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2005.04.22.(金)

アパヴィラホテル赤坂見附 Semi Suite
APA Villa Hotel Akasaka-mituke
哀-5 授業料
フロント周辺
「私が社長です」の強烈な広告で知られるAPAホテルが、最初に誕生したのは1984年。場所は金沢だった。以来20年余りの間に順調に店舗数を増やし、リーズナブルホテルブランドとしての知名度も向上した。同時に、マンションなどの不動産業にも積極的で、その展開には大胆さが伺える。

そんなAPAホテルが、赤坂見附に少々アップグレードしたホテルブランド「APA VILLA」をオープンさせたというので、一度利用してみることにした。予習をしようと思ってネット検索をするが、ホテルのクオリティや客室の様子がわかる情報がない。会社が掲げる理念や精神は大層立派だが、それは現実的なものなのか。あるいは夢想なのか。利用しないことには判断できないので、思い切って予約を入れた。

予約したのは、このホテルの最高級ルームにあたるセミスイートだ。28,000円という価格設定だが、部屋の広さも、設備も、なにひとつわからない。後になってサイトに写真が掲載されたが、当時は料金以外の情報は皆無だった。ホテルのパフォーマンスを判断するには、単純に価格から期待した価値と比較するしかなかった。そして、まったく期待せずに出かけたにもかかわらず、その想像を遥かに下回る客室に、心底こりごりする結果となった。

場所は赤坂見附駅から歩いて2分程度。アプローチは一ツ木通りに面しているが、エントランスそのものはレストランの右脇にひっそりと設けられていて小さい。細い通路の先に、これまた小さなフロントがあるのだが、カウンターの後ろは書類やら何やらで散らかり放題。極めてだらしない印象だった。

チェックインの前に出かける予定があったので、荷物だけ預けて外出したが、戻ってみると、フロントの前に他の客の荷物と共に、無造作に放置されていた。この状態なら、誰かが持ち去っても気づかないだろう。無用心もいいところだ。

チェックインはスムーズとは言えなかった。予約は見つかったが、支払いに時間が掛かった。料金は先払いだと言われ、携帯のedyで支払うことにした。すると、まるで高校生のバイトのような、ちょっと危なっかしい雰囲気の係は、edyの金額入力用テンキーを差し出して、ここに携帯をかざせと言う。キャッシャーの方に目をやると、edy読み取り用端末があったので、「あれを使うんじゃないかな?」と言ってみたが、これでいいんだと言い返されてしまった。

言われた通りの場所に携帯をかざすが、一向に反応しない。というか、するわけがない。そんなところにかざして減額されたんじゃ、たまったもんじゃない。「ちょっと、そっちのを貸してみて」と言って、読み取り端末に当てると、「シャリーン」と決済ができた。係はポカーンとしていたが、一つ勉強になったことだろう。隣では、若いグループ客が、予約内容が違っていると押し問答になっていた。フロント周りは穏やかでなかった。

セミスイートがあるのは、最上階にあたる13階。エレベータは2基で、廊下は狭く、内装もオフィスの延長線にあるかのようだが、新しいのが救いだ。それぞれの客室は非常に狭く、開け放たれた扉から見えた掃除中のシングルルームは、まさに「足の踏み場のない」空間だった。そこには3方向をガップリと壁に囲まれベッドが置かれていた。

セミスイートも窮屈な客室だった。スイートという名前が付いていても、近所にあるエクセル東急のツインよりも狭い。入口を入ると小さなクローゼットがあり、反対の壁には隣室へのコネクティングドアがある。扉を見た時には、隣室と同時に予約し、この扉を活用して初めてスイートになるという意味のネーミングだろうかと考えてしまった。この扉は音をよく通すようで、隣の客が何をしているのかが、つぶさにわかってしまう。電話の会話どころか、息まで聞こえる。

コネクティングドアに並んでデスクとキャビネットが並ぶ。キャビネットには無駄な収納スペースがあるが、むしろ取っ払って、部屋を少しでも広くした方がいい。液晶テレビは壁に掛ければいいし、空気清浄機もここに置く必要はない。デスクも狭いが、あるだけマシ。無料でLANが使えるのはありがたいけれど、付近にコンセントがひとつもなかった。窓は2面あり、東京タワーなどを眺められる。外の音は意外と気にならなかった。

キャビネットの前には、2脚のアームチェアと小さなコーヒーテーブルがセットされ、無料のスティック型インスタントコーヒーやキャンディも用意されていた。照明は蛍光灯主体で、白々としており落ち着かないし、ファブリックもマンション向けのもので、洗練度が低い。ベッドにはデュベカバーを使っているが、ベッドそのものの寝心地が悪いし、周囲を壁に囲まれ、天井も低いために、かなりの圧迫感がある。家具はすでに傷だらけで、清掃状態もいい加減。備え付けのスリッパは多数の髪の毛が付着し、不潔な印象だった。

居心地の悪い空間の中で、唯一の救いはバスルームだった。4平米近くを割いたバスルームは、ブラックの石風タイルで仕上げてあり、居室に比べると圧倒的な高級感がある。ゆったりとしたバスタブ、勢いのあるシャワーは快適だった。アメニティは最低限。タオルは2サイズが一枚ずつで、ブルーとホワイトで色分けされている。バスローブも備える。

チェックアウト時、廊下には利用済みのシーツやタオルが無造作に散乱し、歩きにくかった。エレベータは満員でラッシュアワーのよう。チェックアウトはルームキーを所定のボックスに入れるだけ。「ありがとうございました」すら言われずに、侘しくホテルを後にするしかない。金をドブに捨てたような気分。高い授業料だった。

窮屈なベッド 入口周辺

リビングスペース周辺 バスルーム

[アパヴィラホテル赤坂見附]

Y.K.