1998.04.04
受験生
「ジランドール」パークハイアット東京
喜-4

この日はSOUND OASISの立ち上げに際して苦労をともにしてくれた友人の誘いで食事に出かけた。彼はもうすぐ30代になるのだが現在受験生をしている。6月に弁理士の国家試験を控えて猛勉強中だ。ただでさえ時間が惜しく、お金だって使いたくないだろうに、安くない食事を振る舞ってくれるその気持ちが何よりうれしかった。たまには友達同士でテーブルで向きい、お互いの歩んで行く道について語り合うのもいいものだと思った。

ここには、ブースになったセミプライベート席があって、他人を気にせず食事がしたいときには便利だ。コースは意外とリーズナブルで3千円台から用意されている。友人は奮発して一番高い9千円のコースを注文してくれた。そんなに使って大丈夫かとこちらが心配になってしまう。品数、ポーションともに控えめで、上品にまとまった料理が多かった。特に、ホワイトアスパラガスの上にポワレした舌平目をのせた料理がよかった。

そして、1993年のシャトーラグランシュのデミボトルは思いのほかしっかりしていて、香りよく果実味の豊かな良質のワインだった。だが、最初に注文したシャンパンは温度が高すぎてだいなしだったため、それを指摘したがその時の対応が良くなかった。友人曰く「トンマな人だね」。オッチョコチョイの典型ともいえる彼にそう言われてしまっては、すくいようが無いかもしれない。

待ち合わせ時間より、早く着いてしまったのでティーラウンジで一息いれながら待った。何度となく利用しているのに、一度も窓際の席になったことが無い! 足元から高い天井まで一面がガラスなので、パノラミックな東京を一望にできるのに。いつも「いいなぁ窓際の人は」と思いながら人越しのTOKYOを眺めている。その窓際の席にTOKYOの景観より見ごたえのある人がいた。

たぶん、インド系の顔立ちだったと思うが、非常に高い知性を香らせて、幾分厳しい表情から責任のある立場を感じさせる女性がひとりで本を読んでいた。彼女を目の前にして、説教をしようなどと思う人はまずいないだろう。あの迫力はどうしたら得られうのだろうかと思案しながら、しばし見入ってしまった。ケッコウおいしそうにフライドチキンを食べていた。

1998.07.17
閉店直前危機一髪
「ニューヨークバー」パークハイアット東京
怒-1

ゴージャスなメンバーで、新宿の高層ホテルの最上階にあるバーへ寄った。23時20分到着。着くなり23時45分でオーダーストップだが構わないかと尋ねられた。ホテルの人間の立場からすれば、親切で尋ねているつもりかもしれない。あるいは、客にもう閉店だなんて聞いてないぞと文句を言われないための処置なのかもしれない。ぼくはこのように尋ねられれば「はい」と答えるだけで、別段不愉快に思わないが、名声もあ、国際的に活動している連れの感覚からすれば、不愉快なものだったらしい。

45分にオーダーストップするのは一向に構わない。でもまだ20分なのになぜそんなことを聞くんだ、と怒っていた。ホテルは親切のつもりで客にあれこれと条件付けをするが、かえって余計なインフォメーションはしない方がスマートなのかもしれない。閉店間近になって先に会計をと言われ、連れがクレジットカードを差し出した。が、一向に戻ってこない。20分ほど経った頃に、ようやくサインを求めにやってきた従業員に、「お買い物は楽しめたかな?」と声をかけていた。

一日の締めくくりに軽く一杯、グラスを傾けあっただけで、程なく帰るのだから、結果的に、入店時の余計なインフォメーションは、ない方がはるかに印象がよかった。

1998.07.24
朝から怒鳴るホテルマン
「ジランドール」パークハイアット東京
怒-2

GA-RA-KUの当日。雑用係のぼくは、早い時間に渋谷の会場に入らなければならなかったので、新宿のホテルのダイニングで朝食をとった。国際ホテルの雰囲気を味わうには、やはり朝食の時間帯がいい。それも可能な限り早い時間をお勧めする。ほとんどが外国人で、邦人がいたとしても洗練された人が多い。

静かな店内では、ミーティングを兼ねた食事をしているテーブルや、見るからに仕事ができそうな女性が、ひとりで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる姿など、見ているだけで絵になっている。悲しいかな、日本人が同じことをしてもこうは見えない。そういった客にしごかれたのか、従業員もその雰囲気にうまくマッチした無駄の無い動きをしている。

朝食時にもたもたされると結構気に障るものだが、席につくなり熱いコーヒーをすすめてくれるし、オーダーした品も滞りなく提供された。テーブルクロスもナプキンも真っ白で気持ちがいい。さぁ、これからコンサートだ、と意気揚々出かけようとメインエントランスへ。朝なのでタクシーが少なく、幾人かが車を待っている。その時ドアマンがスロープの下でタクシーをコントロールしている同僚に、大きな声で怒鳴った。

お客のためを思って同僚を急かすための言葉なのかも知れないが、ホテルマンが客の目の前で使うのに相応しくない表現で、仲間を罵倒するのはどうだろう。しかも、ここはパーソナルタッチのサービスが自慢の超高級ホテルだ。お陰で朝から極めて不快な気分になった。

その彼は、タクシーが来ると何事も無かったかのように笑顔でぼくを車に招き入れたが、ありがとうと声をかける気にはどうしてもなれず、見てはいけない舞台裏を目の当たりにしたショックをしばらく引きずった。ある意味では、このホテルの本当の姿を垣間見たような気がして、妙に納得できてしまうあたりが、余計にショックだった。

Y.K.