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2005.12.17.(土)

ホテルピアノ Deluxe Room
Hotel Piano
楽-2 カニアロマ
客室の出窓からの眺め
羽田を早朝に出発、雪の舞う千歳空港からバスに乗り継ぎ、キロロリゾートに到着したのは昼過ぎだった。バスの中は若者のグループやカップルが多く、車中に流れる映像もポップスのクリップなどで若々しい。乗り物に乗っている間は暖房がよく効いているので寒く感じることもなかったが、一度外気に触れると凍りつくような冷たさだった。最初はその冷たい空気に引き締められる感覚だが、それも束の間、あっという間にブルブルと震えがくる。氷点下10度。東京では体感できない温度だ。

キロロリゾート内にはホテルピアノ、マウンテンホテル、キロロビレッジピコロと3軒の宿泊施設があるが、ホテルピアノが最もグレードが高いとされている。チェックインタイムは15時からだが、バスで到着したゲストたちのチェックイン手続きは順次行われ、リゾート内のほとんどの施設にて部屋付け利用が出来る宿泊者カードやミールクーポン、スキー関係のクーポンなどを先に渡される。だが、ルームキーを受け取れるのは15時以降という仕組みらしい。フロント係による手続き時の説明はよどみなく、質問にも明るく丁寧に答えていた。

ルームキーを受け取るまでには、まだ3時間弱ある。スキー目当てで訪れた人たちは、スキーロッカーに荷物を置いてゲレンデへと繰り出していった。元気ならばゲレンデに行ってみようと思っていたが、まだ熱が下がらないまま北海道まで来てしまったので、ひとりで館内でのんびり過ごすことに。

吹き抜けのロビーには、ちょっとしたステージがあって、グランドピアノやSTAGEAが置かれている。2階には自由に試弾できるサイレントドラムスやクラビノーヴァも用意されていて、その辺がいかにもYAMAHAのリゾートらしい。1階のステージの裏手にはラウンジ「サスティーン」があるので、そこでサンドイッチのランチセット1,200円を注文し、15時前までハガキを書いたりしていた。

そうこうしながら、館内に流れるBGMに耳を傾けると、その選曲センスのあまりのダサさには苦笑せずにいられなかった。ステージ上のグランドピアノも自動演奏させているのだが、これまた選曲がよくない。一応、世界一の楽器メーカーが運営するリゾートだし、ホテル名は「ピアノ」なのだから、もう少しそのイメージに沿った、エレガントなチョイスがあってもいいのではないか。

しかし、「ピアノ」と聞けばもちろん多くの人は楽器のピアノを思い浮かべるだろうが、本来は小さな音から大きな音まで表現できる楽器ということで「ピアノフォルテ」。単に「ピアノ」と言った場合はイタリア語で「弱く」の意だから、まるで弱っちいホテルってことにもなりそう。これが中国語だと「弱小飯店」か?などと馬鹿なことを考えているうちに14時45分になった。

まだ15分早いが、そろそろいいだろうと思いながらフロントに行くと、ルームキーを渡してくれたので、荷物を持って客室へ向かった。今回アサインされたのは3階、正面玄関の上に位置するデラックスルームだった。客室のあるフロアとしては最も低層で、窓の外は玄関の屋根に積もった雪の影響で視界が悪い。

まぁ、それはいいとして、ちょっと我慢ならなかったのは、真下にあるブッフェレストランから立ち上ってくると思われる生々しいカニの芳香だった。カニの匂いは時に食欲をそそるが、客室内にこもっているのはうれしくない。普通、匂いというのものは、第一印象が強烈でも、次第に慣れて感じにくくなるものだが、あまりに猛烈な匂いだったためか、終始気になり続けた。熱のせいで気分がすぐれないところに、これはつらかった。

デラックスというカテゴリーながら、室内はスイート仕様になっている。全体で68平米の客室は、ガラス張りの引き戸でリビングとベッドルームとに完全に仕切ることが出来る。リビングにはベッドにもなるソファが2台と、一人掛けソファが2台置かれているが、レイアウトがあまりに退屈で面白くなかったので、自分で模様替えをしてみた。リビングの窓は出窓になっていて、開閉可能だ。

ベッドルームには115センチ幅ベッドが2台並び、ソファが2台、うち1台にはオットマンを添えた。こちらの窓は普通の平面的なもの。ベッドサイドには、小さなライティングデスクがある。ベッドには羽毛布団が掛かっているが、羽毛がある場所に寄り固まってしまい、掛けてもあまり暖かくない。きちんと縫い目が入っていて片寄らないようになっているのに、布団の両サイドと胸の来るあたりに羽毛が集中し、他の部分はすっかりなくなっている。左右のベッド両方ともがそのような状態だった。この羽毛布団を掛けると、なんだか急にボインになったような格好に、胸の辺りだけが膨らんで見えるのが面白かった。

バスルームも広く取られている。ベイシン部分はフローリング、独立したトイレ、大理石張りのシャワーブースと大型のバスタブを備える。シャワーブースがあるにも関わらず、バスタブの脇を洗い場として使えるようになっているのが不思議だった。シャワーの水圧はとても気持ちいい。アメニティは必要最低限という感じで、タオルは大小2枚ずつのみ。温泉や大浴場にも持参しなくてはならないのに、ちょっと少ないと思った。

ルームサービスはないが、冷蔵庫には飲み物が用意されており、値段も安く設定されている。加湿器を借りようと思いフロントに尋ねたところ、在庫を確認して折り返し連絡をくれるとのことだったが、それきり電話が鳴ることはなかった。また、ベッドの横がちょうど階段室になっており、深夜を問わず階を行き来する若者たちの足音が響いていた。

ホテル棟とは別に、レストランやアミューズメント、ショップなどが集まったキロロタウンという施設があるのだが、往来には一度外に出なければならないのが不便に感じた。雪の降るリゾートという雰囲気は十分に感じさせてくれる演出なのだが、如何にせん寒い。温泉浴場へも、このキロロタウンを抜けて行かなくてはならないので、しっかり着込んで出かけなければ、凍えてしまう。

温泉は宿泊客でも別途620円掛かるのだが、脱衣所にはカゴだけで、セーフティロッカーは100円。内湯の他に露天風呂もあるが、露天までは市民プールのような無粋な階段を降りて行かなくてはならないし、そこにたどり着くまでに足の感覚がなくなるほど床が冷たい。決死で降りていった割りには、風情のない露天風呂で、湯の質もいまひとつでガッカリした。他にホテル棟8階に無料の大浴場があるが、こちらは温泉ではなく、沸かした水道水らしい。

この日は20時から、開業15周年記念の花火イベントがあった。キロロタウンのカリヨン広場には、スキーと言えばお決まりの広瀬香美の歌がノリノリに響き、それにシンクロするかのように花火が夜空を染める。花火を背景に雪が舞う様はロマンチックだった。集まった客は若者ばかり。さすがにこのホテルは客層が若い。

夕食は日本料理「風雅」にて、15周年記念コース5,800円を。広い座敷に、宴用のご膳が並ぶセッティング。店内は蔵を思わせるインテリアだ。サービスは丁寧で礼儀正しい。料理も悪くはないが、これと言って印象に残る品はなかった。盛り付けは丁寧で美しかった。

朝食はホテル棟2階の「フレスコ」にて。事前に予約が必要で、朝食券に580円の追加料金が掛かる。コース仕立てに次々と運ばれる料理は、エピキュリアン料理を思い出させる。北あかりのサラダや、新鮮な芽キャベツをゆでたもの、チーズの盛り合わせなど、ユニークなメニュー。アトリウムを見渡すテラス席での、ゆったりとしたいい朝食だった。

リビングルーム リビングからベッドルーム方向を見る

ベッドルーム ベッドルーム奥からリビング方向を見る

ベイシンの床はフローリング バスタブ脇は洗い場としても使える造り

その洗い場の隣にあるシャワーブース ラウンジ「サスティーン」

ロビーの吹き抜け ロビーを見下ろす

[ホテルピアノ]

Y.K.