大阪の中心地から離れた南港にあるデラックスホテル「ハイアット・リージェンシー・オーサカ」にも、25階から27階までの3層にリージェンシークラブフロアが設けられており、このホテルに滞在する時はいつもこのフロアの客室を利用してきた。

リージェンシークラブフロアは「ホテルの中のもうひとつのホテル」のような存在で、カウンターには専任コンシェルジェが常駐し、チェックインからチェックアウトまで、さまざまな要望にきめ細やかにこたえてくれ、専用ラウンジでは、コンチネンタルブレックファスト、コーヒー、紅茶、ソフトドリンク及び、夕方のカクテルとカナッペを無料で楽しめると、ホテルのブローシャーにもタリフにも明記されている。

実際にいままでは以上のようなサービスが提供されていたので、一般客室と比較すれば、かなり充実したホテルライフを満喫できていた。クラブフロアやエグゼクティブフロアといった特別階が好まれる理由のひとつは、プライバシーが確保しやすいからだ。フロアには専任のアテンダントが常駐したり、エレベータにキーをささないと停止しなかったりと、セキュリティ面での配慮がうかがえるホテルも多い。

また、全体で考えれば大規模なホテルでも、特別階の客室数は抑えられているので、スモールラグジュアリーホテルのような快適さを期待することができる。フロア専任の係りがチェックインからチェックアウトまでトータル的に対応してくれるので、お互いに顔や名前を覚えやすく、親しみや信頼も感じやすい。滞在中に人ごみにでる機会が少なくて済むことも見逃せない魅力だ。

今回も、いつも通りにチェックインのために26階のリージェンシークラブラウンジに直接向かった。たいした荷物はなかったので、ベルマンの助けを求めるほどではなく、自分の手で運んだ。26階のエレベータホールのすぐ前にリージェンシークラブのカウンターがあるが、スタッフの姿はなかった。ラウンジではコーヒーを飲みながらおしゃべりを楽しんでいるゲストがいるが、ラウンジ内にも従業員はいない。

何かの用事で席を外しているがすぐに戻るに違いないと思い、カウンターの前でしばらく待っていた。だが、15分ほど待って見ても、だれひとり戻ってこない。どうしたことかと思いつつ、カウンターにある内線電話で、待てど暮らせどだれも来てくれないのだが、どうなっているのかと尋ねると、「すぐに係りをうかがわせますのでお待ち下さい」と言われ、その通り待つことに。

ところが、更に25分してもだれも来ない。もう一度電話を掛けると、今度は違う従業員が対応し、実は半年前からリージェンシークラブには係りが常駐しなくなったために、チェックインなどの手続きは1階のフロントで行っていると言われた。でも、係りをうかがわせますと言われて待っているのだから、すぐに来るように、そしてマネージャーにも同行するようにと伝えた。

マネージャーと係りがやってきたのは、それから更に25分後。仮にも「すぐにうかがいます」と言ったのなら、同じ館内にいてエレベータに乗って駆けつけるのに、5分もあれば十分だと思うが、何かの都合で多少時間がかかるようならば、すぐになどと表現せず、正直に何分ほどいただきたいと申し出られるほうがずっとマシだ。

チェックインのために客を1時間5分も待たせながら、涼しい顔をしてやってきたマネージャーに、まず、なぜここに来るのにこんなに時間を要したのかを説明してもらうと同時に、客の時間をすこしでも無駄にしてはならないということを肝に命じるべきだと厳しく伝えた。

ホテルは客の時間にはとてもルーズな場合が多い。チェックアウト時間を過ぎれば、容赦なく部屋に電話を入れてくるくせに、自分たちがもたもたしていることには危機感がないらしい。それでも一生懸命やっていると主張するホテルマンもいるかもしれないが、そんな言い訳をするようでは、そこはまともなホテルではない。

また、リージェンシークラブのサービス内容の現状について、細かく話しをしたが、よくよく話しを聞けば同情もできないことはない。しかし、このようなサービスしか提供できないのなら、いまのままでは詐欺だとも言えるパンフレットの内容をきちんと改めたり、リピーターに対しては、予約時に「申し訳ございませんが、チェックインは1階のフロントで承りますので」といったことをいい添えて当然だ。料金の見直しも必要ではないかと思う。

ラウンジではコーヒー、紅茶がセルフサービスで飲める以外、なんのサービスもない。朝食はカフェレストランを無料で利用できるが、客室設備やアメニティはまったく同じなのに、朝食とわずかな特典だけで、2名で8,000円の料金差を埋めるにはあまりにも不足だ。また、リージェンシークラブのカウンターは事実上機能していないにもかかわらず、デスク上には「レセプション」と書かれた標示が置かれたままだった。

失った時間はどうすることもできないが、せめて出発まで重ねて不愉快な思いをせずに済むようにしてもらいたいと言い残して客室へ向かった。ラックレート2名利用43,000円、40平米のデラックスルームは、「コンテンポラリー・ジャパン」をテーマに黒を基調としてまとめられた、洗練度の高い空間だ。

ところが、ナイトテーブルには、前の客がこぼしたのか、ビールのようなものが乾いてベトベトになっている。よくこのような清掃状態で販売できたものだ。ベッドメイクの時にも当然気がつきそうなほどに、思いっきり目立つ汚れだが、最終チェックの係りも見逃しているというのでは困ったものだ。最終的には宿泊部長から丁重な詫びがあったので、また機会があれば再訪してみる気にまでなった。

Y.K.