1999.03.21
空気が薄い
横浜ロイヤルパークホテルニッコー Executive Suite
哀-2

フォーシーズンズを気持ち良く後にして1時間後。みなとみらいランプからホテルエントランスまで渋滞にはまり、やっと到着したら、感じの悪いドアマンの洗礼が待ち受けていた。「チェックインしますので荷物をおろしてください」とにこやかに声を掛けたが、親に叱られた子供のように納得いかないような素振りで渋い面のまま乱暴に荷物を扱う。

「車を停めてきますので荷物は先に65階に上げておいて下さい。」と頼むと、クロークのタグを差し出して、「1階クロークにお立ち寄りください、その際ご一緒にお運びします。」と断られた。クロークに立ち寄って出払ったベルマンが戻るのを待って上がるのでは時間が無駄になると踏んだので、繰り返しそう頼んだだが、どうしてもそうはしたくないらしい。しかし実際に出来ないことではないらしく、荷物はきちんと先に65階に運ばれた。

この程度のリクエストで面倒に思ったり、ホテルのやり方にお客を従わせているようでは、自ら「こちらは国際水準の高級ホテルではなく、3流ビジネスホテルの豪華版でございます」と宣言しているようなものだ。

65階のエグゼクティブラウンジでチェックイン。さっきのドアマンの印象の延長でか、みんな無愛想に感じる。実際ニコともしないで作業しているのだから無愛想なのだが、それは表面上のことで本当は「いいひと」なんだなと感じさせるものがあった。

ホテルという職場の雰囲気に無理に自分を合わせようとして、不自然な緊張感を持ったまま仕事をしているために、お客さんとのコミュニケーションがうまくいかないというホテルマンの話しを良く聞く。自分の友人に接するのと同じ気持ちをベースに接すれば、驚くほど簡単に気持ちを通わせられるのに、もったいない。このホテルでも多くの人が自分じゃない自分で仕事をしている感じ。誰かが地でいって、それにみんながならえば、楽しくて明るい雰囲気になると思う。チェックイン担当の女性は、帰る頃には笑顔を見せてくれた。

部屋は6414号室、エグゼクティブスイート100,000円。エントランスがとても立派。10万程度の部屋でエントランスがここまでデコラティブなのも珍しい。床の大理石のパターンも凝った意匠だ。リビングが40u程度、ベッドルームとバスルームで45u程度の広さ。全体的に濃い色調のクラシカルな内装になっている。ドレープの生地もとても立派なものだ。

しかし、せっかくの気合いの入った内装が、メンテナンスの悪さで傷みが目立つ。ソファもカーペットも染みだらけ。水まわりの蛇口部分には水垢がこびりついて、不潔な印象を否めない。また、スタンドなども凝った意匠のもので、掃除がしにくいのか、細かいところに埃が積もっていたり汚れがついていたりする。バスタブは前の人の垢が白く粉のように付着しいるし、リビングにあるソファの後ろの鏡は、見える位置に飲物かなにかをこぼした跡があるのに、拭き上げさえしていなかった。

午後8時ごろにターンダウン(スイートでもリクエストしないとしてくれない)のついでに、簡単にバスルームを洗剤で洗い流して欲しいと頼むと、ベルボーイが2人でやってきた。「客室係はもういないんですか?」と尋ねると、「この時間にはもういません」とのこと。ターンダウンも済ませずみんな帰らされてしまうのだ。それだけ人件費を抑えているということだろうか。ベルの2人はとても元気よく、かつとても丁寧にベッドを調えてくれ好感が持てた。楽しそうに一生懸命仕事をしている姿を見ると、こちらもうれしくなるものだ。

カクテルアワーのエグゼクティブラウンジは閑散としていた。飲物のメニューは以前に比べ貧弱になっていたし、注文したカクテルにはマドラーさえ添えられていなかったし、オードブルの類いは用意されていない。一方、翌朝食時のエグゼクティブラウンジは、結構な人で賑わっていたが、席数の割に食べ物が少なく、補充も行き届いていない。ジュースはあれどグラスなし、シリアルあれどミルクなしといった具合に。

フォーシーズンズからハシゴしたせいか、全体的に廃った感じを受けた。連休ということで宿泊客はたくさんいたが、ホテルらしい華やかな活気はなかった。ちょうど空港や駅のような賑わいだ。サービスも味気なく、なんとなく窒息しそうな息苦しさがあった。地上300mに満たないところでも、こんなに空気が薄く感じることもあるんだなぁと思った。あいにくの天気で外は雲。夜景が見れず残念だったので、哀の2。

2000.10.21
とんぼ
中国料理「皇苑」横浜ロイヤルパークホテルニッコー
喜-4

久しぶりに横浜でホテルらしい店に出会うことができた。横浜のホテルは観光地化して若者やファミリーを相手にしすぎているせいか、サービスにキリッとした緊張感をなくしてしまった店が多い。緊張感のかわりに和やかさとか楽しさが演出できていればいいのだが、単に慌しいかだらけているかどちらかに偏っているケースがほとんどだ。

その点この「皇苑」にはすみずみまで都市ホテルならではの折り目正しさが感じられ、終始とても快適に過ごすことができた。付け加えるなら常連の友人とともに出かけたことで、一層しっかりとしたサービスが得られたというのも否めない事実だろうが、周囲を見渡す限りは客によって出来不出来を生じるような状況には見えなかった。

週末とあってか、間際の予約では午餐の時間がとれず、すこし遅らせて飲茶の時間を予約してもらっが、朝食をしっかりとってあったので、かえって魅力的に思えた。料理は友人に任せたが、飲茶が7〜8種運ばれてきて、最後にはアフターヌーンティを思わせるような三段重ねのデザートが出てきた。一品ごとに手の込んだ小さな点心は、どれも個性的な味わいが生きており、それぞれに印象深いもの。

食事中にふと窓の外に目をやると、トンボがこちらを気にしていた。こんな高いところで何をしているのかと不思議に思ったが、もっと高い山にも昆虫は住んでいるのだから、68階でトンボを見てもあまり驚くことではないのかもしれない。

Y.K.