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2003年7月8日

フォーシーズンズホテル丸の内東京「Lobby Lounge and Bar」
喜-5 思いがけないサービス
新幹線に乗る前に友人と時間を過ごすためにフォーシーズンズのロビーラウンジに入った。外は小雨が舞っており少し涼しかったが、駅からは傘を差さずとも、さほど気にならずに歩ける天気だった。ホテルのアプローチには、ここがフォーシーズンズであることをわかりやすくアピールするために無粋な看板が取り付けられた。ダークカラーのシックな看板は、フォーシーズンズのセンスとは信じがたいほど大きいが、その大きさの割には目立たず、夜ともなればほとんど役に立たないような気がした。

エントランスでは若いスタッフが単にお茶だけを飲みに来た我々をも恭しく招き入れてくれ、午前中のイライラを忘れさせてくれるような笑顔を向けてくれた。顔見知りのスタッフの名を挙げ、今日は出勤しているのかと尋ねると、今は短い休憩を取っているとのことなので、ラウンジにいるから時間があれば顔を見せて欲しいと伝えてもらった。エレベータまで歩く間の、立ち止まることのない会話だった。

7階のフロントエリアは、思いのほか活気があった。ロビーラウンジもおよその席が埋まっていた。運良く空いていたのは、バーカウンター前の広々としたコーナーだった。そこに落ち着き、カプチーノと紅茶を注文した。ちょっと何か腹に入れたかったので、サラダか何か作れないかと尋ねると、にこやかに「ご用意できます」との返事。その物腰も洗練されつつあった。運ばれてきたサラダは「農園のサラダ」と紹介され、とてもシンプルな一皿だった。非常に状態のよいリーフにニンジンやインゲンなどが顔を出しているが、ドレッシングも控えめで野菜の味そのものを楽しめる見事なサラダだった。1時間以上歓談していたが、紅茶の注し湯が冷めたら交換するなど、テーブルをよく見ており、行き届いていた。

ふと自分の足元を見ると、パンツの裾が解けてだらりと垂れ下がった状態になってしまっていた。こりゃ困ったと思いつつも、名古屋に行ってから自分で縫い付けることにするつもりだった。そこへちょうど顔見知りのスタッフが休憩から戻りラウンジまで顔を出しに来てくれた。少々おしゃべりをした後、パンツの裾の応急処置をしたいから、ガムテープかセロハンテープをもらえないかと頼むと、彼はすぐにテープを持ってきてくれ、貼り付けるのを手伝ってくれ一件落着。

礼を言うと彼は持ち場をと戻っていったが、しばらくしてまたラウンジにやってきた。その間、彼はフロントやコンシェルジュ、ハウスキーピングのソーイング担当者などにつなぎをつけ、ほつれたパンツを修繕する手はずを調えて来たという。新幹線の時間までまだ余裕があるのなら、ホテル内で修繕してくれると言うのだ。願ってもないことだったので、それに甘えることにした。彼は空いている客室に案内すると、パンツを持って出て行った。バスローブなりを使ってくつろいでいて欲しいと言い残してから20分程で戻ってきた時には、すでにかがり縫いが完成し、プレスまで掛けてあった。

しかも、そのパンツは折り目が普通と違っているデザインだったが、そのデザインを損なうことのないプレスの仕方をきちんと実践していた。料金を尋ねるとサービスだと言う。そこまでしてもらっては申し訳ないと困惑していたら、にこやかに「あのままの状態で名古屋まで行くのでは気分が落ち着かないでしょうから」と言葉を添えられ、今回はありがたく厚意に甘えることにした。接したのは一人であったが、このサービスを全うするには、多くの人手とチームワークを必要とする。見事であった。これをラッキーで済ませず、このホテルにフィードバックしなくてはと思いつつ、急ぎ足で東京駅へと向かった。

[フォーシーズンズホテル丸の内東京] 021019

Y.K.