狭いスペースで追求した居心地
2006.08.28(月)
ザ・ビー赤坂 Spa Room
the b akasaka
楽-2

ロビーの一角にあるオブジェ 32年の歴史があったシャンピアホテル赤坂が、2005年3月31日に閉館した。シャンピアホテルは、東レエンタープライズ株式会社が全国4箇所に展開する、老舗のビジネスホテルチェーンだったが、赤坂、大津、防府の3軒はイシン・ホテルズ・グループへ、青山は桜ホテルズに譲渡された。赤坂と大津はザ・ビーに、防府はサルビアホテルに、青山はサクラ・フルールに変わり、いずれもビジネスホテルの新機軸として注目を浴びている。

ザ・ビー赤坂は、2005年11月にリニューアルオープンし、2006年7月にはスパ施設もオープンしている。建物が古かったり、それぞれの客室が当時のスパンで区切られているため非常に狭いなど、最新のホテルに負けない魅力を表現するには、悪い条件が揃っていた。だが、イシンは、部屋の面積はそのままに、スタイリッシュな内装とアイデアを注ぎ込むことで、条件の中で許される限りの快適性を追求し、これまでにないユニークなホテルを誕生させた。

場所は赤坂駅から徒歩5分程度。落ち着いた環境に建ち、外観はライトアップされて目立っている。エントランスは小さいが、そこからフロントに至るまでの間も、優れたデザイン性が感じられる。ロビーもまたこぢんまりとはしているが、スタイリッシュなインテリアがコントラストのある照明に照らし出され、なかなかいい雰囲気だ。アームチェアやベンチシートが置かれ、雑誌や新聞のラックや、24時間いつでも無料で楽しめるコーヒーマシンが設置されている。また、自動販売機やコインランドリーもこのフロアにある。

チェックインはスムーズだった。今回予約していたのはダブルルームのシングルユース。ダブルルームはすべて2階に位置し、面積は13平米だ。シングルルームで10平米、ツインルームでも17平米しかなく、この面積で居住性を確保するために、思い切ってすべての客室からバスタブをなくしたことが、このホテルの特徴ともなっている。

室内は13平米という数字から想像されるよりも、機能的だった。とにかくよく工夫されており、圧迫感は可能な限り低く抑えられている。140センチ幅のベッドは、シモンズのマットレスと白いデュベカバー仕上げで、まずまず快適。実はこのベッドは、台ごと壁に収納できるようになっており、スパトリートメントの際には、収納して専用のベッドを設置するものと思われる。しかし、ベッドの下に積もった埃から察するに、今のところはスパルームとしての利用頻度は低いようだ。

ベッド脇の壁のくぼみを利用して設置されたライティングデスクは、幅が70センチ、奥行きが58センチと狭く、壁に挟まれているので圧迫感がある。高速インターネットは全室無料で利用可能だ。イスはライティングデスクに添えられた回転イスのみなので2名で利用した場合は、ひとりはイスに座れないことになる。テレビは壁掛けの20インチ型液晶。冷蔵庫もあるが、中は空で、奥行きのない小さなタイプだ。マグカップとカモミールティーも用意されている。クローゼットはなく、入口脇に3本のハンガーと姿見が設置してある。

窓は小さいが、一部が開閉可能になっている。眺めは建物に遮られる部分が多く、開けている方向にも墓が見えるなど、眺めは悪い。窓にはレースカーテンとブラインドが付いているが、ブラインドが全開か全閉のいずれかにしかならず、途中で止められないのが不便だった。

照明はよく工夫されている。ほとんどが個別に点灯できるのもいい。天井にはU字型のレールが張ってあり、そこに3つのハロゲンスポットが掛かっている。2つと1つに分けて、調光も可能だ。その他にも電球の照明がいくつかあって室内の照明環境は優れているが、フットライトは設置されていない。

バスルームの扉は、スライド式のガラス戸になっている。バスルーム内は2方向がガラス張りで、とても明るく開放感もある。だが、ガラスの下から160センチ程の高さまでは、曇りガラス風のシールで目隠しをしている。これがなければ、一層の開放感があっただろう。バスタブがない代わりに、多機能のシャワータワーを設けたということを売りにしているが、このシャワータワーはよくない。東京全日空ホテルのエグゼ階で採用されているのと同型だが、レインシャワーも、ハンドシャワーも、ボディシャワーも、どれひとつとして使いやすい機能がない。しかも、最上部にあるレインシャワーまで、床から175センチと低いのも難点だ。また、便座とトイレットペーパーホルダーの位置関係にも、工夫の余地が残る。

1階にはピッツェリアのようなレストランが1店だけあり、朝食はそこで提供される。一応、サラダ、スープ、スクランブルエッグ、ヨーグルト、オレンジジュース、パン、コーヒー、ご飯と味噌汁などをそろえるブッフェスタイルだが、内容はビジネスホテルの域を出ない。

全体的に、都会的で洗練された雰囲気はよく出ているホテルだが、フルサービスの都市型ホテルと同じ土俵で語るには及ばない。あくまで「面積の割には」とか、「ビジネスホテルにしては」という断り付での洗練度や充実度である。それでも、これまでにないカテゴリーのホテルが出現したことで、利用者にとって選択肢が広がったことは評価したい。

 
部屋が狭くて全景を撮れません・・・ 小さな窓と小さなテレビと・・・ 壁に収まっちゃうベッドと狭いデスク

天井のレールに掛かったハロゲン照明 ベッドとバスルームの間もガラス ベッドには取っ手が付いている

入口付近 ベイシン シャワーブース内もハロゲン照明

外観 フロント前 ロビー

 
ザ・ビー赤坂


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