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2005.07.10.(日)

コンラッド東京 Garden Suite
Conrad Tokyo
楽-3 汐留ラグジュアリー
シックなインテリア
汐留にすでにオープンしている3軒のホテルに加えて、7月1日、コンラッド東京が開業したことで、汐留地区に予定されていたホテルすべてが顔を揃えることになった。モダンでスタイリッシュなホテルばかりが至近距離に立ち並び、にわかにデザインホテル激戦区となったが、コンラッド東京はヒルトンブランドのトップカテゴリーホテルのひとつとして、汐留のイメージそのものを大きくリードする役割を果たすだけの魅力ある設備を整えている。

だが、コンラッドと聞いて、直ちにラグジュアリーホテルをイメージできる人がどれだけいるのだろう。ヒルトンは知っていても、コンラッドを知らない人は相当多いに違いない。コンラッドがフォーシーズンズやリッツ・カールトン並みの高級ブランドイメージを獲得するには、これからの努力が重要だ。

コンラッド東京のメインエントランスは1階にあり、エントランスホールを挟んで、正面車寄せと汐留駅方面から徒歩でアクセスするエントランスが向かい合っている。エントランスホールには、宴会場へのアクセス通路と、高層階へ向かうエレベータホールへの通路があり、ベルキャプテンデスクも設けられている。宴会場を訪れる客は、高層階にアクセスする必要がなく、フロントやレストラン付近を通らないので、ホテルに来たという実感が薄くなるのではないかと思う。

フロントは28階にあり、3基ある直通エレベータが往復している。28階に降り立ち、エレベータホールを抜けると、8メートルの天井高を誇る開放的なフロントロビーが広がる。シックな色調で仕上げた空間は、あっけないほどにシンプル。フロントカウンターの上にも一切ものを置かず、案内表示すらないが、ロビーに立つ係が積極的にアテンドする。フロントカウンター前にはロビーラウンジがあり、床から天井までの窓からは、浜離宮越しにベイエリアの景観を一望することができる。

チェックイン手続きはスムーズに行われた。担当したスタッフには刺々しい感じはまったくなく、新しくオープンし立てのホテル特有の、浮き足立ったような無理のある緊張感すら見られない。この落ち着きようは、空間のゆとりが放つ波長と見事に融和していた。手続きは済んだが、部屋の最終チェックとやらでしばらくの間、待たされることになった。だが、ロビーに座れる場所はわずかしかなく、それもロビーど真ん中にある落ち着かないシートだけ。これにはあまり感心できなかった。

客室は32階にあるガーデン側のスイート。高さと横幅のある大きな窓からは、浜離宮やベイエリアの景観を一望できる。遮るもののない見事な眺めと言いたいところだが、やや右手に高層マンションが2棟そびえており、右手の客室になるにつれて、そのマンションが邪魔に感じられるだろう。視線がぶつかるほどの距離ではないが、見ごたえのある景色だけに、マンションの存在は鬱陶しい。また、夜になると庭園や海は真っ暗なので、少々寂しく思った。

客室扉を入ると、広々としたフローリングのホワイエがある。側面と床が深い色の木目なので、非常に落ち着いた印象だ。所々にハロゲンのスポットが当たり、まるで舞台でソリストを照らす明かりのように美しい。ホワイエの片隅には、一輪の胡蝶蘭を水に浮かべたスタンドが置かれてる。その他、ゲスト用のトイレ、同じフローリング仕上げのウォークスルークローゼットへと続く両開きのスライディングドアがある。

リビングルームにはソファセット、丸いライティングデスク、テレビとキャビネットが設置されている。家具だけでなく、照明器具や壁のアートもシンプルで、男性的な仕上がりだ。ベッドルームへと続く2箇所のフレンチドアに挟まれた位置に、37インチプラズマディスプレイとキャビネットを据えたが、これはベッドルーム側も壁を挟んでシンメトリーなデザインになっている。

上質な仕上がりのキャビネット内には、ミニバー、冷蔵庫、DVDプレイヤーなどが、ブティックのショーケースのように美しくディスプレイされている。コーヒーメーカーや、各種グラス、カップ&ソーサー、茶のセットなど、どれも贅沢な品物を揃えたのはいいが、この美しいキャビネットの上で、コーヒーの粉を撒き散らしたり、ポットの湯をこぼしたりすれば、たちまち家具が傷んでしまいそうで心配だ。

何もかも片付けて美しく見せたいのがデザイナーの理想だろうが、使う客やそれをメンテナンスする係のこともよく考えた方がいい。この客室もデザインは素晴らしいが、使いやすさは今一歩だ。

LANは24時間1,500円で、ミニバーに備え付けのLANケーブルは2,000円とどちらも高額な印象だ。特にLANは接続して画面を確認して初めて有料であることがわかる。最新の高級ホテルでLANを有料にするのはそもそもみみっちいが、料金が明快にわかるよう表示されていないのはトリッキーに感じられた。

ベッドルームには140センチ幅ベッドが2台並び、ナイトテーブルはそれぞれのベッドの外側に置いた。ベッドリネンの肌触りや寝心地は最高だ。カーペットやベッドボードの図柄は日本的な花がモチーフになっており、ベッドボードでは立体的な小鳥のオブジェが枝にとまっている。ベッドと窓との間には、その外見以上に体型にフィットして快適な寝椅子が置かれ、大理石を使った小さなコーヒーテーブルが添えられている。

リビングと同じプラズマディスプレイの下にあるキャビネットには、DVDプレイヤー、引き出し、腕時計やアクセサリーなどを保管できるフェルト張りのケースが備わっている。天井高は、高いところで3メートル。窓にシェードとレースがあり、いずれも電動で操作できる。照明はハロゲンのスポットの他、調光可能なスタンドがいくつかあるので、コントロールしやすい。ルームサービスは24時間営業で、コーヒー900円など値段も手頃だが、いつまでこの値段が続くことやら。

バスルームは、ベッド脇のスライディングドアからでも、ウォークスルークローゼットのスライディングドアからでもアクセスでき、完全なバリアフリー設計だ。黒と白の石をふんだんに使い、250センチの天井高と約11平米の面積を生かした、非常にゆったりとした空間配置のバスルームに仕上がった。特にベイシンのあるコーナーは広く、そこにベッドが1台置けそうなくらい余裕がある。また、床暖房も備わっている。

ダブルベイシンの前にはシンボリックな円形のミラーがあり、縁に沿って蛍光灯がはめ込まれている。ベイシンは流行りの小さくて浅いボールを使っているが、静かに使っても水は跳ねるし、排水が悪いことが多いし、大嫌いだ。アメニティはオリジナルだが、シティサイド、ガーデンサイドで香りを変えている。ガーデンビューの部屋にはグリーンティをイメージしたグリーンのボトルに入ったものが用意されている。最初この部屋には歯ブラシすら用意されていなかった。外国のホテルを真似たのかと思っていたが、係に尋ねたところ、単なるセットし忘れだった。

ベイシンの脇には、ガラスで仕切られたトイレと、シャワースペース一体型のウェットエリアがある。ウェットエリアにはバスタブ、レインシャワー、ハンドシャワー、液晶テレビがあり、いずれも使い心地がいい。ただ、照明が2系統のオン・オフのみで、気分を和らげようと思った時には明るすぎるのが残念。ターンダウンはフルサービス。ベッドには小さなベアー、ベッドサイドにはミネラルウォーターがセットされる。ベアーは思ったよりも小さかった。ストリングスホテルのベアーの方が可愛らしい。

客室は設備といいスペースといい、確かに最高級ホテルの名に恥じないものだ。だが、そこに宿る精神はどうだろうか。例えば、清掃やセッティングにも不備があった。チェックイン時に10分以上待ったにもかかわらず、その間に発見できなかったのは、インスペクターの着眼点が適切でないのが原因だろう。

服の整理をしている時、何気なくズボンを置いたコーヒーテーブルが、料理の汁か何かで汚れたまま清掃されていなかった。ズボンは汚れてしまったので、客室係に事情を話し、クリーニングをしてもらうことになった。翌日、仕上がったクリーニングを届けに来た係は、ドンディスを出しているにもかかわらず、チャイムを鳴らした。扉を開けると、彼は仕上がった品物を届けに来たとだけ言い、ズボンを手渡した。この場合「昨日は失礼いたしました。」と一言添える必要があったのではないか。だが、彼はその事情を引き継いでいなかったのだろう。このこと一つからも連携がうまくいっていない様子がうかがい知れる。

チェックアウト時、担当した係にハガキの投函を託した。だが、そのハガキが宛先に届くことはついになかった。高々一葉のハガキ。されど心を込めてしたためたハガキだ。ひとたび預かったのなら、確実に投函しなくてはならない。そんな基本的なサービスが実行できなかったことに対する反省が、ほとんど感じられなかったのは哀しむべきこと。

また、夕方以降はロビーラウンジで生演奏が行われるが、ホテルのグレードや雰囲気とバランスの取れない内容に感じられた。よく吟味した方がいい。

客室は雰囲気もよく概ね快適だったが、デザイン優先で使いにくい点も散見された。サービス面では、落ち着いた物腰が好印象な係が多く見られたものの、チームワークができておらず、高い料金に値するきめ細やかさを実感するには至らなかった。また、そうしたサービスの奥底に、どこかで客本意ではない考え方がベースになっている様子が見受けられた。

リビングから入口を見る リビングルーム

リビングのソファ 丸いライティングデスク

ベッドルームのディスプレイ ベッド

寝椅子が快適 ベッドの脇はバスルーム

リビングのキャビネット 小さなベアー

ダブルベイシン ベイシンは広い

トイレとバスタブエリア シャワーと液晶テレビ

アメニティ バスタブに住んでいるキングダック

浜離宮を見下ろす景観 外観

2005.07.10.(日)
セリーズ by ゴードン・ラムゼイ ブラッセリー
Cerise by Gordon Ramsay
怒-3 工夫より当たり前のことを
元サッカー選手という異色の経歴を持ち、イギリスで絶大な人気を誇るスターシェフの料理が東京でも味わえることになった。ゴードン・ラムゼイ氏は体育会系のノリで厨房を仕切り、仕事に対して非常に厳しく、チームワークを大切にすることでも知られている。そんな彼がこの日のあり様を見ていたら、いったいどう感じるのだろう。

「セリーズ by ゴードン・ラムゼイ」はメインダイニングに隣接したカジュアルなブラッセリーだが、客席数は少なく、デパート内の店のようであまりパッとしない雰囲気だ。だが、日曜日の昼下がりとあって、結構な賑わいだった。セットメニューはなく、デザートのメニュー、軽食を中心としたメニューしかない。料理はスペシャリテが並ぶものの、かなり絞り込まれている。また、ソフトドリンクなどはメニューに記載せず、口頭で説明するのみ。値段もわからずに注文しなければならず、日本の習慣には合わない。

さて、料理を注文したのはいいが、いつまで経っても運ばれてこない。どうやら店が混んでいるように見えるのは、料理が追いつかず、回転していないからのようだ。先に出されたパンを食べながら40分近く待っただろうか。やっと運ばれてきた料理は、ソースの表面が乾き、人肌よりも低い温度まで冷めていた。一口頬張ってみたが、中まで冷え切っていた。

係を呼んで苦情を言った。すぐに作り直すと言ったが、料理が出ないことに痺れを切らせて席を立つ客もいるのに、同じことの繰り返しになるような気がするし、ガッカリして食欲も失せていたので辞退した。それでも熱心にデザートでもどうかと勧めてくれたが、甘いものは食べたくないと断った。にもかかわらず、「シャーベットですとか・・・」などと言っている。「だから甘いものはいらないって。」

するとチーズはどうかと尋ねられた。それならいいかなと思ったが、14時過ぎにチーズをすぐに提供できる状態で用意しているのか疑問だった。すぐに出せる状態なのかと聞くと、自信たっぷりにうなずいた。ご一緒にコーヒーでもと言われたが、チーズとコーヒーは合わないと断った。

程なくして運ばれて来たのは、冷蔵庫で冷やされた皿に載った、同じく冷蔵庫で冷やされたチーズの盛り合わせだった。とても客に出せる状態ではない。重ねてガッカリした。気取る前に、当然のことに配慮できるようになって欲しい。

[コンラッド東京]

Y.K.