1999.10.01
歴史しかないホテル
ホテルニューグランド Premier Suite
哀-4

よい評判を聞いていただけに、ここのドアマン、ベルマンにはがっかりした。正面玄関に車をつけたとき、2名の熟年ドアマンがいた。ひとりは前方の駐車場エレベータの前から、遠目にこちらを見ているが動こうとはせず、もうひとりはデスクに向かって何か書類のようなものに目を落としていて、顔を上げようともしなかった。館内に目をやるとベルデスクがあり2名のベルマンが立ち話をしているが、車寄せに注意を払っている様子はない。ドアを隔てているとはいえ、距離にして3メートル程度なのにだ。このホテルでは車で到着するゲストを出迎えることには慣れていないようだ。

しばらく立ったまま様子をうかがっていると、前方にいたドアマンがやっと近寄ってきて、寝ぼけたような顔をして「なにか?」と尋ねて来たので、「チェックインをするので、荷物をお願いします」と言うと、「はい、どうぞ」と答えたが、その後には「勝手におろしてください」という語尾が付いてきそうな表情と態度だった。そうこうしているうちにベルマンが出て来たが、高慢で知性を感じさせない接客態度だった。せっかくカッコよい制服を身に付けているのに、このようなお粗末ぶりでは長い歴史を誇るこのホテルが泣くだろう。残念ながら歴史を重ねながらも、洗練を重ねることはできなかったようだ。

今回はエグゼクティブフロアにあるプルミエスイートを予約していたので、チェックインはフロントデスクとは反対側にある、ゲストリレーションズデスクで行った。このデスクに常駐しているアテンダントは、前回4年半前に受けた印象とは正反対で、自然な笑顔でゆとりのある落ち着いたサービスを提供しており、要望にもきちんと耳を傾け善処してくれた。全体が彼女のようなサービスタッチを手本にすれば、水準がぐんと上がることだろう。

タワーは202室の客室を持ち3基のエレベータがあるが、サイズ的にはやや小ぶりだ。ドアの閉まりかたが、いかにもクラシックホテルらしい。15階から17階までのエグゼクティブフロアへは、エレベータ内の鍵穴にルームキーを差し込んでアクセスする。17階にはプレジデンシャルスイート1室、プルミエスイート6室、スタンダードルーム2室の計9室のみがあり、16階にはエグゼクティブラウンジ「ザ・クラブ」、2室のプルミエスイートとスタンダードルーム、15階には4室のデラックスルームとスタンダードルームがある。プレジデンシャルスイート、16階のプルミエスイート、15階のデラックスルームは正面に港を望む、ホテル内でも特等席に位置しており、広さと料金が多少アップする。

17階のプルミエスイートは、スタンダードルーム2室分の64平米の面積がある。天井は250センチあり、大きな窓から十分な採光が得られる。入口を入ると前室があり、大きなコンソールが置かれている。前室の脇はクロゼットとゲスト用トイレがあり、それらの手前にも一枚扉があるので、ウォークインクロゼット的な使い方も可能だが、如何せんベッドルームから離れ過ぎているのが難点だ。リビングには窓に向けた大きなライティングデスクと、ソファセット、オットマン付きのソファが置かれている。ダイニングセットはなく、テレビは小さい上に向きが調節できず、せっかくビデオデッキまで備えるのに残念だ。

眺望はみなとみらい地区が望める方角と、ベイブリッジが望める方角があるが、どちらになってもあまり景観に大きな変化はなく同じような雰囲気だ。両開きの引き戸で仕切られたベッドルームには2台のベッドが並ぶが、ひとつ110センチ幅とやや小ぶりだ。窓際には洒落たドレッサーと、大きなオットマン付きソファがあり、テレビはアーモアに収納されている。ベッドルームは、荷物を収納する引出しなどはない。また、ベッドルームのドレープのみ電動で開閉できる。

バスルームは、あまり広いとはいえないが、大き目のバスタブ、シャワーブース、ガラス戸で仕切られたトイレがあり、ベイシンはシングルだ。バスタブ側の壁に、非常に大きな鏡が掛かっているので、実際よりも広いような気分になる。アメニティはとりわけユニークなものはないのだが、大皿に入れられリボンを掛けて置かれている。石鹸は一見1種類のようだが、よく見ると同サイズ、同色でフェイシャル用とボディ用に分かれている。タオルの枚数は十分でバスローブを備える。

また、シャワーヘッドやカランなど、センスのよいものを採用しており、欧風の雰囲気を演出するのに一役買っているようだ。全体にいえることだが、照明の効果がきわめて高く、ハロゲン光を多様した室内はハイライトと影のコントラストがとても美しい。また、家具類もなかなか上質なものが置かれているので、面積の割には非常によく仕上がった快適な客室だといえる。ルームサービスは午前7時から深夜12時まで用意されているが、比較的高めの値段設定になっている。

16階エグゼクティブラウンジでのサービス内容は特に以前と変わっていないが、朝食の品揃えに関する印象は以前とは随分と変わった。さほど種類が豊富だというわけではないが、ジュース2種、パン3種、シリアル1種、サラダ2種、コールドミート1種、ホットミート1種の他、チーズやフルーツ、ヨーグルトなどが並び、補充も頻繁に行っていた。

ラウンジ内は、やや雑然とした印象があり、特に奥にあるワーキングブース内は荒れていたので、整理した方が良いと思う。日中のリフレッシュメントはコーヒー・紅茶のみで、カクテルタイムには11種類のドリンクからのチョイスとなり、オードブルなどの用意はない。単なるラウンジとしての役割に終わっている感じで、いわゆるクラブ的な雰囲気は薄い。

18階には以前夏期営業の屋上屋外プールがあったが、今では廃止されてチャペルがオープンした。今回宿泊した17階の客室では、時折上の方からガガーンという激しい音が聞こえてくる。寝ていてもその度に目が覚めるほどだから相当大きい音だ。周期が一定でないので、いつ聞こえるかわからず、また、何が原因なのかもわからなかった。

「ザ・カフェ」

10月1日から「森の茸のオリジナルメニュー」というプロモーションが始まった。秋の茸を活かした4種のメインディッシュから1品を選び、スープ、サラダ、パンまたはライス、デザート、コーヒーが付いて2,500円と割安だ。また秋南瓜のテリーヌが通常1,000円のものを、このセットと同時に注文した場合に限り、500円で提供される。ちょっとしたコースの気分がディナータイムでも3,000円で味わえるのはお値打ちだろう。

その他にも、名物のドリア1,800円や、クロックムッシュ1,200円など軽食メニューが充実しており、デザートもあれこれ迷いたくなるほどに豊富な品揃えだ。この店は、妙に天井が低い。2階の宴会ロビーの天井高を考えると不思議なほどだ。空調設備も天井裏に仕込むことができずに、変わったところに設置されている。また、空気の対流が悪いのか、近くでタバコを吸っている人がいないにもかかわらず、煙い空気が滞っていた。嫌煙家は御用心を。

2001.04.28

ホテルニューグランド Tower Standard Room
喜-4

窓は床から。バルコニーがあるが、避難用で出られない。

狭いロビーは、婚礼客とゴールデンウィークを過ごす家族連れでごった返していた。ちょうどチェックインタイムに到着したので、フロントカウンターも混み合っていた。幸い行列ができるほどではなく、前のゲストの手続きが終われば、すぐに順番が回ってきそうだった。

ところが、フロントの後ろにあるゲストリレーションズデスクの女性アテンダントが、「こちらで承ります」と声を掛け、椅子をすすめてくれた。本来はエグゼクティブフロアに滞在するゲストが手続きをするデスクだ。レギュラー階の予約なのに申し訳ないなと思いつつも、言葉に甘えて手続きをしてもらった。

手続きが終わると、その女性がそのまま荷物のカートを持って客室まで案内してくれた。背の高い聡明そうな女性で、終始感じのよい雰囲気でサービスに当たっていた。この仕事が本当にすきなのか、大変なことでも苦にならない性格なのか詳しいことはなにもわからないが、ゆとりのある表情ひとつをとってもホテルで人をもてなすために生まれてきたかのような才能を感じずにはいられなかった。2年前の10月に好感を持ったアテンダントと同じ人かは定かでないが、このサービスレベルが保たれていることは素晴らしい。

客室も改めて訪れてみると、なかなか工夫や思い入れが多いことがわかる。32平米という広さは最近の水準からすれば狭い部類だが、ほぼ一面を割いたワイドな窓が開放感を与え窮屈な感じはしない。かえって広すぎる客室より、このくらいの方が肌になじんで心地よいと感じる気分のときもあるだろう。

室内で最もユニークなのは壁の意匠だ。壁の角コーナーは丸みをつけてあるだけでなく、複雑な組み方をした上に、ベッドの背とライティングデスク側の壁はベロアのような生地、そのほかの部分は縦縞のクロスと、通常画一的な壁のデザインに動きを持たせた。照明効果も大きく、雰囲気のいい空間だ。

天井高は260センチ、ベッドは114×205センチが2台入っている。バスルームはアウトベイシンタイプで、ベイシン脇にも大きな版画が掛かり、蛍光灯とハロゲン灯の明るいアンサンブルに、上質な大理石の天板がゴージャスさを醸し出している。床は絨毯敷きだ。

贅沢なベイシン空間に対して、バスルーム内はやや拍子抜けしないでもない。バスタブは標準的な大きさで、シャワーの水圧もまあまあだが、便器には洗浄機能がついていない。照明にも面白みがない。電話機は発信可能なものが備え付けられている。ベイシンの部分を合わせると、実に5平米を超える面積があるので、今の時代に設計されればもっと魅力のあるバスルームが実現しただろう。

アメニティは共通の甘い香りが印象的なオリジナル。タオルは3サイズ揃っているが、バスローブはなかった。とても感じのよい客室ではあったが、モジュラージャックが見当たらなかったり、ボイスメール機能がないなど、ハイテク化には遅れをとっているようだ。仕事を離れてくつろぐ時に利用する方がいいかもしれない。

パノラミックレストラン「ル・ノルマンディ」

昼と夜はフレンチをベースにしたメインダイニングだが、朝食時にも営業している。コンチネンタル1,600円、フルブッフェが2,600円だ。メインダイニングとしては非常に広いスペースを持った店で、大型客船のダイニングを思わせる造りだ。セクションごとに椅子のデザインや座席配置が違っており、変化を持たせている。なんといっても、最大の魅力は正面に見る山下公園越しの横浜港の景観で、早めの時間に入店して正面奥のセクションにあるコロニアルテイストの席を確保したいところ。

テーブルには真っ白いクロスが掛かり、店のロゴ入りのやわらかいナプキンや、同じくロゴ入りの食器、クリストフルのカトラリーなど、横浜で最もゴージャスな環境での朝食だ。ブッフェ台にはカナッペ、ニース風サラダ、スモークサーモン、コールドミート、シュークルト、オムレツ、パンケーキなどのほか、新鮮なカットフルーツが種類も豊富に美しく並べられている。しかし、サービスはあまり気が利かず、雰囲気も暗い。そして、客室からスリッパのまま来てしまうほどに客層が悪く、無愛想なサービスと、お互いに足を引っ張り合っていた。

Y.K.