2000.03.23
思いやり
欧風台所「ラ・パレット」中央林間
喜-3

2月には2000年スペシャルとして企画した破格の2000円ディナーが話題となり、食事をしようと予約の電話を入れても、いつも満席で断られていたので、結局その2000円ディナーは食べ損なってしまった。3月に入り通常のメニューに戻ったものの、活気は衰えず連日賑わいを見せているようだ。

この日は美しくてお若い女性の博士と会食の約束があり、遅れないように部屋を出たが渋滞がひどく結局ぎりぎりに到着。雨が次第に激しさを増し、強い風を伴うようになってきたにもかかわらず、店内はうわさどおり混雑していた。その多くが女性のグループで、賑やかな笑い声で雨の音を掻き消してくれている。一方、奥の席ではどこかの会社関係の集まりなのか、贅沢なワインをいくつもあけ、ソムリエをつかまえてワイン談義に花を咲かせていた。こうした多様な用途に対応できる受け皿の大きさにはいつも感心せずにはいられない。

ふと音楽に注意を向けると、ワーグナーが流れてる。この店には少々重いかなと感じないではないが、マネージャーに「今月はドイツワインのフェアでもしているの?」と尋ねたところ、「気づいてもらえてうれしい」との返事。ソムリエ兼マネージャーは大の音楽ファンでもあり、神田将サロンコンサートの際には、演奏の合間に音楽家の名を冠したワインがグラスで用意され、それに因んだ曲を演奏してほしいとの依頼が来るほどに深い思い入れを持っている。店内にもドイツを意識した装飾が施され、トータルな演出から、店とワインに対する並々ならぬ思い入れが感じられ、食事をワインをお供に楽しいひとときを過ごしてもらいたいとの気持ちがよく伝わってくる。

このようにアットホームな思いやりとプロフェッショナリズムが同居する店は数少ない。この店をはじめて訪れる博士が選んだコースと同じものを注文したが、ワインはソムリエに任せることにした。量は飲めないので1本で通したいことと、樽香のあるエレガントな白がいいとだけ伝えると、すぐにシャトーフューザルが運ばれテイスティング。まさに求めていた1本だった。状態管理はすばらしく、ベストな温度で楽しめるようペースを予測しながら適量のみをグラスに注ぐサービスも申し分ないもの。

コースのメイン料理は牛頬肉の赤ワイン煮だったが、素朴ながら手の込んだ料理に、程よく温度が上がった白ワインが、とてもよくマッチしていた。誕生日の前夜祭ということで、女性スタッフが白い花を集めたすてきなフラワーアレンジメントをプレゼントしてくれ、小さなデコレーションケーキとポラロイド撮影のサービスがあった。最近は明るいランチタイムの利用ばかりだったが、こうして雨の日のディナーに来てみると、抑えた照明にしっとりと落ち着いた空気が流れ、とてもゆったりとした時間が過ごせることを、いまさらながらに再発見した。

2000.08.30
大皿料理
欧風台所「ラ・パレット」中央林間
楽-4

神田将ファンクラブの皆さんとの交流パーティを「ラ・パレット」で開催した。パーティというより地元のメンバーの皆さんとのささやかな食事会という感じにしたかったので、馴染みの深い店を会場に選んだ。あらかじめ予算と雰囲気を伝えておけば、必ず期待以上の内容で応えてくれて来たので、何の心配もせずに当日を迎えることができた。

大勢ならテーブルごとに取り分けて楽しむ大皿料理をと、大きくて真っ白なオーバル皿に盛られた料理がテーブルを賑わし、おおいに盛り上がった。特に魚料理や肉料理には、普段個人ではなかなか味わえない大きな魚を丸ごと調理した品や、ブロックごとハーブや岩塩で包み旨みをぎゅっと閉じ込めた仔羊などが出された。単に大きな皿に盛りつけただけでも大皿料理と呼ばれることが多いが、小さな皿では提供できないこのような料理こそ大皿料理と呼ぶにふさわしいんだなと改めて思った。

付け合わせの野菜やソースも皆で取り分けるスタイルをとり、初めて会う人同士も食事が進むに連れ親しく会話が弾むようになっていた。ワインはソムリエお勧めのセレクトで、限られた予算内で最大の満足を感じられるよう、よく考え抜いて構成してくれたものだと感謝したい。2時間半のパーティはあっという間に終わり、つかの間だが楽しい時間をともに過ごすことができたし、おみやげにと京都から取り寄せた葛きりも気に入っていただけたようで何より。

Y.K.