2000.03.04
意識も改装を
ザ・ナハテラス Club Executive Suite
楽-3

広々としたクラブラウンジ

リージェント沖縄として誕生し、その後全日空ホテルズの傘下に入ってパレスオンザヒルと名乗っていたこのホテルが、1999年の夏、沖縄屈指の高級リゾート、テラスホテルズの一員となった。以前から那覇で最も快適なホテルライフを実現させてくれる優れたハードを持っていたことは言うまでもないが、ブセナテラスの特徴であるオープンエアの発想をふんだんに盛り込んだリノベーションによって、さらにリゾート色豊かに再スタートを切った。

ロビーエリア、ラウンジバー、レストランなどにオープンテラスを設け、エステサロンやクラブラウンジを増設した。更に、鉄板焼レストラン棟と沖縄新都心に通ずる新しいエントランスも完成させている。客室はブセナ同様にラタンの家具を配し、南の島をイメージさせる内装に一新した。だが3日間過ごしてみて、この改装がすべてプラスの効果をもたらしたとは思えなかった。確かにオープンエアという発想は素晴らしい。温暖な気候の土地ならではの圧倒的な開放感が得られる。その理由から、パブリックスペースの改装は大成功だったといえる。しかし、客室はどうだろうか。

三角形に張り出した超ワイドな窓は、夜ともなればまるで宙に浮いているような錯覚さえ感じさせてくれていたが、残念なことに両脇を木製ルーバーで遮蔽してしまった。このルーバーは動かすことができないので、今は新しいので清潔だが、いずれ裏側に埃が積もり、美観を損ねることになるだろう。以前はヘッドボードがなく、ベッドからそのままバスルームと行き来ができ、ルーバーを開け放てばバスタブに浸かりながら那覇の景色やテレビを見ることができたが、今ではヘッドボードが邪魔をして視界を遮っているし、テレビの位置が変わったので、もはやベッドからもテレビを見ることはできない。

以前は大理石の天板がついたウエットのミニバー設備があったが、その大理石の天板の上に無粋で安物の板を載せてシンクを塞ぎ、その上にテレビを収納するアーモアと食器棚を設置した。どうしてまた立派な石の上にチープな板を載せてしまったのだろう? さらに、家具の色調が濃くなったせいか、50平米の部屋が以前よりも狭く感じられる。

逆に、直して欲しいところは手が加えられていなかった。例えば、快適なバスルームは以前のままだが、蛍光燈がノイズを出し、かなり気になることも以前のまま。バスタブに汚れが付着してざらざらするのも以前のままだ。空調の作動音も相当気になる。デュアルライン電話機の使い方案内もなく、BGM設備はヘッドボードの陰になりまったく見えないが、その案内もディレクトリーのどこを探しても見当たらなかった。全体的に上辺だけを繕い、肝心な部分には無頓着な印象を受けたが、客室に関してはホテルを知り尽くした人間がデザインしたとは到底思えない改装内容だった。

ナハテラスになると同時にクラブフロアが新設された。4階から7階までがレギュラーフロア、8階から10階までがクラブフロアだから、なんと全体の40パーセント以上がクラブフロアに当たる。オープンテラスを併設した広いクラブラウンジは2階に位置し、チェックインからチェックアウトまでパーソナルなサービスを受けることができる(ただし、チェックアウトの手続きは1階フロントで行う)。

つい最近まではメインの料理を選択することのできる充実した朝食をクラブラウンジで提供していたが、現在は12時30分から20時までの営業のみとなっている。ラウンジではリージェント沖縄から海外のリージェントを経て、再びナハテラスに戻ったという女性アテンダントが心からの歓待をしてくれるので、きわめて快適に旅先の我が家のような感覚で利用できるが、まともにサービスできるのは彼女ひとりきりなので、彼女が休みの日には一転して気の利かないラウンジと化してしまう。終日のソフトドリンクのほか、15時から17時まではペイストリーシェフ特製のケーキなどが並ぶ。ラウンジ奥にはミーティングルームとコンピュータブースがあり、インターネットを無料で利用することが可能だ。

クラブフロアの客室はほとんどレギュラーフロアと同等で、歯磨き粉の量が多いとか、シャンプーの質が違うといった程度の差なので、ラウンジでのサービスが料金差のほとんどを占めると考えて良い。エグゼクティブスイートを例に取れば1万円の料金差を価値ある投資とするためには、足繁くラウンジに通ってあれこれと飲み食いするとか、アテンダントにワガママなお願いを聞いてもらう他にはなさそうだ。付け加えると、男性はサウナが無料で使えるとのことだったが、ビジネスや観光で那覇を訪れ、日中ホテルを留守にする場合はレギュラーフロアで十分だと思う。

ブセナ同様、チェックインは椅子に腰掛けながら、ウェルカムドリンクのサービスとともに手続きでき、滞在中はバトラーをはじめ、ホテルの言葉を借りれば「洗練を知り尽くした」スタッフによるフルサービスを受けられることを売りとしているが、残念ながら現時点ではバトラーたちの洗練度はゼロに等しい。都市型ホテルでは当然あるべき一通りのサービスは実践しているので、二流のホテルだと思えば満足できなくもないが、「世界品質を目指す」という意気込みに期待して出掛けるととんだ肩透かしにあう。

ホテルでのサービスは常に単調な流れ作業では完結しない。その時々に自分がなにをすべきなのかを正確に把握する能力がなければ務まらない仕事だが、それを心得ているスタッフはほとんど見当たらなかった。若いスタッフたちはスポンジのように吸収力がありそうだが、そこに技術や心を注ぎ込む優れた指導者が存在せず、上に立つものもまた若くて未熟であるようだった。客室電話からのバトラーコールボタンも不便極まりないものだった。ルームサービスを注文しようとボタンを押せば、次のセクションにたらい回しされるだけなので、直通ボタンを設けてくれた方がありがたい。ある不備があってバトラーに問い合わせたら、「わたしは担当ではないのでわかりません」という返答さえあった。

ルームサービスの注文では、料理が届いた時にカトラリーを忘れられ、それを再度届けるまでに30分を要し、今度はその間に冷めてしまった料理を作り直すのにほぼ40分を要し、料理にありつけるまでに2時間ちかくが経過して疲れ果ててしまった。滞在中、ドントディスターブボタンを点灯させていたところ、客室係から清掃を催促する電話が3度あり、廊下に出たとたんに責任者らしい女性がパートと思しき女性に「まだなのか、確かめなさいよ」とわれわれの目の前でたしなめている姿も見受けられた。目の前にその部屋の宿泊客がいるのだから、責任者自ら尋ねればいいものを、ストレスを感じさせる口調で指示している言葉を間接的に耳にするのはとても不快だった。ステイ清掃の時間は、あらかじめ客室係に予約してあったにもかかわらずである。

それでもなお、このホテルは那覇のベストホテルだと思う。一日も早く本当に洗練を知り尽くし、テラスを通り抜ける風のように自然で心地よい世界品質のサービスを提供していただきたい。

2面の窓を潰してしまったルーバー ベッドボードが高くなり、バスタブから室内を見渡すことはできなくなった

快適なバスルームはそのまま あっという間にいっぱいになるバスタブ

日本料理「真南風」

沖縄と聞いて、食べ物がまずいと連想する人も少なくないと思う。特に周遊ツアーで沖縄を旅行した人たちからは、駆け足で島内を巡り、観光客相手の料理屋で舞踊などを眺めながらひどい料理をあてがわれたという話をよく耳にする。その値段じゃ無理もないよといいたくなるような格安料金のツアーの場合、なにも沖縄に限ったことでなく、まともな食事にありつけることを期待する方が間違っているのかもしれない。

近年、沖縄方面のツアー価格は手頃になり、温暖な気候を求める高齢者に人気のディスティネーションとなったが、格安ツアーは同時に沖縄嫌いも生み出し続けている。「食事がおいしくないから、もう一度行きたいとは思わない」という感想を多く耳にするのは残念なことだ。そうした沖縄嫌いの皆さんにいつも薦める店がこの「真南風」だ。リージェント沖縄の「うえのや」、パレスオンザヒルの「雲海」、そしてナハテラスの「真南風」と名前は変わっても、料理長は開業当時のままで、手の込んだ上質の日本料理をお手頃価格で提供し続けている。

数あるメニューのなかでも「お昼の料理長おすすめ」は、一番のオススメ品だ。2,000円で下の写真にある膳のほか、デザートも付く。和服姿の女性サービススタッフもよく気が付き、2種類のお茶、2回のオシボリサービスなど、控えめなタッチでスムースなおもてなしを約束してくれる。ただ、今回の膳には、もしや既製品かな?と思わせる小鉢や、まさか冷凍食品?と疑いたくなる揚げ物など、原価を抑えよとの司令がどこからともなく響き渡っているような感じがした。魚の煮物や刺し身はいつもながら素晴らしかった。開業当時の誇りを保って、上質な料理を提供し続けていただきたい店だ。それだけの実力は十分にあるのだから。

お昼のおすすめ料理

オールデイダイニング「ファヌアン」

まったくもってどうしたことか。朝食事に訪れた時は、朝からまったく不愉快そうな表情でサービスするものだなと、まず第一印象が良くなかった。注文を取る際、連れのひとりが最初にコーヒーと頼んだものを紅茶に変更した。「昨日は濃いコーヒーを何杯も飲んでしまったから」と微笑みかけても、「だからなに」と言わんばかり。決して強張った表情を崩しはしなかった。注文を取った当人が心の中でどう感じているかは、本人でなければ定かにはわからない。悪気はないのかもしれないが、問題はそうは見えなかったことである。

食事中は最高で9卓の席が埋まったが、従業員は5人。十分に目が行き届くはずなのに、紅茶のおかわりをもらうために従業員を捕まえるまで、10分以上掛かった。近くを通りかかっても、目的のテーブル以外には目もくれずに歩いている。回りを見渡すと、他のテーブルでも何かを頼もうと従業員の注意を惹くために苦心しているようだった。もう少し客席に注意を払ってもらいたいとマネージャーに指摘したあとも、サービスの状況は変わらなかった。もうこの店は死んでいる。

同じ夜、打ち合わせで遅くなり夕食の時間を逃してしまったため、軽食で済ませようということになり、性懲りもなくもっとも遅くまで営業しているこの店に入ってしまった。3名でそれぞれに注文を済ませたが、しばらくして我がパスタだけがテーブルに運ばれたきり、連れたちには何も出てこない。軽食とは言え、一応サービスのタイミングを計りやすいように品数は揃えてオーダーした。ところがオーダーの一部を聞き漏らしていたことが判明し、料理が不自然で不規則な提供になったわけが理解できた。

この夜も、前日のルームサービス同様、軽食にありつくまでに2時間近くを要してしまった。たとえ不手際があっても、許せてしまう雰囲気を持つ店というのも多く存在する。だが、この店はそれとは逆に、少々のことでも一層不愉快さを上塗りするような何かが潜んでいた。それでも、目の前でこしらえてもらうシーザーサラダのおいしかったこと。作り直してもらったシンプルなトマトソースのパスタも良い状態だった。

2000.03.09
サミット会場の宿命
カフェテラス「ラティーダ」ザ・ブセナテラス
喜-2

ラティーダ

当初はブセナテラスに2泊する予定で東京を出発した。もちろん予約も取ってあった。旅程を決めて準備万端調ったところに「ブセナのビーチで工事をしているらしい」との情報が飛び込んで来た。早速ブセナに電話で問い合わせてみると「確かに工事はしておりますが、さほど気にはならないと思います」との返答だったが、あまりにもあっさりと答えが返って来たことでむしろ不安になり、より信頼のおける立場の人に直接詳しい情報を聞くことにした。

それによると、工事の状況は日々違っているが、ビーチのみにとどまらず敷地内全体に及び、もっとも活発な場合、早朝の6時台からクレーンなどの騒音が鳴り出し日没まで続くほか、ヘリコプターが旋回する音や、裏手をダンプが通る音などかなりの状態だとのこと。ゲストからはクレームが生じたり、痺れを切らして他のホテルに移るなどの事態も生じていると説明された。サミットに間に合わせるために急ピッチで進むこの工事は、国家事業によるものでホテルの都合とは関係なしに強行されている。

とはいえ、どの程度の騒音が生じるか、宿泊客に提供するクオリティにダメージがないかは、事前に把握するなり予測を立てなければ恐ろしくて予約が取れないような気がするが、その点沖縄人らしいおおらかさが裏目にでて、蓋を開けてみてから困り果てている様子だった。景観なしの騒音付きという悪条件で、いまどき東京の一流どころでさえ憚るような強気も強気なラックレートしか提示しないというのは、いかがなものだろうか?

リゾートにおいては料金のうちその環境に対して支払う割合が大きいわけだし、せっかく訪れたゲストがガッカリする様子を繰り返し見るのは、スタッフもつらいはずだ。それでもこの料金を譲らないというのならばせめて、これから宿泊を予定しているゲストに対して、現状をよく説明した上で決断してもらうよう努力すべきだと思う。とりあえず、騒音の状況は聞いたので、出向いていきなりがっくりということはなくなった。しかし、滞在が価値あるものになるかどうかの不安は拭えなかった。それでもなお、一方ではリゾートで環境が悪いとどのような滞在になるのかを実体験するいい機会だという思いも捨て切れず、結局予約をそのままにして、沖縄に出発した。

ところが、ナハテラスに到着するや否や、ブセナテラスのスタッフが待ち構えており、ラウンジでスムージーを飲みながらしばし話をした。その中で、ここ数日来工事が一層激化し、働いている人たちにまでストレスが及ぶような状態であることを知らされ、とてもではないがこの状況では満足のゆく滞在をお届けできないと説明された。サービスでカバーできればよいが、それで埋まるものではないと判断したそうだ。那覇に着いてからそう言われても困惑してしまうが、そうした潔さもサービスのひとつかなと思い、彼の助言を尊重して今回のブセナ滞在は見送ることにした。7月のサミットが終われば、岬の突端付近に増設されたプライベートプール付きのラグジュアリーなヴィラも一般予約が可能となるらしい。次回はそれを狙ってみようと思う。

かくして、よそのホテルに滞在せざるを得なくなったが、その代わり昼食に立ち寄ることができた。国道からホテルの敷地内に入ると、とたんに工事現場ビューに変わる。駐車場だったところはヘリポートに改装中で、メインの会議場方面から戻ってくる大型ダンプとひっきりなしにすれ違う。会議場の入口では24時間装甲車による監視も続けられているとのことだった。メインエントランスに降り立ち、高い天井のロビーに足を踏み入れ、正面の景観を見た時は驚きを禁じ得なかった。「ようこそ、大自然のテラスへ」というキャッチフレーズは一体なんだったのだろうかと感じるに違いない。

「サミットの準備」という大義名分を掲げられては、泣き寝入りするゲストがほとんどだろうが、何も知らずに指折り楽しみにして出掛けてきて、いきなりこの状態に直面してはさぞかし遺憾だろう。静かな波が打ち寄せるばかりの美しい景観があるべきところに、工事用の船やクレーン、ブルなどが陣取り、海を濁らせながら邪悪で不気味なイメージの騒音をたてまくっている。「ちょうどお昼休みで今は静かな方です」とのこと。まぁ、確かに今の程度なら客室に入って窓を閉じ、BGMでも流せばマスキングされて気にならないかもしれない。ひどい時にはドリルで岸壁をうち崩す工事があり、振動も伝わって来たそうだ。

特にクラブフロアの客室とは直線にして10メートル程度しか離れていないのだから、ステイゲストはたまったものではないだろう。しかし、すでに美しいビーチがあるのに、なんでまたビーチを増設しているのか尋ねたところ、サミット会場からは現存のビーチは見えないが、首脳らにビーチの見える環境で話し合ってもらった方がいいとの発想から、12億円を投じて「見えるビーチ」を増設しているとのこと。

クラブフロアのラナイからは打ちつける波が近くに感じられ、しかも横たわる人影が目に入らないところがポイントだったのに、それらは損なわれてしまった。このような状況にもかかわらず、ロビーには次々とゲストが到着する。ほとんどがバスで乗り付ける団体客だ。時間帯によっては神秘的な表情さえ見せる堂々たるロビーも、この時ばかりは空港の出発ロビー状態。商売繁盛、おおいに結構。

さて、喧燥から逃れようとレストランを選ぶが、メインダイニングは夜の営業のみなので、この時間唯一海を眺めながら食事のできるカフェテラス「ラティーダ」へと向った。正午を若干回った程度の店内はとても静かでいい雰囲気。昼はランチブッフェ2,500円のみで、店内中央にさまざまな料理が並ぶ。とても美しく、立体的にディスプレイされており、どれもこれも味わってみたくなる。だからといってひとつの皿に無節操な盛り付けをするのはカッコ悪い。

連れの女性たちには席に着いたままドリンクを楽しみながら工事現場を眺めていてもらうとして、ぼくはそれぞれの好みを考えながらバランスよく盛り付けた皿をテーブルまで運ぶ。オードブルからデザートまでフルコース仕立てで楽しんで2,500円とはお買い得。ぼくも給仕をしながら結構楽しめた。入店してからしばらくすると、サミット関係とおぼしきスーツ族や警察の団体など、ちょいと場違いなのでは?といいたくなるようなこわ〜い人たちで席が埋まってしまった。見てくれはともかく、食べる食べる! 料理はたちまち空っぽ。問題がその後だ。

なかなか補充がされないし、ブッフェ台のメンテナンスも良くない。若い給仕人たちはあまり気が利かず、空いた皿もなかなか下げに来てくれなかった。ホテル全体に言えるが、若いスタッフたちが未熟すぎるので、もっとしっかり教育してあげて欲しい。すれているようには見えないので、方向さえ与えてあげればどんどん伸びるはずだと思う。

食事の後、ロイヤルスイートを見せてもらった。開放的で工事がなければいい環境だと思うが、意外とオーソドックスなしつらえで、これに50万は出せないという印象。サミットでは小渕総理らがステイするらしい。総理はこのトイレでなにを思うのだろうか?なんて考えながら一通り見せてもらった。

余談だが、ブセナ以外の宿泊候補地としてカヌチャを薦められたが、ブセナとカヌチャを並べるというのにはどうも賛成できない。クレームが発生した際の送客先もカヌチャだそうだ。カヌチャに宿泊をしたことはないが、わたしが食事に訪れたときに比べ革命的な向上が図られたというのでない限り、つりあうものではないと思う。確かにカヌチャの客室は広いが、寝具の質、清掃の状況などもいまひとつだし、貸し別荘のようなイメージが強い。個人的にはブセナかカヌチャなら100パーセントブセナをオススメする。

チェックインをするエントランス前のテラスからは、工事現場が正面 ビーチに出てみると、工事の騒音は一層激しくなる

リビングからベッドルームを見る テラスからの眺め

2000.08.20
シティリゾート
ザ・ナハテラス Club Deluxe Room
楽-4

今では珍しくなくなった総大理石張りだが、石そのものの風格が違って豪華。

9月のコンサートプロモーションのため、マネージャーと共に沖縄へ出向いた。7月の観光客を奪ったサミットも無事に終わり、島内にはどっと人が流れ込んでいたため、飛行機もホテルも手配には苦労した。那覇で常宿としているこのホテルもフル回転が続き、急な予約ではいつもの客室タイプが用意できない状況だった。開業以来スイート以外の客室を利用するのは初めてだったので、少々抵抗がないではなかったが、売り切れているものは仕方がない。

午前中の便で東京を出発し、ホテルには午後1番で到着。エントランスに降り立つと、すぐにクラブラウンジに案内され、パイナップルジュースとオシボリでリフレッシュしながらチェックイン。その対応はまさに我が家に旅から戻った時のような感覚で、気持ちがみるみるほぐれてゆくのが実感できる。以前はベテランの女性がひとりきりで切り盛りしていたクラブラウンジだが、現在は複数のスタッフが常駐するようになり、皆それぞれの人間味を感じさせる心のこもったもてなしで応じてくれる。

再度、朝食をこのラウンジで朝8時からとれるようになったが、メニューなどは特に用意されておらず、係が口頭で説明しながらオーダーを聞くシステムだ。内容はフルアメリカンブレックファストで、ヨーグルトやサラダなども用意してくれる。気候のよい時はテラス席も利用可能なので、市街地にいることを忘れてしまいそうなすがすがしい朝がスタートできるかもしれない。とかく都心のホテルでの朝食はササッと済ませてしまうことが多いのだが、ナハテラスでの朝食はゆっくりと時間を掛けて楽しめるので、気が付くと1時間半くらい経ってしまっていることが多い。快適なラウンジがあると、ついついそこで過ごす時間が長くなるものだ。

さて、初めて利用したデラックスルームも、負けず劣らず快適な空間だった。35平米の空間はちょうど手頃な広さで、窮屈でもなくさりとてもて余すでもなく、しかも使い勝手のよいレイアウトだった。入口を入るとクロゼットがあり、その扉のうち1枚は内側が全面鏡張りになっている。クロゼット内には室内のものとしてはやや大き目な金庫が用意されていが、この金庫、エグゼクティブスイートにはなかったように記憶しているがなぜだろうか。

窓は3角形に突き出しており、カーテンはなく木製のブラインドが掛かっている。ワイドなコーナーウインドウからは那覇市街や新都心を眺めることができ、時間帯によって表情を変える景観は長いこと見ていても飽きない。特に朝方の空が色を変えてゆく様は印象的だ。窓際には円形のテーブルに2つの肱掛椅子が置かれ、そのうちひとつにはオットマンが付いている。ライティングデスクはある客室とない客室があって、今回の部屋にはなかった。

いずれの場合でも、電話機はライティングデスク上ではなく、円形のテーブルに設置されている。以前はベッドサイドの壁面にも発信可能な電話機が設置されていたが、ナハテラスに改装される際に撤去されてしまった。就寝中に電話が鳴った場合、起き上がってテーブルの受話器で受ける以外になく極めて不便だ。また、せっかくアタマの上が便利な棚状になっているのに、ヘッドボードを立ててしまったことで、棚が仕様不可能になってしまったばかりでなく、ラジオの操作盤も見えにくい位置に隠れてしまった。

ミニバーに新たに増設された棚も、スイート同様にせっかくの大理石を無駄にしている上に、ホームセンターで売っているような安普請な材質で妙に浮いている。全体的に大変よいコーディネートを見せているだけに、使い勝手や質感を無視した改装はマイナスポイントが大きい。モジュラージャックやコンセントが不足している点も、時代に逆らっているように感じる。

客室の天井高は255センチと少々低めだが、ベージュなどの優しい色調でまとめているので開放感がある。バスルームは210センチの天井高で、総大理石張り。十分なスペースにゆとりある配置を施した、洗練度の高いバスルームだ。シャワーブースはないが、バスタブに付き物のシャワーカーテンがなく、その代わりにガラスのパテーションが設置されておりユニークだ。アメニティは充実しており、タオル類も上質。ゲストステーショナリーもとても上質だが、困ったのは絵葉書。横書きの場合、切手を貼る位置は常に右肩になるはずだが、すでに左肩の位置にスタンプという印刷が入ってしまっている。これは、ブセナテラスのものも同様だ。

今回の滞在中はアポイントが多く、プールは結局10分くらいしか居られなかった。タイルを張り替えてよりシックな雰囲気になり、芝を敷き詰めたスペースも増設された。オンシーズンだというのにプールサイドには他に人影がなく、時折感じる風と強い日差しがオキナワの夏を感じさせてくれた。都市ホテルとしてほぼ申し分のない機能を持ちながら、リゾートとしても穴場的存在のナハテラスは急速に成長を続け、出会うたびに新鮮な驚きとやすらぎを与えてくれる、まるで大切な恋人のようなホテルだ。

ベッドとバスルームの位置関係がユニーク 窓からの眺めはYKお気に入り。アーモア上の黒いPAYTVの機械が目障り!

バスルームの扉を開け放てば、ワンルーム感覚で使える。 バスタブにはシャワーカーテンの代わりにガラスのパテーションが。

オールデイダイニング「ファヌアン」

3月に訪れた時には、10年以上(店名こそ「ガーデンテラス」→「ル・パティオ」→「ファヌアン」と変わったが)も通い続けた関係にピリオドを打ちたくなるほどに失望して店を後にした。今回はそれ以来の利用であった。なぜ再び利用する気になれたのか。それは、この店のスタッフの熱意にほだされたからである。店からひとりの顧客が姿を消したからといって数字の上ではさしたる問題は生じないから、縁の切れた客からの信用回復に本気で取り組むことなどそうあることではない。しかしナハテラスのスタッフは違っていた。館内でぼくを見るなり駆け寄ってきて、かつての不行き届きを重ねて詫びた上で、今度こそ満足ゆくようにもてなすのでぜひ来店して欲しいと言った。ぼくはその言葉ではなく彼の表情に心動かされた。半年前とは同じ人とは思えない、実によい表情になっていたのだった。

約束の合間を縫って早めの昼食にと、11時半からのランチタイムに合わせて出掛けてみた。入口では一歩先に着いた女性グループが気持ちのよい出迎えの声を掛けられ、席へと案内されていった。我々は入店が続くことを見て取り案内のために中から出て来た別の従業員に導かれて店に入った。客室同様色彩を極力抑えたインテリアの店内は清潔さが際立ち、真っ白なリネンが窓からの日差しを眩しく反射している。

食前酒にデミのシャンパンを頼み、せっかくだからちょっと贅沢して高いコースを注文しようかとメニューを眺めてみると、高くなればなるほどありきたりな感じで魅力が薄れてゆく構成だった。大変謙虚な品揃えだといえないこともないが、さすが高いだけあって魅力的だと思わせるメニュー構成を期待したいところだ。結局2000円のランチコースを注文することになり、メインディッシュを数種類の中からチョイスし、パスタかスープを選んでオーダーし終えた。オードブルとデザートはブッフェスタイルになっているのだが、このブッフェの内容には大変満足した。ランチのスタート早々で手付かずであったこともあるが、とても美しく盛り付けられた料理は見ているだけで楽しくなってくる。

20種にも及ぶ各種オードブル、トッピングが豊富な新鮮サラダなどなど、オードブルブッフェとパンがあれば十分満足のゆくランチになるというのに、別にしっかりとスープかパスタとメインディッシュが付いてくる。メインディッシュも堂々とした量でガルニまでアツアツ。これなら単品で注文しても2000円なら文句ない料理だ。その上、充実したデザートまで食べ放題だ。スイス人パティシェが作る上質なケーキは、ケーキがあまり好みでないぼくにもおいしいと思える出来映えで、その他にも新鮮なフルーツ、アイスクリーム、ムース、温かいパンプディング、焼き立てクッキーなど30種類近いのだから、これが東京にあったら大変な騒ぎになりそうな内容。これでしめて2000円とは驚き。

サービスに関しては、マネージャークラスのモチベーションが高くなったせいか、楽しい雰囲気と共に積極性が感じられるようになった。とはいえ、若いスタッフにはまだまだ知識が十分でなかったり、目配りなどのスキルが不足している印象が強く残った。これからは、先輩が経験の浅い者たちをどう指導してゆくかがカギとなりそうだ。

鉄板焼「龍潭」

パレスオンザヒルの時代には何もなかった場所に増築したかたちで出店した鉄板焼レストラン「龍潭」は、そのロケーションを活かし、一軒家感覚の開放的でゆとりのある雰囲気が楽しめる。パレスオンザヒル時代の鉄板焼「うえのや」があった場所は現在クラブラウンジとなっているが、価格的にももっとも贅沢な店にしては取って付けたようで冴えない感じだった。味も価格も不満を残すような感じではなかったのに、ぜひまた来ようと思わせるような雰囲気はなかった。館内からはプールサイドを横切り、アウトドアの連絡路を抜けて向うのだが、その演出だけでも心躍るから不思議だ。

観光で賑わう沖縄だが、この日の「龍潭」は閑散としていた。他にも選択肢がたくさんある市街だから、もっとリーズナブルにもっと旅行気分の味わえる食事ができる店がいくらでもあって、しいてホテル内で食事をする観光客は少ないのかもしれない。コースは手頃な5000円から用意されているが、「ファヌアン」と違ってこちらではさすがに値が張ればそれなりにおいしそうになってゆく。コースとしてはちょうど中間くらいの10000円コースを注文してみたが、県産の牛肉をはじめ、沖縄ならではの素材をつかった内容で、十分に楽しむことができた。

鉄板の前に立つシェフはつかず離れずサービスに当たり、閑散とした店内でも気兼ねなく食事を進められた。開け放たれた扉から風が舞い込んできて、まるでリゾート地でバーベキューを楽しんでいるような雰囲気すら感じられた。

2000.09.23
失望から信頼へ
ザ・ナハテラス Club Executive Suite
喜-5

早朝に仙台を車で出発して羽田経由で沖縄入りをしたが、思いのほか体力を消耗する長旅だった。朝晩はひんやりとさえする仙台からすると、まだまだ夏の日差しそのものと感じられる沖縄は好天に恵まれ、そのままリゾートに向いたい気持ちを抑えてナハテラスにチェックインした。8月に来た時も以前とは随分雰囲気が変わって来たなと思っていたが、今回到着してみてその思いが確かなものになったような気がする。

特別何かが起こったわけではないのだが、従業員ひとりひとりから感じ取れる空気が、この半年で随分と洗練されたようだった。笑顔にも自然さと自信が湛えられるようになったし、サービスそのものは非常にスマートになった。半年前にはなにもかもが不安だったものが、今は終始安心して見ていられる。それは自分が受けるサービスだけでなく、例えばロビーの椅子にしばらく座って、新たに到着するゲストたちが迎えられる様子を見ていたり、クラブラウンジで他のお客さんと楽しそうに会話しているホテルのエグゼクティブやゲストリレーションを見ていても十分に感じられる。実にいいホテルになった。

ぼくは年に何度かホテルで主催公演を行うが、その会場となるホテルは自分で足繁く通い、その実力を十分に吟味して決める。その都市で最高のホテルであるだけでなく、ぼくの表現したいものをどれだけ実現してくれるか、その気持ちがあるかどうかが大切なポイントとなる。主催公演では音楽だけを中心に据えてプランを立てることはない。ゲストがチケットを求めた時からイベントは始まっており、何を着ていこうかと考えながら、当日の様子を想像することだって大切な楽しみのひとつだ。ホテルが舞台となる場合は、ゲストがエントランスに到着してから、演奏の余韻を噛み締めながらホテルを後にするまで、どの瞬間を取っても素晴らしくなくてはならない。

リサイタルならば演奏だけがすべてだが、ホテルイベントの場合は如何に演奏がうまくいっても、ナイフやフォークが汚れていたり、サービス人がゲストの呼びかけに気付けなかったり、クロークで荷物を取り違えたりしたら、それでもう失敗だ。演奏の責任は自分ですべて負えるが、それ以外の部分は完全に人に委ねなければならないのだから、それなりに信用が置けなければ大変だ。演奏面では自分のすべてを表現できるよう最善を尽くせるが、サービス面で誠心誠意イベントの成功に力を貸してくれるホテルはほとんど無く、会場探しにとても苦労する。その点でもナハテラスはぼくの期待を裏切らなかった。

限られた条件のなかで、ホテル側は自分たちが何を出来るか、どうすれば同じ条件でよりゲストの満足を高められるか、ぎりぎりまで積極的にアイデアを提供してくれた。ぼくは音楽とサービスがその日同じ目的を目指して協力し合い、料理人やサービス人との共演のような感覚を楽しむ時間がとても好きだ。そして、優れたサービス人なら、イベントがはね、まだ興奮覚めやらぬ様子で会場を後にするゲストを見送る時のシアワセな気分を知っている。今回ナハテラスでのイベントの後は、たずさわったスタッフみんなとそれを分かち合うことができた。

また、忘れてはならないのが1階のブティック。小さな店だが、沖縄の名産品やブランド品など個性的な品物が並んでいる。ここの皆さんの人柄がよく、行くたびになにか思い出の品を買い求める。今回は、本番直前に控室を抜け出し、GUCCIのサイフを購入。もちろん東京でも入手できるが、旅先で求めるのも悪くない。

オールデイダイニング「ファヌアン」

テラスホテルズの季刊紙にエスニックコースが先月から気になっていたのだが、たまたま時間が空き食べるチャンスが得られた。エイジアン料理をヒントにしながらもオリジナリティが感じられる魅力的なコースだった。特にオードブルの生春巻がおいしかった。欲を言えばいつも素晴らしいデザートを提供するだけに、デザートのインパクトがいまひとつだった。サービスもよく気が付き、向上心が感じられるもの。ワインのセレクションも充実して来た様子。

日本料理「真南風」

東京から今回のコンサートに参加したゲストと一緒に「真南風」で昼食をとった。夕食にはコンサートディナーを控えているので皆さん軽目のものを希望し、1,800円のお弁当を注文することになった。2段の桐の重に美しく盛り付けられたお弁当は一度にいろいろな味が楽しめ、しかも懐石風に手が込んでおり見た目にも華やか。思いのほか量も満足できるもので、食後にはシャーベットが付く。値段は手頃で、サービスは実にしっかりしており大満足。

2000.09.25
プライバシー
ザ・ブセナテラス Club Cottage Deluxe Suite
楽-3

日没後は雰囲気が一変し、照明効果が発揮される。

ブセナの岬の先端、サミットのメイン会場となった万国津梁館を背にする位置にクラブコテージは完成した。アジアの高級リゾートをヒントに、この上ない癒しをカタチにした日本では他に例を見ない施設だ。通常は空港への送迎が含まれるが、今回は他のゲストたちと行動を共にしたので、ナハテラスが用意してくれたシャトルバスでブセナにやって来た。

チェックインはホテル棟にあるクラブラウンジで行い、手続きが済むとカートでコテージまで送ってくれる。歩いて歩けない距離ではないが、特にコテージへ向う道は上り坂がきついし、津梁館のゲート管理をする警備員にいちいちとやかく言われ面倒なので、行き来の度にカートを呼ばなくてはならず不便だ。滞在中試しに歩いて登ってみたところ警備員から「そっちに入っちゃダメだよ!!」と怒鳴られ不愉快だった。そのゲートもさすがに無粋極まりなく、工事現場とまったく変わらないトーテムポールとバーで遮断しているから、美観もなにもあったものではない。

しかし、コテージの敷地内はとても静かでゆったりとした時間が流れていた。ここがスーパーリゾートの中だとは思えないほどプライバシーが保たれ、耳に入るのは大自然の音だけ。ただし、これは相当に運がいい場合に限られる。コテージといえども、お隣り同士かなり隣接しているので、お隣りに滞在客がいるとご近所付き合いが必要になりそうだ。一部コテージは2階建てだから、上下でも気にし合うことになるかもしれない。

しかも、今回は空室のはずの隣りのコテージから、芝刈機や工事などしょっちゅう騒音が発生していた。この時稼働率はかなり低かったのだから、よりによって隣りで作業をするとは随分と気の利かない話だ。このコテージの価値は設備ではない。大自然といかに一体になれるか、どれだけ雑音を遮断し、プライバシーを完成させられるかに尽きる。実際、静けさを満喫できた時間は本当に幸福だった。あらゆるストレスから開放され、非常に深い癒しが得られ、国内のリゾートでこのような開放感が味わえるとは思っても見なかった程だっだ。それだけに満室状態の中で利用するとなると、満足は半減どころではないだろう。

では、コテージの中はどうなっているのか。どのコテージにも戸建て感覚の門やエントランスがあり、ガラスのひき戸をルームキーを使って開けて中へ入る。今回利用したタイプは入口を入るとすぐにリビングルームになっていて、ソファセットが置かれている以外余計なものはほとんどない。ベッドルームとリビングルームは広いワンルームになっているが、中央の家具がパテーションの役を果し、ふたつのスペースを分離している。

その中央の家具はリビング側から見ると、左右がエキストラベッドを収納した納戸で、中央にテレビとオーディオがセットされており、ベッド側から見ると背の高いヘッドボードのように見える。290センチの高さがある天井にはファンが回り、床は全体が石でひんやりと気持ちがいい。冷蔵庫の上には無料のコーヒーや紅茶とミネラルウォーターが用意されている。

ベッドルームには185×200センチのダブルベッドが一台置かれ、オットマン付きのソファがひとつあるのみで、こちらもいたってシンプル。その奥にはどこぞの高級リゾートホテルにソックリな造りのバスルームがある。プライベートガーデンに面して張り出し、ガラスに囲まれた開放的なバスタブや、同じくガーデンに面しているトイレやシャワーブースがあり、ガーデン内にはアウトドアのシャワーブースも用意されている。今のところ新しいから気にならないが、シャワーブースの扉の枠は木製で、なんだかすぐに腐ってしまいそうだし、ガーデンのシャワーブースを使うと、せっかく植え込まれた植物に石鹸や湯が掛かってしまい、枯れてしまわないかと心配だ。

ダブルベイシンのうち一方には脇に窓があり、その窓を開けておくと海から風が入り込んで来て、ゾクっとするほど心地よい。その風に誘われて視線を窓に向けると海が眩しく輝いていて、こうしたさりげないところでリゾートを感じさせてくれることがたくさんある。アメニティはホテル棟のスイートに準じており、一般的なアイテムの他に、スクワランオイルやタルカムパウダー、入浴剤、日焼け手入れ用の化粧品セットが用意されている。あと、リビングに花が飾られていなかったりウェルカムフルーツなどが無いのは、なんとなく寂しいと感じる。

建物にはすべての方向に窓があるが、特に海に向いた窓はほとんどオープンエアといえる状態にまで広く開け放つことができ、客室全体がテラスに同化するような感じだ。窓の外のテラスにはテーブルセットの他にデッキチェアがあり、芝が敷き詰められたガーデンには小さいプライベートプールがある。プールは泳ぐというよりも足だけつけてぴちゃぴちゃと遊ぶ程度の雰囲気アイテムだ。ただ見た目以上に深いことからコテージはたとえ大人と同伴でも子供の利用はできないという。危険も然る事ながら、お隣りから子供のはしゃぎ声が聞こえるだけで気分は台無しになりそうだから、利用を大人に制限しているのは結構なことだ。

日没後は日に照らされた日中とはガラッとムードが変わり、ハロゲン光のスポットや間接照明が陰影を彫るロマンチックな空間に一転する。ベッド脇のランプはスイッチを一回引いて一段暗くすると、胴体の中のスモールランプだけが点灯し、柄が影絵のように浮き出てとてもステキだった。全体的に清掃状況は良好で、ターンダウンも丁寧に行われた。ベッドでの眠りは心地よく、鳥のさえずりに目を覚まし、ローブのままテラスに出て朝の空気を深呼吸した時、ここに来てよかったと感じずにはいられないだろう。

朝食はルームサービスメニューからなら何を選んでもすべて無料で利用できることになっており、ルームサービスの朝食メニューには一切料金が記載されていない。しかし、ホテル棟のレストランを利用した場合、例えばセットのジュースをチルドからフレッシュに変更してもらったりするとキッチリ追加料金を徴収されるなど、まったく通常の食券扱いだった。そういうシステムなのか、係の認識が不足していたのかは謎。

コテージでもルームサービスは24時間利用できるが、ホテル棟でこしらえてカートで運んでくるため、時間が掛かる上に届く頃には調理してから時間が経過していることになってしまう。また、氷がほしいとか石鹸がもうひとつほしいという場合でも、ホテル棟からえっちらおっちらカートで運んでくるわけだから効率はよくない。

サービス面ではいつもながらガッカリすることの方が多かった。ちょっとした物の言い方で「意地悪だな」と感じさせることが度々あり、特に女性スタッフは棘があるか不愛想かのどちらか。また、情報管理がてんで出来ておらず館内施設の営業状況について誤った案内をしたり、チェックインの際にはチェックアウトタイムや朝食の利用方法、クラブフロアの特典について説明も確認もないなどインフォメーションすら不足していた。このようなすきだらけのサービスをしていながら、謙虚さのかけらもないとはみっともない。

ブセナテラスの帰りにナハテラスに寄ってみた。両者をしみじみ比べてみると、建物としても規模はともかくナハテラスの方がしっかりと造られているし、サービス的には格段に優れているので大層ホッとできる。設備的にはブセナテラスが沖縄のリゾートをリードしていることは確かだが、サービスはどんぐりの背比べだ。設備だけでなく本物のホスピタリティで心から満足させてくれるようになってほしいものだ。

プライベートプールからテラスを見る リビングルーム

クロゼット状の扉の中にはそれぞれエキストラベッドが収納されている。中央はテレビとオーディオ ベッドからバスルームを見る

バスルームのダブルベイシン 外にせり出したバスタブ。左側がシャワーブースで、その外にアウトドアシャワーがある。

ダイニング「ファヌアン」

コンサートスタッフとツアー参加ゲストが揃って、テラス席でサンセットディナーを楽しんだ。予約は18時からで、その時間には皆さんテラスに集まり、とりあえずシャンパンで乾杯をしたが、その後は18時半に太陽が沈むまで、皆さん夕日をひたすら眺め沈黙が続いた。時期的にちょうど正面に太陽が沈み、実に美しかった。日が沈むとプールサイドでソプラノサックスの演奏が始まり、リゾートのムードは最高に盛り上がる。ゆっくりと時間を掛けてサービスされた料理は、個性的で色鮮やかな琉球ガラスの器に盛られ、ダイナミックなパシフィックリム風。

日没後は卓上がいささか暗く、料理がよく見えなかったのが残念だ。サービスは優秀なファミリーレストランや、新しいホテルのカジュアルダイニングレベルで、不足はないが粗野な感じがした。ロケーションといい演出といい心に響いてくるものだけに、サービスがこれでは不釣り合いな感じがする。唯一、女性ソムリエの知識とワインの扱いは満足出来るものだった。リゾート地だから仕方が無いのかもしれないが、メインダイニングである以上、子供を野放しにして駆けずり回らせておくのはカンベンしてほしい。お互いに迷惑を掛けずにディナーを楽しめればいいのだが。

2000.11.01
朝食パワーアップ
ザ・ナハテラス Club Deluxe Room
楽-4

講座のため単身沖縄へと向かった。秋が深まってきた東京とは違い、那覇の空港に降り立つとまだ夏の名残りが色濃く感じられる。1泊だから手荷物も少なく、バゲージクレームを素通りし、すぐにタクシーに飛び乗りホテルへと急いだ。講座を始める前に軽く食事をして、気分がシャキッとするようにシャワーでも浴びてリフレッシュする時間を確保したかったからだ。ホテルへ着くと、いつものようにバトラーたちに出迎えられ、そのままクラブラウンジへと案内された。

このホテルにはドアマンという係はないようだが、その代わりにいつでも複数のバトラーたちが入り口に立っている。彼らが出迎えてそのままフロントへ案内できるようになっており、このような小規模なホテルではとても理に適っていると思った。そして、このホテルの最大の魅力は、従業員たちとすぐに顔見知りになれる規模であることだ。ぼくのように年に数えるほどしか利用しなくても、館内どこでも知った顔に接することができる。ひとりで滞在していても、気軽に挨拶を交わせる相手がいるだけで心細さとは無縁でいられるのがうれしい。

クラブラウンジへ行くとゲストリレーションズたちが本当に心をこめて歓迎してくれる。お互いに馴れ合いの接し方などまったくないのだが、ひとつひとつは短い接点のそれぞれが見事に心に響いてくるサービスぶりだ。食事がまだだと聞けば、アフタヌーンティにはまだ早い時間だというのに、ケーキを出してくれたり、朝食の残りかもしれないがクロワッサンとジャムを出してくれたりと、気遣いに余念がない。

客室は前回滞在した際に思ったより快適に感じたデラックスキングを利用した。あいかわらずシャワーの勢いが弱いのが残念なのと、歯ブラシセットの歯磨き粉がほんのちょっぴりしか入っていないので、朝の分が足りずに困った。これもいつも思うことだが、枕は大型でよいのだが、中身が綿のような感じなので、羽毛に慣れていると違和感があった。客室内をしみじみと見渡してみると、ナイトランプが2箇所、デスクランプ、フロアスタンド、トップライトが2箇所と照明はかなり明るい。

夜、外出から帰る際、ホテルのある丘へと上がる道からホテルを見上げると、客室から漏れてくる明りがとてもよい雰囲気を出しており、下手な看板よりもPR効果が大きいような気がした。さて、オープン以来試行錯誤を続けて来たクラブフロアの朝食サービスの内容がまた新しくなった。今回はメニューを手渡され、コンチネンタルヘルシーブレックファストまたはアメリカンブレックファストを選択するカタチ。アメリカンブレックファストは今までどおりの内容だが、新たに設けられたコンチネンタルヘルシーブレックファストは、シリアル、ヨーグルト、コーヒー、サラダ、ジュースに加え、三種のサンドイッチかワッフルの中から一種をチョイスするという構成。2名のスタッフでフルサービスを提供しているがよく気が付き極めて快適。

Y.K.