1998.10.28
とんかつが好きになった理由
「もん」神戸・三宮
楽-3

神戸三ノ宮の生田神社近くにある洋食の店「もん」。この店にはじめて訪れたのはちょうど10年前だった。仲良くしてもらった年上のおねーさんがこの界隈に詳しく、「なぁ、とんかつ食べへん?」と誘ってくれたのだが、「ゴメン、とんかつきらいなんだ。」と躊躇した。ところが、おいしいからと半ば強引に連れて行かれ、しぶしぶとその店に入ったのだった。

長い歴史を感じさせる佇まいで、間口の狭い店だった。入ると1階の客席はすでに埋まっていて、細い階段を上り、2階の隅の席についた。彼女は迷わず「名物とんかつ定食」をふたつ注文してしまった。メニューも見させてくれない。卓上にあるメニューにはステーキやオムライス、スパゲッティナポリタンなど、懐かしのメニューがずらりと並んでいた。程なく定食が運ばれてきた。

細くカットされたフィレ肉を一つ一つ丁寧に衣を付け揚げられている。ガルニはカレー風味のキャベツとインゲン。それに漬物と炊き立てのゴハンに、玉ねぎの甘さが絶妙の味噌汁が付いている。半信半疑で頬張ってみると、本当においしかった。素晴らしい。箸で余裕で切れる柔らかさで衣はサクッと軽く香ばしい。この日からぼくはとんかつが好きになった。でも、おいしいと思って食べられる店はまだ少ない。

この「もん」に久しぶりに行く機会が持てた。震災後ははじめての来訪だ。地震で以前の建物はダメになってしまい、新しく建て直したので、店構えがきれいになった。しかし、店内も新しくなったことを除けばほとんど以前と変わっていない。インテリアも置物もそのままの雰囲気を残してくれている。その辺にも主人の思い入れを感じる。

サービスについてはこの際とやかく言うのはやめよう。必要なことはしてくれるが、余計なことを期待してはいけない。とにかくおいしいのでその味を目当てに行くのが正解だが、おばさんたちの迫力ある店の回し方は、それはそれでいい味を出していると思う。10年前に比べると値段がすこし上がったのは確かだが、味噌汁が薄くなり、衣の歯ざわりが多少変わった感じがするのは、気のせいだろうか。

2001.03.27
釜ナンバー
「一夜一夜」神戸・東門街
喜-3

三宮界隈でも多くの飲食店が集まっている東門街付近だが、同時にいかがわしい店も多く、ひとりで歩けばおにいさんが呼び込みに近づいているような環境だ。そんな東門街からさらに路地を入ったところに連れられてやってきたのが「一夜一夜」。ひとりでもう一度来いといわれてもムリだろう。電話で予約を入れたときには満席で、30分後にどうぞということになり、その間「フーケ」で時間をつぶしてきた。食事前だというのにしっかりとモンブランまで食べて。

「一夜一夜」はやわらかい照明とモダンな和風テイストが粋な小ぢんまりとした店だった。テーブルとカウンターのみの空間は、いつも多くのお客で賑わっているという。従業員はほとんど男性ばかりで、しかも体育会系のノリ。メニューはシンプルだ。一夜干しにした魚介類を、卓上に用意されたしちりんの炭火であぶって食べる。一夜干しの種類はその日の入荷状況によっても異なるようだが、種類は豊富で産地明記の良品揃い。

そして、オーダーごとに炊き上げる銀シャリ、これが絶品だ。「トゥールダルジャン」のカモナンバーのように、「一夜一夜」ではミニしゃもじに釜の通し番号を打ったカマナンバーをくれる。おなかいっぱい食べても、一人の予算は5,000円程度と手頃なのも人気の理由だ。ただ、においがつくからあまりオシャレをして出かけず、帰ったらファブリーズを忘れずに。

Y.K.