2000.04.13
渋谷はオトナになれるのか
渋谷エクセルホテル東急 Deluxe Room
楽-1

ベッド幅は120センチ。手前には幅広のソファがある。

都内でも有数の交通要所であるにもかかわらず、渋谷には今までこれといったホテルがなかった。若者が多く、狂乱したサーカスのように昼夜を問わず騒然としているこの街には、ホテルはあまり似合わないような気もするが、なければないで不便なものだ。ずいぶん長いこと工事をしていた井の頭線渋谷駅上の再開発ビルがやっと完成し、最新のIT産業をはじめとした企業が入居するオフィスビルとともに、エクセルホテル東急がオープンした。エクセルホテルは東急インチェーンが展開する、アップグレード型ビジネスホテルで、シティホテル並みの快適さと、ビジネスホテルの合理性を併せ持った新しいスタイルのホテルだ。

新宿駅南口にセンチュリーサザンタワーがあるが、そちらは贅肉を落とした身軽なシティホテルがコンセプトだから発想がやや違うものの、結果的にはよく似たスタイルのホテルが出来上がった。パブリックスペースのデザイン性ではサザンタワーが、無料のミニバーなどのちょっとうれしい工夫ではエクセルが、それぞれ一歩リードしているように感じた。

渋谷エクセルホテル東急の客室は、カテゴリーこそ大雑把な分類だが、広さやレイアウトに個性のあるさまざまなタイプが存在する。上層階にはバスローブや高速インターネットを備えたビジネストラベラーズフロアや、枕元にオルゴールまであるレディスフロアを設け、禁煙フロアも数多く用意している。今回は、ビジネストラベラーズフロアにあるデラックスルームを利用してみた。

フロントの係は開業間もないためか、贅沢な人数を揃えているものの不慣れな点が目立った。対応に追われているようだったが、にこやかに一生懸命接してくれたのが救い。やや荷物が多かったが、ベルサービスはなく、自分でカートを押して宿泊専用エレベータに乗った。4基あるうちの奥2基が角をガラス張りにしたユニークなシースルーエレベータで、上昇するにしたがって渋谷の街並みを見下ろすという、未だかつて見たことのない視界が広がってゆく。

レディースフロアと、ビジネストラベラーズフロアの中でもスイートのある24階はキーを挿し込まないと停止しないセキュリティシステムになっている。エレベータホールはスッキリとしたデザインで明るいが、廊下は照明をおさえ比較的落ち着いた感じになっている。チェックインしたときはちょうど清掃が集中している時間帯で、多くの客室の扉が開け放たれ客室係が慌ただしく仕事をしていた。どの客室もカーテンを締め切り暗くしてあり、さらにテレビのスイッチがオンになっている。テレビでみのもんたでも眺めながら仕事をしているのか、けしからんなと思ったら(実際そういうホテルもあった。某シティホテル)各客室の状態を表示するシステムだった。

さて、客室もまだできたばかりだから、新しさがとても気持ちいい。デラックスルームは、新宿側40平米のタイプでゆったりとしたつくりだ。入口を入ると、左側にクローゼット、右側に独立したトイレがあって、トイレはリモコン付きのウォシュレットでベイシンも付いている。クローゼットにはズボンプレッサーの用意もあった。室内には窓が2面あり、明治神宮の緑や新宿の高層ビルが望める。リビングスペースにはかなり大きなソファがあり、ちょうど窓と窓の間にライティングデスクが置かれ、プリンターを兼ねたファックスマシーンや、モジュラージャック、高速インターネットのジャックなどがある。

ベッドは123センチ幅が2台入っているが、シーツや枕の質などは、やはりビジネスホテルの延長を感じさせるものだった。ナイトテーブルの下に大き目の引出しがあり、その中にナイトウエアとワッフル地のバスローブが入っているのだが、これもよく探さないと見つからない場所だ。冷蔵庫内には無料の飲み物が思ったよりも多く用意されているのはうれしい。その他にも、ハーブティのティーバッグとマグカップなどが用意されている。

バスルームはアウトベイシンで洗い場付きタイプと、かなり贅沢なスペースを割いた。バスルーム内の天井が高いのも開放感を高めている。アメニティはボディスポンジなど珍しいアイテムがある一方、固形の石鹸を置かず、ボトルのリキッドソープ、シャンプー、コンディショナーを採用しコストを抑えている。タオル類は豊富に用意されていた。

一応ルームサービスはあるのだが、夜食時間帯に限定され、和洋数種ずつの食事メニューだけであるばかりか、サービス料が20パーセントとなっているのには驚いた。全体的に新しさイコール心地よさとして伝わって来たホテルだったが、料金的には立地を考えても、やはり強気だ。ファブリックなどはセンスの良さを感じさせるものの、安普請なのでいつまでこのフレッシュさを維持できるのかが課題だろう。来春オープンのセルリアンタワーの方に、期待を寄せたい。

無料のドリンク類は、意外にも豊富。 洗い場つきのバスルーム

2000.12.13
上昇気流
フレンチレストラン「ア ビエント」渋谷エクセルホテル東急
喜-3

エレベータで渋谷の雑踏を見下ろしながら最上階に上がると、フレンチレストラン「ア ビエント」と日本料理「旬彩」の2店へと続く明るいエントランスホールがあり、若々しいスタッフたちがすがすがしく出迎えてくれる。予約内容を告げると「お待ちしておりました」とスムースに案内をしてくれた。席へと向う途中のアプローチは大きな窓に沿って長く取られ、ダイナミックな夜景を横目に見ながら照明を落としたダイニングホールへと続くように設計されていてとても効果的だ。

ダイニングホールはさほど広くはないが、フローリングの床にスッキリとしたシンプルな食卓が並び、隅々にまで清潔感を漂わせた空間に仕上がっている。そしてなんといっても最大の魅力は大きく取られた窓からの眺めだ。この日はあいにくうっすらとガスがかかったような天気であまり遠くは望めなかったが、天気がよければ我々が座った新宿側の窓際からは、明治神宮の豊かな緑の向こうに新宿の高層ビル群を望む素晴らしい眺望が楽しめるはずだ。

メニューはプリフィクススタイルが中心で、メインに魚か肉どちらかをチョイスした場合は3,800円、魚と肉を両方取れば4,800円と、いずれにしても大変手頃な価格設定をしている。前菜・スープ、メインは豊富な選択肢があり、選ぶ楽しみも十分だ。そのほか6,500円の特別コースや、21時から提供する2,800円のアフターコンサートディナーなどもあり、目的に合わせて様々な利用の仕方が考えられる。ワインは気軽に楽しめるものを集めており、それほど迷うこともなさそうだった。サービスに当たるのは非常に年齢層の若いスタッフたちだが、この仕事が好きなものたちが集まったのか、熱意の感じられるものだった。しかし、それぞれ個人によるばらつきが目立ち、とても快活で明るい者がいるかと思えば、声も小さくて暗い印象を与える者もいる。

また、料理提供に著しく時間を要したが、それに対して「お待たせいたしました」などの言葉添えはなかった。テーブルを担当した係は料理が遅くなったことに対して平然としているというよりは、このテーブルに料理提供が遅れていることに気付いていないという感じだった。サービスはまだまだ上昇気流の中で試行錯誤が繰り返されている状態であろうから、今後落ち着いてくれば更に洗練されてくると思われる。料理の状態は良かった。環境と価格設定から考えて、贅沢な材料を用いることはできないにしても、十分に納得のゆく内容であった。連日の賑わいもうなずける、渋谷では貴重なレストランだ。

2001.03.09
アフターコンサートディナー
フレンチレストラン「ア ビエント」渋谷エクセルホテル東急
楽-2

初台のタケミツメモリアルホールでのコンサートがはねて、どこかで食事をと考えたとき、この店のアフターコンサートディナーのことが頭に浮かんだ。早速電話を入れてみたところ30分後なら席が用意できるとのことだった。時間的にもタイミングが良いので明治通りを経由して渋谷に向かった。時間どおりにホテルへ到着し、エレベータに乗って最上階で扉が開くとすぐにレストランの活気が伝わってきた。予約がある旨をを伝えるとスムースに案内してくれ、窓際の眺めのいい席に座ることができた。さすが金曜日の渋谷だけあって、遅い時間にもかかわらず入店が相次いでおり、渋谷らしくカジュアルな服装のゲストが多かった。

席につくとメニューが差し出され、コースの仕組みや内容についてこと細かく説明をしてくれる。初めて来店するゲストには親切でありがたいサービスだが、慣れてくるといささか鬱陶しく感じるものだ。注文は入店前からすでに決めてあったアフターコンサートディナーを注文した。オードブルまたはスープ、メインディッシュ、デザート、コーヒーがセットになって2,800円とオトク。通常のコースはすべてプリフィクススタイルでアラカルトメニューからチョイスできるが、このアフターコンサートでディナーはメインのみチョイスでき、その他の内容はあらかじめ決められている。それを説明する際、メイン料理以外の内容はあらかじめ「お決まりしております」とか、この他にパンが「お付きします」など、日本語の乱れが非常に気になった。

またサービス全体にも親しみや熱意は十分に感じられるのだが、空いた皿を何度下げに来ても空になったウォーターグラスには気がつかないなど、肝心なスキルはまだ未熟なので、更なる洗練を期待したいところ。それが不快に感じないのは、従業員が溌剌としており、若いなりの知恵で努力しているのが伝わってくるからだ。そして、この時間にこの値段で、清潔な環境と魅力的な眺望とともに食事が楽しめるというのは実にありがたい。しかしメインディッシュに注文したグルヌイユは股肉が小さく、かなり古いもののような感じがしたので、あまり珍しい食材はチョイスしないほうがいいような気がする。

2001.03.24
Marlboro
渋谷エクセルホテル東急 Excel Twin
哀-2

マルボロの広告が映画のスクリーンのように迫る!

春休みの週末とあって、都内のホテルはどこも混み合っていた。渋谷エクセルホテル東急も例外ではなく、ホテル直での予約枠はすでに満室で、間際でも僅かに空室があった予約サイト「一休」を利用してエクセルツインを予約した。エクセルツインは上層階のビジネストラベラーズフロアのほかに、各一般階のコーナー部分にもあって、こちらの方は窓が大きいのが魅力だ。一休の予約画面にはコメント欄があるので、可能なら新宿側の客室を希望と記入しておいた。当日チェックイン時には、希望の新宿側だと現時点では10階の低層階しか用意できないがどうかと確認があったので、それで構わないと答えて手続きをした。担当したフロントの男性は人柄はよさそうだが、「荷物は自分たちで運びますか?」など言葉の使い方がぶっきらぼうで、地方の郵便局員や警察官と会話しているような感覚をおぼえた。

客室へ入ってビックリしたのは、ワイドな窓からの景観だった。目の前のビルの屋上にでかでかと掲げられたマルボロの看板がちょうど目線の高さにあり、赤いシャツを着てタバコに火をつけるテンガロンハットのおじさんと四六時中ご対面することになってしまった。高層階ならば明治神宮の森越しに新宿の高層ビル群を望み絶景なのだが、これはちょっといただけない。だが、視線をムリにずらして交差点方向に集中すれば、渋谷の人の流れを間近に見下ろせ、それはそれで新鮮な眺めだ。端から端まで窓になっていて、一方の隅はコーナーウインドウになっているので、採光も十分。

窓際には肘掛け椅子とテーブル、そしてライティングデスクがしつらえてあるがシンプルで材質もほどほど。室内の天井高は255センチあるが、窓付近は梁があった。ベッドは123×195センチのものが2台入り、寝具はカバーと一体になっている。ベッドの下にはティシューなどのゴミが散乱していたし、室内が変に乾いた感じで寝苦しかった。冷蔵庫には無料のビールやソフトドリンクが用意されているが、4月1日から冷蔵庫を空にするとの予告が書かれており、事実上の値上げともいえる。

バスルームは間取り図を見ると、通常のツインよりも狭く、シングルのバスルームに準ずるようだった。2.52平米と極めて狭く、バスタブは外径で140センチの長さしかなく、ゆったり疲れを癒すには小さすぎる。照明はベイシン上のみでバスタブ上にはなくシャワーカーテンを引くと暗い。トイレはINAXの洗浄機能付き便器。カランからの水圧は十分だが、節水コマが強力でシャワーは勢いがなかった。一応グレードの高い客室なのだから、バスルームはせめてもう少し広めに設計してもらいたかった。

この日、ファクシミリを受信する必要があって、先方にホテルのファクシミリ番号を伝えようと室内にある案内をくまなく探したが、どこにも見当たらなかった。フロントに尋ねたらすぐに教えてくれたが、メモ用紙やステーショナリーにも記載していないところを見ると、あまり知らせたくないとの意図を感じる。その後17時ごろファクシミリが到着していないかとフロントに問い合わせたら届いていないとのことだった。17時30分になってフロントに出向き、もう一度到着してないか調べてもらったところ、やっと受け取ることができたのだが、受信時間を見ると16時12分となっていた。あまりビジネスの連携は信用できないようだ。

新聞はエレベータホールに置かれたものを自由に取るシステムになっている。たくさんの路線が発着する渋谷駅から間近で、空港リムジンも開通しており、都内で最も立地に恵まれたホテルのひとつといえる。出張の拠点としては申し分ないホテルだが、休息がすこしでもアタマにあるときにはすすめられない。

アッパービジネスホテルを象徴する寝具や家具 コーナーウインドウからのワイドな眺望

シンプルなベイシン。カランはGLHOE 窮屈なバスタブはシングル仕様か

フレンチレストラン「ア ビエント」

朝の8時に出向くとすでにウェイティングが発生しており、廊下に沿って並べられた椅子に腰掛けてしばらく待つことになった。程なく順番が来て案内された席は、入り口から最も近くしかも通路に面したいわゆる「最悪」の席だった。唯一のメリットはブッフェ台が目の前で近いことだが、ひっきりなしに人が往来する席での食事はまったく落ち着かないから嫌いだ。しかし、席の好みをとやかく言っている場合でもなかった。数組だった待ち行列がいつのまにか長蛇の列になりつつあった。

朝食ブッフェは1,500円と手頃で、洒落た内装と高層階の眺めを考えれば大変オトクだといえる。ブッフェ台にはオーソドックスなものの他にユニークな料理も並んでおり、補充や整頓もまずます行き届いているのだが、卵料理やパンの味からはホテルのクラスに似合ったものしか感じられなかった。係が各テーブルにコーヒー・紅茶のおかわりをすすめながらを回ってくるのだが、持っているコーヒーポットの汚いこと。いつでもピカピカに磨いておくだけの感性を持ち合わせた従業員にひとりでもいいからいて欲しい。銀器の輝きは、働くものの心をそのまま映している。

2001.05.13
手作りマップ
富山エクセルホテル東急 Single Room
楽-2

初めての富山で、エクセルホテル東急に宿泊した。他には全日空ホテルなどがあるが、他のスタッフの宿泊先がエクセルホテル東急だったし、コンサート会場にも近かったのでこちらを選んだ。午後にチェックインをして、一度客室に荷物を置きに上がったあとは、リハーサルのため外出した。ホテルに戻ったのが夜11時前。翌朝は8時にはホールに入る予定だったので、早々にチェックアウト。結局9時間くらいしか客室を利用できず、ほとんど体を休めるだけのステイだった。

このホテルは東急インチェーンが展開するエクセルホテルの第1号店で、92年に開業し、来年で10周年を迎える。富山駅前という恵まれた立地にあり、ショッピング施設と同居する便利なホテルだ。1階の正面玄関には車寄せがあり、大きなガラス窓とシンメトリーな2本の柱が印象的で、気合の入った外観だと言える。エントランスホールは空間を贅沢に使っており、アーチ状になった高い天井が開放感を高めている。フロントデスクは小ぢんまりとしており、この日は2名の係がカウンターに立っていた。荷物の多いゲストに対してはポーターサービスも積極的に行なっているようだ。

客室は8階から14階までの高層部に位置しており、窓からは山々の景観が望め気持ちが良い。シングルルームは18.4平米の面積で天井高は240センチと、このクラスのホテルとしてはゆとりのある造りだ。ベッドは123×195センチで、壁にピッタリとくっついた配置なのが窮屈な感じ。ベッドと窓の間には十分な余裕があるので、10センチでも壁から離せば圧迫感が少しは軽減されるような気がする。冷蔵庫にはミネラルウォーター、ウーロン茶、ビールが入っており、すべて無料。その他紅茶のティーバッグとマグカップも備わっているし、ズボンプレッサーが全室に装備されているなど、ちょっとしたことで充実感をアップさせることに成功している。

7時から22時まではルームサービスもあり、朝はアメリカンブレックファストが2,000円、昼夜は食事のセットメニューが2,500円から4,500円で用意されるのだが、単品のコーヒーは1,000円と高値だ。照明はデスク、ベッドサイド、フロアの各スタンドと、天井からの明るいシーリングライトとで、十分すぎるほどに明るくできる。バスルームはさすがにコンパクトだった。140×180センチのオーソドックスなユニットで、アメニティはポンプ式だ。トイレには洗浄機能が備わっているが、バスルーム内でBGMを聞くことはできない。どうしても大きなお風呂に入りたい場合は、近くに古くから営業している銭湯があるという。

それを知ったのは、ライティングデスクに載っていた、このホテルの女性スタッフがこしらえたというオススメ店マップだった。わかり易いイラスト入りの地図で、レストランや工芸品の店のほか、必見スポットなどが紹介されており、もし時間があったらこのマップを片手に街を歩いてみたかった。地図一枚からホテルスタッフの人柄が感じ取れたようで、なんとなく温かいキモチでぐっすり休むことができた。

翌朝の朝食は15階のレストランへ出かけた。1,200円をキャッシャーで先に支払って入場し、あとは完全なセルフサービスのブッフェだ。トッピングが豊富なおかゆや中華点心など、値段の割にバラエティが豊か。そして、何より立山の眺めが素晴らしい。

シンプルだが機能的な室内 壁にピッタリとくっついたベッド

ライティングデスクの左にはズボンプレッサー、テレビの下は冷蔵庫 コンパクトなバスルーム。水は軟水。

Y.K.