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2005.01.18.(火)

ザ・ブセナテラス Deluxe Natural
The Busena Terrace
哀-2 変貌する岬
敷地内を走るシャトルバス
万座ビーチホテルから、感じのよい運転手のタクシーに乗って20分。58号線を北上する車窓から、こちらに向けて羽を広げているようなブセナテラスの姿が見えてきた。右手には春にオープンするマリオットリゾートが、すでにその全体像を見せている。今日も薄い雲が広がるが、海は穏やかだ。

タクシーはゲートを越えて岬へとまわり込み、その先は一層ゆっくりとした速度で手入れの行き届いた道を進んだ。正面玄関では、ゆったりとした白のユニフォームを着たスタッフがにこやかに出迎え、「お帰りなさいませ、神田様」と招き入れてくれた。

引き継いだ女性の係は「クラブラウンジにご案内します」と奥へ促したが、先ほどの男性の係に呼び止められ、何やらひそひそと確認をして、フロント前へと引き返させられてしまった。珍しくアップグレードでもしてくれたのかと思い、一瞬喜んだが、儚くも打ち砕かれてしまった。

いつもなら、ロビー前の広いテラスに並んだソファに腰掛けてチェックインとなるはずだが、にわか雨に備えてソファを取り込んでいる最中で、代わりにフロント前に常設されたソファでチェックインすることになった。到着時のスムーズさはどこへやら。ソファに座ったきり、チェックイン手続きが始まるまで、随分と長いこと待たされた。

手続きが始まっても、丁寧な対応は得られるが、すべてがマニュアル的で、心に直接訴えるものに欠けている印象だった。そして、部屋への案内は14時からだと言われ、1時間半ほど持て余すことに。サブマリンJr.に乗ったがために、まだ船酔い状態だったので、食事をする気分ではなかったし、できれば部屋で一瞬横になりたかったが、聞き入れてはもらえず、「館内でもご覧になり、お時間になりましたらフロントまでお越し下さい」とのことだった。

フロント係の薦め通りに館内をふらりと歩いてみた。人影は極めて少なく、ゆったりとした時間が流れていた。目が回るようだったので、誰もいないプールサイドのデッキチェアに腰掛け、しばらく目を閉じて海を渡る風だけを感じることに。時折り木の葉が擦れる音がするくらいで、まるで無人島のように静かだった。昔どこかで買ったパナマ帽を持ってくればよかったと後悔しつつ、束の間まどろんだ。

しばらくしてめまいが解消したので、軽く食事をすることにした。日が差してきたテラス席でマンゴージュースとハンバーガーを注文。このホテルはどこへ行っても変なBGMが流れていなくていいなと思った矢先、けたたましい工事の音が聞こえてきた。このホテルでは本当に工事に遭遇することが多い。それだけ設備が充実しつつあり、訪れる度に新しい魅力を感じさせてくれるということでもあるが、短い滞在を工事の生贄にしなくてはならないのは悲劇だ。和室をガーデン付きの新しいタイプのスイートに改装中とのこと。工事現場の真上にある客室はクローズしており、クラブフロアとクラブラウンジは10階にて臨時営業中だった。

食事を済ませてフロントへ戻り、用意された客室に案内してもらった。予約どおりのデラックスナチュラルオーシャンビュータイプだが、9階の高層階で、正面に海が見え、プールを見下ろす眺めのいい客室だった。これよりはグレードの高い客室に当たるデラックスエレガントタイプにも、低層階や眺めの悪い場所に位置してる部屋もあるので、それに比べたらずっと条件がよかった。エレガントタイプは、ナチュラルタイプよりもハズレが多い。

室内に大きな変化はないが、ディティールには工夫と妥協の双方が見られた。ベッドが新しくなり、デュベスタイルの寝具を導入して、寝心地が格段に向上した。以前のベッドスプレッドの方がエレガントな印象はあったが、実質的な寝心地の前にはかなわない。アーモアの脇には、コーヒー、紅茶、緑茶、沖縄産の月桃茶のセットを備え、オリジナルのミネラルウォーターも2本サービスされる。客室内でLANは使えず、パブリックスペースにもパソコンなどを備えたコーナーはない。

バスアメニティは一新され、壁掛けディスペンサー式のシャンプー類に加え、ボトルシャンプー類も用意されるようになった。あれ?地球環境のためにディスペンサーにしてたんじゃなかった?と思ったが、これだけ高額のリゾートでディスペンサーではアンバランスだ。その他、バスタブに入れて楽しむドライハーブや、より毛足の長い中国製タオルを備えるようになったが、バスローブやルームガウン、スクワランオイルや基礎化粧品などが省かれてしまった。ターンダウンもない。工事の騒音は、この部屋まで届くことはなく、静かに過ごすことができた。

朝食は「ファヌアン」に出かけた。ナハテラスの「マロード」にいた女性が入り口に立っており、親しみを込めて声を掛けてくれた。混雑すると言われていたので、早起きしてオープンと同時に入ったが、8時を過ぎても一向に混雑する気配すらなかった。さすがにテラス席は気温が低いとのことで、店内のテーブルに。オーセンティックなアメリカンブレックファストだが、マロンや紅芋のデニッシュが美味しかった。サラダのドレッシングはフレンチか和風を選ぶのだが、今時それは古風過ぎやしないだろうか。もっとトップクラスのリゾートらしいオリジナリティが欲しいところ。

チェックアウトは11時。12時出発のナハテラスまでのシャトル便を予約してあった。予約時に12時まで部屋を使えるように頼もうと思ったが、先に「チェックアウトは11時ですが、バスのお時間までお荷物をお預かりすることも可能ですので、ぜひご利用ください」と、当然のことを自慢げに説明されてしまったので頼む気も萎えてしまった。

12時に用意されたシャトルは、バスではなく、メルセデスのEクラスだった。3名の客を乗せた車は、社内連絡便の都合で途中アッタテラスに立ち寄った。初夏にオープン予定のクラブタワーズは、まだ骨組みが半分むき出しの段階で、とてもあと数ヶ月でオープンするようには見えなかった。随分と力の入った高級リゾートを目指すようだが、外観は中級マンション程度にしか見えず、ウブドの森のビラみたいなものを期待するのは難しそうだ。

ブセナテラスがオープンした時は、いよいよ日本のリゾートも新しい時代に突入したという実感があったが、施設は充実し続けていても、サービスは依然洗練されない。若いスタッフの多くはアルバイトで、まるで子供のようなのだから、プロの仕事ぶりを望む方が無理という感じだ。建物も開放感やダイナミックさでは群を抜いているものの、決して高級な造りではない。さほど金が掛かった建築でないことは、しみじみ眺めなくても理解できるだろう。豪華な建物でなくても、演出力次第で金になるといういい例だが、そろそろ利用客が本質に気付いてもいい頃だと思う。魅力的なディスティネーションではあるが、果たして料金に見合っているのか。沖縄が世界のリゾートと肩を並べられるかは、我々日本人の価値基準にかかっているのかもしれない。

天井の高い客室 ルーバーを閉じたところ

窓側から室内入口方向を見る お茶のセット

バスルーム バスタブ脇には窓がある

テラス越しに水平線を見る 夕刻のホテル

ライトアップされたプールサイドでサックスの演奏 まどろみを誘うプールサイド

プールの滝の裏から 青空が似合うホテル

[ザ・ブセナテラス] 990308 000925 020130

Y.K.