2000.03.06
静寂の海
宮古島東急リゾート Deluxe Room
楽-2

バーの内部

那覇から飛行機で40分程度の距離なのに、雰囲気が一変するからおもしろい。機上から見下ろす島の様子ものどかで雄大だが、新しくなった宮古空港に降り立つと、空気が違うことにすぐ気が付くはずだ。やはり沖縄本島は都会の空気が停滞している。那覇のみならず、どんなに北へと進んでも遠くの都会の喧騒がどこからともなく伝わってくるから不思議だ。その点、宮古島などの離島は、島の中心街にいたとしても、ふと耳を澄ませば静寂がすぐ手の届くところにある。

空港から車で10分、刈り入れが進むサトウキビ畑の中を縫うようにして走ると、突如ゴルフクラブを思わせるようなスケールの大きなアプローチが目に飛び込んでくる。エントランスから敷地内の道をしばらく進むとホテル棟があり、車の気配に気づいたスタッフが出迎えに出てくる。車寄せは本館オーシャンウイングと新館コーラルウイングの中央に位置。オープンエアになっているが、各棟のエントランスには自動ドアが設置されていた。フロントは本館の1階にあり、各種マリンスポーツなどの受け付けカウンターを併設するゆったりとした空間設計になっているが、その周辺から美しい海を見ることはできない。

チェックインを済ませるとベルアテンダントが客室まで案内してくれる。新館の客室へは、ウイング間をつなぐオープンエアのブリッジやレストラン、スーベニアショップなどの脇を通り抜けてエレベータにのるが、降りたとたんにエレベータホールの大きな窓から、ホテルに入って初めて美しい海と対面することになる。客室はすべてオーシャンビューに設計されているため、廊下の片方には窓があり、そこからは敷地内にあるラグーンを見下ろすことができる。

新館の客室は大きく分けてふたつのタイプがあり、一方はバスルームから外が眺められるレイアウトで、双方面積に大差ないがこちらのほうが料金がやや高めの設定だ。室内は広々とした印象で、125センチ幅のベッドが2台、ライティングデスク、ソファセットが置かれても尚余裕がある感じだ。天井が270センチと高いことも開放感につながっている。インテリアの色使いは落ち着いた中にもリゾートらしい賑やかさがあり、TVやゲーム機などはアーモアに収納されているので、黒いものが目に入らないようになっている。

到着時、室内が暑かったので空調のスイッチを入れたものの、まったく作動しなかった。故障かと思いフロントに問い合わせたところ、この時期は空調のメインスイッチをオフにしているとのことだった。ちょうど凌ぎやすい時期なのかもしれないが、人によって温度の感じ方は違うので常時利用できるようにしておいてもらいたい。ただ、依頼した際の対応は早く、すぐに涼しい風が吹き出してきたので不満は残らなかった。

バスルームは大きな窓のついた洗い場式浴室とベイシン、別室になったトイレを含めると10平米近い面積を割いたゆとりある造りになっている。バスタブは大型でゆったりとしているし、水圧も十分だ。アメニティは資源を大切にすうという大義名分を掲げ、以前に比べるとだいぶ簡素になった。シャンプー類はもちろんハンドソープもボトル入りになり、ついに固形の石鹸が用意されなくなった。タオルは3サイズ揃うがバスローブはない。ルームサービスは20時30分から23時の夜食時間のみの営業でコーヒーは600円だ。

部屋でひと休みしてからバーラウンジへ行ってみた。閑散期の昼下がりとあって、店内はノーゲスト。従業員は3名という万全の体制だ。店内中央には夜光貝でつくったシャンデリアがあり、まるで巨大なきのこのように見える。その周りに石でできたカウンター席があって、白いグランドピアノがはめ込まれている。このグランドピアノは相当年季が入っているようだが、手入れが今ひとつで調律もしていないのはもったいない。このバーではフレッシュのマンゴージュースを飲んでみた。ドロっとしてネクターのような感じだが、甘くておいしかった。

滞在中ほとんどほかのゲストと顔を合わせることがなかったほど、静かだった。オフシーズンの宮古島は、本島とはけた違いに澄みきった海が、まるで自分たちのためだけに存在しているような気分にさせてくれる。

室内 海を臨むバスタブ

「シャングリラ」

朝食ブッフェを利用した。入り口で食事券を渡すと「お好きな席へどうぞ」といわれ、あとはなにからなにまで「ご自由に」状態。まさにシーズンオフならではのおおらかさなのだろう。コーナーの落ち着いた席に陣取り、ブッフェ台に向かうと、想像以上にバラエティ豊富な料理が並んでいた。和洋折衷スタイルで、それぞれオーソドックスなものから、朝食ブッフェではなかなかお目にかかれないアイテムまで目移りしていまう品揃えだった。卵料理を目の前で作るコーナーもあるが、若い調理人のお手並みは今ひとつ。そのこーナーを借りて自分でこしらえたほうがマシかもしれない。

朝食の時間帯は全席禁煙で、喫煙を希望するゲストには隣接するバーラウンジを開放している。食後にコーヒーカップだけを持ってバーに移動し、一服しているゲストが多いようだった。以前は日本料理「やえびし」で充実した和朝食を提供していたが、現在はこのシャングリラのみ。オンシーズンには「やえびし」もオープンするのかと思ったが、客室に備えられたディレクトリーによれば、通年ランチとディナーのみの営業のようだ。

Y.K.