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2003年6月28日

キャピトル東急ホテル Executive Room
怒-5 見知らぬ訪問者
夜の日本庭園を見下ろす
この夜は翌日までに仕上げなければならない仕事を終えるために、キャピトル東急ホテルにチェックインし、徹夜を覚悟でデスクに向かった。すると午後10時半頃、不意にドアチャイムが鳴った。約束などないのに誰だろうと不思議に思いつつ、ドアスコープから廊下の様子を伺ってみると、見覚えのない女性が立っている。濃い化粧に派手な服を着たその女性は、どうも日本人ではなさそうで、同時にホテルのゲストとは明らかに雰囲気が違っていた。訪ねる部屋を間違えていることにすぐに気付くだろうと思い、チャイムには応じなかった。日本とは言え、よもや強盗だったりしたら大変だ。

しかし、チャイムは延々と鳴り続け、次第にその間隔が短くなってくる。これは危ないと思い、アシスタントマネージャーデスクの番号にダイヤルした。電話口からは「アシスタントマネージャーデスクです」と応答があったので、怪しい人がチャイムを鳴らし続けているので、直ちに調べて対処して欲しいと頼んだ。その後も13分に渡ってチャイムが鳴らされ続けたあと、やっと静かになった。

アシスタントマネージャーが対応してくれたのだろうと思いホッと胸をなでおろしていたところに電話が鳴った。不審者への対応が済んだことの報告だろうと思いながら受話器を取ったとっころ、「見たところ、どこにもそのような方はいませんが・・・」と、とぼけたことを言う。聞けば今しがたやっとこのフロアに着いたばかりで、廊下から電話をよこしているとのこと。電話で異常な事態への対応を頼んでから、実に15分以上が経ってのことだ。結果的に何事もなかったとはいえ、連絡から15分もたってからのこのこやってきて、あげくに誰もいませんがとは、お粗末にも程がある。

そのマネージャーを部屋へ呼んで、遅れた事情を尋ねてみた。アシスタントマネージャーへの電話は、日中はコンシェルジェデスクで、夜間はフロントで受けることになっているらしい。受けた者がその内容を直ちにマネージャーに引き継ぐはずだが、そこで連絡が遅れたとの釈明を受けた。そんな連絡ミスが生じるのでは、アシスタントマネージャーデスクの電話を設ける意味がない。

どのホテルでも、緊急の連絡窓口はアシスタントマネージャーであり、万が一に備えて24時間待機している立場の人間であるはずだ。それがこの始末では、火事でも起こったら、かつてのご近所ホテルの災害どころでは済まないかもしれない。そして、言い訳の締めくくりは、「今後の参考にさせていただきます」だ。今後がどうであろうと、現在が解決できないようでは意味がない。次のゲストのためにここに宿泊しているわけではないのだ。

とにかく、またさっきの女性が戻ってきたりしては困るから部屋を替えてもらいたいというと、再度同じことがあったらその後で対応するという信じがたい返事。それでは遅いときつく言って、やっと新しい部屋を用意するために出て行った。しばらくして電話が鳴ったが、「先程は失礼しました」でもなく、新しい部屋の用意ができたがいつ移動できるかと唐突に尋ねてくる無神経さだ。今すぐにと言うと、程なくしてベルマンを一人引き連れてやってきた。

新しい部屋へ移るために、広げた荷物やコンピュータをまとめ、バスローブ姿だったのを服に着替え、荷物の一部を自分で持って、マネージャーらと共に新たな部屋に向かった。マネージャーがその部屋のドアを開けるも、なぜか電気がつかない。部屋の中が真っ暗なのだ。その暗い部屋にマネージャーは一人で入ってしまったので、廊下で荷物を持ったまま佇んで待たなければならなかった。

少ししてからマネージャーが部屋から出てきて、「お待たせしました。どうぞ」と、ナイトランプとスタンドだけが点灯した薄暗い室内へと導いた。結局、メインの室内灯は故障しており点灯しないままだ。不手際があった直後に、今度はこのような故障した客室に平然と案内する神経もまた信じがたい。今夜はこの薄暗い環境で過ごせと言うのかと不機嫌そうに尋ねると、それでは今からエンジニアを寄こすからしばらく時間をくれと言う。他に部屋がないのかと聞けば、きょうは混雑しており、もうこの部屋しか空いていないと言い切られた。それでは仕方がないから他のホテルに移ると伝えると、今まで満室だと言い張っていたのに、他の部屋を探しにフロントへ降りると言い出した。

こうした些細なことから、人をバカにしていることが露呈する。本人はバカにしている自覚などないのかもしれないが、こうも理不尽な言い訳が続けば、そう捉えられてもしかたがないだろう。結局近くに同じタイプの部屋が用意されたので、チェックアウトの際にもう一度きちんとした説明を聞きたいと言って、そちらに移り仕事を再開した。

チェックアウトの時は、ただいまマネージャーが参りますので少々お待ちくださいと、会計が済んだ後もカウンターの前で立ったまま随分待たされた。やっとのことで、昨夜のアシスタントマネージャーの上司に当たる、顔見知りのマネージャーが出てきたが、非常に簡単な挨拶で済まされそうになった。おかしな対応を重ねた結果の締めくくりとしては、到底納得のいく説明ではなかったので、重ねて説明を求めると、ロビー内にあるアシスタントマネージャーデスクに案内された。

そこでまず、昨夜の一件について彼がどのような引継ぎを受けているのかを尋ねてみた。その説明を聞く限り、事の流れだけを簡略に引き継いだだけで、こちらをどれだけ待たせたか、どのような不手際があったかといった肝心な点が、何も伝わっていないようだった。そこであらためて事の顛末を説明すると、「そんなはずはない」とか、「こちらとしては精一杯できることはやったと自負している」などと、ホテル側には何ら落ち度がなかったと開き直るばかりだ。昨夜の担当者が取った行動は適切な判断に基づいたものであり、自分は部下を信頼しているなどと言い切られてしまっては、もはや言葉を継ぐ気力も続かない。

客の苦情を頭から否定し、不手際を犯したスタッフの言い訳のほうを信じるとは、どういう神経だろうか。過ちを認める潔さがなくて、どうして行き届いたサービスができるだろう。細々ととはいえ、30年以上もこのホテルを利用し続けたゲストが、目の前でホテルの至らなさを嘆いて悲しんでいるというのに、心に響く言葉ひとつ掛けられないようなホテルにどんな明日があるのだろうか。

このホテルのかつてのお得意様は次々と他界してゆき、減る一方だ。それを挽回すべく、何とか若い世代にもアピールしようと、巨額を投じて改装をしたのではなかったか。若い世代を手招きをしつつも、実は心の中ではお呼びでないと舌を出していたのが真の姿なのだと知って、親しい友人に裏切られたような、なんともやりきれない気分になった。

鯉は活発に泳ぎまわっている 石の上で休むカモ

[キャピトル東急ホテル] 960217 990103 990618 000504 000805 010407 010628 010818 010923 020222 020302 020524 030511 030514 030531

Y.K.