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2003年5月2日

グランドハイアット東京 Grand Club Room
哀-5 バスルームに尽きる魅力
ロビーの光る階段
民間最大規模の再開発と言われる六本木ヒルズの一角にオープンしたグランドハイアット東京は、今年オープンするホテルの中で最も注目される存在だ。ハイアットと言えば、パークハイアット東京成功の印象が強く、今度はどんな驚きを感じさせてくれるかと、大きな期待を寄せられていたことだろう。それだけに、開業に携わった人々やオープニングスタッフが背負うものは大きいが、取り組み甲斐のある仕事であったに違いない。

しかし、ホテルのオープンというのは本当に難しい。話題性があればあるほど、人がどっと押し寄せ、「こんなはずではなかった」と、ゲストもスタッフも一緒になって歯噛みしなければならない。できることならひっそりとオープンして、現場での経験を重ねながら一流ホテルに成長してゆくのが理想かもしれない。

いくら経験豊かなスタッフを集めても、環境もコンセプトも違う職場から集まった者たちが、いきなり自分の持てるものをいかんなく発揮するには無理がある。エキスパートばかり集めると、個性がぶつかり合って、結局マイナスの結果になることも少なくない。何の歴史もないのに、生まれる前から一流を運命付けられるというのも、気の毒な話しだ。開業間もないグランドハイアットを利用してみて、感じたのはそんなことだった。

今回はグランドクラブフロアのグランドルームを利用した。42平米の標準タイプの客室は、木目を生かした落ち着きの空間だ。モダンなテイストながら、上質さを損なうことなくコーディネートされ、センスの良さをうかがわせる。特にバスルームはいまだかつてない快適性を実現させただけでなく、巧みなレイアウトで空間を最大限に生かしている。しかし、全体の広さを考えると本当に42平米あるのだろうか?と感じることも確かだ。家具が大きいということもあるだろうが、基本的な計測方法がホテルによって異なるためか、実際はもう少し狭いような気がしてならない。

ライティングデスクは広く、無料のLAN接続が可能。大型の液晶テレビには多数のチャンネルが用意されているほか、CD/DVDプレイヤーも装備している。三角に張り出した窓からの眺めは、方角や階層によってかなりの違いがありそうだ。カーテンはなく、レース、ブラックアウトスクリーンともに、ロールスクリーンを採用。完全に遮光ができる優れものだ。しかし、廊下の音や建物の外からの騒音はかなり聞こえていた。ベッドはシモンズ社でシーツはフレッテ社と、安眠の最上系で揃えた。しかし、デフォルトで置かれた枕の硬さが中途半端で、好みと合わなかった。

ベッドサイドの時計、ライティングデスクのスタンドをはじめ、ありとあらゆる小物に至るまで見事に厳選されており、部屋の雰囲気を一層高めている。照明効果も極めて高く、個別の調光機能で、さまざまにコントロールできる。バスルームはベイシンと浴槽部分をガラスで仕切り、浴槽の脇にシャワースペースを設けた。バスルームとベッドルームを仕切る引き戸を全開にすれば、全体を開放的に一体化させて使うこともできる。

バスタブには上部の排水口がないので、湯を一杯に張れば肩まで余裕で浸かれるし、給水も非常に早く便利だ。ハンドシャワーとは別に設けられたレインシャワーは、文字通りスコールのように天井から高い水圧で垂直に湯を放つシャワーで、実に気持ちがいい。

やさしい香りが印象的なRENのアメニティといい、肌触りのいいタオルといい、一切の妥協を排し、徹底的に快適性を追求している。サービスで用意されたミネラルウィーターもスタイリッシュなボトル入りだ。24時間営業のルームサービスは、このクラスのホテルとしては、未だかつてない手ごろな価格設定をしているなど、好感を持てる部分も少なくない。

その一方でちぐはぐなところもあった。チェックインタイムは午後3時と案内され、Webでもそのように表記されているが、室内の約款には午後2時からとなっている。また、5階にあるスパ「NAGOMI」は、客室からバスローブに着替えて出向けばプールとジムが無料で利用できるが、ロッカーを使用すると3,000円の料金が掛かる。その表記や案内がいまひとつ不明確だった。スイミングキャップの貸し出しもなく、うっかり忘れると1,600円で購入しなければならない。しかし、町のスポーツクラブ的な安っぽさが抜けきれないデザインのプールが多い中で、このプールは底まで石張りのスタイリッシュなデザインが印象的だ。

サービススタッフの態度には、終始驚かされることが多かった。客室設備の一部におかしなところがあったのでエンジニアを呼んだが、それを故障だと認めず「こういう設計だ」と堂々と言い放ち、我慢しろと開き直る始末。これでは埒が明かないと呼んだアシスタントマネージャーは、しばらく残り香がするほど香水をつけて現れ、「ピポピポピポーン!!」と激しくドアチャイムを鳴らし、入ってくるなり自己紹介もせずにエンジニアがいじくり回している現場に近寄り、案の定「こういう設計だ」と決め付けた。

こちらの我慢もそこまでだった。黙って成り行きを見守っていたが、マネージャーの一連の態度には腹が立った。問題の箇所が、他の客室でもそのようになっているのか、改めて調べてもらったら、やはりこの客室だけが故障していたとのことだった。自分たちのホテルの、最もスタンダードなタイプの客室設備がどうであるかも把握していない上に、間違ったことを堂々と主張するなど、客を馬鹿にしていなければできない行為だ。結局新たな客室を用意してもらうことになったが、部屋に落ち着いて時計を見ると午前3時を過ぎていた。くつろぐどころか、大枚はたいてくたびれに来たようなものだった。

チェックイン・アウトは同じカウンターで同じ係が同時に処理をしているので、チェックインラッシュ時にアウトしようとする場合でも、長蛇の列の最後尾に並ばなければならず、せっかくのくつろぎのひと時も一気に醒めてしまう。しかも、カウンターでサービスに当たる人数が少ない上に、要領を得ないため、なかなか列が進まないのも困りものだ。さらに腹立たしいのは、客は並んで当然なりと言わんばかりの従業員の尊大な態度。

この混乱したフロントを避けたいなら、グランドクラブがおすすめだ。10階に位置するラウンジは広く、チェックイン・アウトの手続きのほか、コンシェルジュの役割も担っている。係の対応は、ソフトで丁寧。ラウンジの雰囲気は、空港のラウンジに通ずるものがあり、基本的に飲食はセルフサービスで、余裕がある時にだけ飲み物を勧め、作って運んでくれる。カクテルアワーのつまみはカナッペと簡単なオードブルのみ。朝食時のパンはバラエティ豊富でしかもおいしいし、常時用意されているケーキもなかなかの味だった。

駐車場はバレーパーキングで1泊2,000円。六本木ヒルズに入ったはいいが、道がわかりにくく、正面玄関や車寄せの場所がなかなか見つからずに迷うこともあるかもしれない。主な施設の車寄せや駐車場の入口は、センターループと呼ばれる円周地下道に沿って設けられているが、外の見えない地下道をぐるぐると回っているうちに、方向感覚がなくなってしまうのが原因のようだ。

このホテルもまた苦いスタートを切ったが、半年、1年経てば、それなりに味わい深くなってくるものと信じている。どのホテルも最初は散々だったのだから。

モダンでシャープな印象 バスルームと一体化して使える室内

木肌がシャープな中にぬくもりを感じさせてくれる シモンズのベッド

ベイシンにも液晶テレビ お湯を溢れさせられるバスタブ

ベイシンの床もフローリング シャワースペースからベイシンを見る これがレインフォレストシャワー

フロント脇のスペース フロント脇のスペース

[グランドハイアット東京]

Y.K.