月明かりを浴びる海原
2006.10.05(木)
シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート Ocean Grand Suite
Sheraton Grande Ocean Resort
哀-4

客室からの眺め 8泊掛けて巡る今回の九州ツアーも、いよいよ終盤になってきた。最終目的地は宮崎。ホテルは、ちょうど2年ぶりに滞在することになるシェラトン・グランデ・オーシャンリゾートを選んだ。2年前に滞在した際の印象は、特にサービス面で満足できないものだったが、タワーの高層階から海原を望む見事な眺めが忘れられず、再び滞在することに決めた。遮るもののない眺望の中でも、とりわけ素晴らしいのは月明かりに照らされる海だ。この時期の月は特に明るく、幻想的な風景を眺められるに違いないと期待が膨らんだ。

別府から宮崎へは、にちりんシーガイア号を利用した。ほぼ満席の客を乗せて別府を出発したが、途中の延岡でほとんどの客が下車した。車両は古くシートもぼろいが、窓は大きい。サービス熱心なJR九州にしては、オシボリも出ないし、車内販売もなくて寂しい。グリーン車内は全席禁煙なのだが、デッキは喫煙が可能になっており、扉が開くたびにきつい臭いが流れ込んでくる。途中、渓谷や山深い場所を通過し、車窓の風景もなかなか楽しい。乗務員の交代が頻繁に行われるのも、興味深かった。

ホテルに到着したのは、午後1時半。正面玄関で出迎えたのは、定年後に再就職を果たしたような年老いたドアマンだった。重たい荷物を扱ってもらうのが申し訳ない。予約の名前を尋ねられたので答えたが、耳が遠いのか、聞こえていない様子。大丈夫だろうか。人として同情せずにはいられない状況ではあったが、そのような状況を作っているホテルのオペレーションこそが問題である。

案内されたのは3階にあるフロントカウンターだった。一角にはスターウッド・プリファード・ゲスト(以下SPG)用のカウンターも設けられているが、そこには係の姿がなかったので、「こちらへどうぞ」と招かれた場所でチェックインした。手続きが終わったところで、SPGプラチナメンバー向けのウェルカムアメニティについて尋ねたところ、このホテルではプラチナメンバーとして登録されていないことがわかった。

改めてSPGのメンバーレベルを確認してもらい、部屋のアサインをやり直してもらった。ウェルカムアメニティは、宮崎地鶏、ゴルフのピン、500ポイント、ミニバー600円分のいずれかだと言うので、地鶏をチョイスしてみた。だが、これは売店でも売っている品で、面白みがなく失敗。その他のメンバー特典について尋ねると、レイトチェックアウトが利用できるだけだとのこと。そんなはずはないと思ったが、係に断言されては仕方がない。

部屋へ案内してくれたのは、フロント係とは打って変わって感じのいいベルガールだった。笑顔がかわいらしく、整った顔立ちをしていた。部屋に着き、「他にお手伝いできることはございませんか?」と聞かれたので、LANを使いたい旨を依頼した。パスワードが必要とのことで、一度退室してから、改めてケーブルとパスワードを持ってきた。そして、その時点になって初めて「1泊につき1,575円となります」と知らされた。ディレクトリーを含め、どこにも有料の記載がなく、後になってから言ってくるというのでは、胡散臭く感じる。

コーヒーを飲みに行くついでに、コンシェルジュデスクに立ち寄り、改めてSPGプラチナメンバー特典について尋ねてみたが、ここでもはっきりとした返事が返ってこなかった。なぜ、こんな単純なことで、しどろもどろになるのだろう。情報がまったく共有されていないらしい。結局、何度も奥に引っ込んだりした末に、特典についてまとめられたプリントを持ってきた。最初からこれを差し出せば、すんなりと話は済むというのに。

その用紙を見ると、ミネラルウォーターサービス、「松泉宮」の利用、「ジ・オーシャンクラブ」の利用、40階のラウンジの利用などの特典があり、そもそもそのサービスを受ける際に必要となる特別なデザインのルームキーが渡されるはずだったということがわかった。こんなことも知らずにフロント業務をしているとは、まったくお粗末。コンシェルジュデスクに来て疑り深く尋ねなければ、これらの特典を満喫し損ねるところだった。これだから信用も油断もできやしない。

今回は3連泊したが、最初の2泊は全体で109平米の面積があるオーシャングランドスイートを利用した。海に向かって張り出した三角形の両端に位置するスイートの、南端側の方が用意された。入口を入ると、来客用のクローゼットとトイレがあり、窓に沿った長い廊下を進んでいくとリビングルームに通じる。その廊下は室内にあるものとしてはとても長く、途中にはコンソールミラーや内扉が設けられ、スケール感のある造りだ。

リビングルームは、とがったコーナーにあるため、4面もの窓を持っており、抜群の採光とワイドな眺めが特長。全体がオフホワイトを基調にコーディネートされ、シンプルで清楚なイメージがある。そこに、カスケードのドレープや籐家具などが、エレガントな雰囲気を加味している。広い空間にソファセット、デスク、テレビ台だけを置いて、床にたっぷりとしたゆとりを持たせたのも正解だったようだ。室内がとても静かなことも気に入った。

続くベッドルームとは、両開きの引き戸で仕切られている。ベッドルームもまたシンプルな設えになっており、140センチ幅ベッド2台と、ドレッサー、テレビ台、クローゼットだけにとどめている。ベッドのマットレスはややくたびれているが、寝具の感触はまあまあ。だが、クローゼットが小さい上にハンガーは4本しかないし、2段しかない引き出しにはすでに毛布が収められていて、持参した荷物を解くスペースがほとんどないことに困惑した。

バスルームはベッドルームの奥に位置しており、約12平米もの面積がある。それでも、このスイート全体から見れば10パーセント程度と、割合としては低い。ダブルのベイシン、完全に独立したトイレ、ガラス戸で仕切られたウェットルームからなっているが、ウェットルームの構造は不思議なものだった。バスタブの脇には、見るからに洗い場として使えそうなスペースがあるが、そこは濡らせる構造になっていない。その代わり、更に奥の方に独立したシャワーブースを設けている。キロロのホテルピアノにも、これと似た風呂があった。バスタブは長さ180センチと大型だ。

立派なバスルームに見えるが、実は、ガラスに見える棚はプラスチックだし、大理石に見える壁は石模様のパネルを使っている。アメニティも、充実しているとは言い難く、やや物足りない感じ。タオルは大小4枚ずつで、バスローブも備えている。

せっかく雰囲気のいい広々としたスイートなのに、部屋のメンテナンスは今ひとつだった。窓には子供の手垢が多数残っており、リビングのガラステーブルは縁に赤ワインが染み込んで腐ってしまっている始末。照明のスイッチも汚れており、ベッドの下からは使用済みのスリッパが頭を覗かせていた。広いだけに、隅々まで清掃するのは大変だろうが、だからと言って手を抜いていいということにはならない。

前回来た時には、館内のあちこちが工事中だったが、さすがにそれは完成していた。しかし、この夏、九州を襲った台風被害の爪跡が、まだ随所に残っていた。また、細かい改装も行われており、依然として工事中箇所があって見苦しい。

温泉施設「松泉宮」は、滞在中、いつ行ってもガラガラだった。こんなことならケチケチせずに、せめて大浴場「月読」くらい宿泊客ならだれでも無料で入れるようにしたらどうだろう。いずれにしても、客室から浴場までがとても遠いので、気軽に一風呂という感じにはいかない。コンセプトでは、その長いアプローチを浴衣と下駄でゆったりと歩く楽しみを演出したつもりらしいが、そんなのはせいぜい最初の1回だけ。2度目からは面倒に感じるだけだろう。

「月読」の露天風呂は、縁から湯が溢れることなく、浴槽内の吸入口から循環させているため、浴槽にゴミや木の葉が浮かんでいて、まるで大雨の後の水溜りのようになっていて汚らしい。また、脱衣所のメンテナンスのために中年女性がうろうろするのも気に入らないし、ドレッシングコーナーの鏡が座らないと見えないような低い位置に掛かっているのにイスがほとんどないなど、不親切な設計が散見される。

中浴場「新月」は、脱衣所と浴室が一体化したユニークな設計。「月読」よりも落ち着いており、広い池を望む雰囲気のいい浴場だ。屋外の浴槽は、池と一体化しているようにも見え、独特の開放感が楽しめる。池のほとりには竹林があり、そこには小屋が建っているのだが、おそらく台風で壊れたのだろう、無残な姿をさらしてせっかくの風情を壊している。早急に修理するか、撤去するべきだ。浴室内のスライドドアにも不具合が見られたが、放置されたまま。メンテナンスの悪さも然りだが、そもそも設計が甘いのではないか。

一方で、アスレティッククラブ「ジ・オーシャンプラブ」は使いやすかった。ロケーション柄、ゴルファーなどの利用も多いらしく、ジムを始めとした設備はとても充実している。25メートルの屋内プールには、大きな円形のジャクージが付帯し、デッキチェアやソファがゆったりと配置されている。プールサイドからは、アトリウムに面したベランダに出ることもでき、ロビーを見下ろしながらくつろげるようにもなっている。

夕食には中国料理店と日本料理店を利用した。中国料理店の店内は明るく、赤いナプキンが印象的だった。夕食は宿泊プランに含まれており、4,200円相当の料理が提供された。値段が値段なので、それほどよい内容の料理は期待できないが、それでもテキパキとしたサービスとともに、値段相応の料理を楽しむことができた。

日本料理店は、サービスに気を遣っている感じが伝わってきたが、料理の方は今ひとつ。どれも作り置きばかりで、食材に冷蔵庫の臭いが染みている。懐石風に少しずつ提供されるが、弁当の中身をばらばらに出したという印象。周囲を見ると、グランデフロアに備え付けられた浴衣を着た客ばかりで、温泉旅館のような雰囲気だった。そして、この店も窓が著しく汚れていた。

朝食は、2日とも「パインテラス」のブッフェを。広い店内には、朝日がたっぷりと差し込む。朝一番で出かけたら、客はゴルファーと韓国人ばかりで、妙な雰囲気だった。和洋の料理が並ぶが、品質はイマイチ。トマトジュースを飲んだが、水でも足したのかと思うほど薄かった。また、フルーツの種類も少ないだけでなく、グレープフルーツもバナナも皮のままざっくりと切っただけと、手間を惜しんでいる印象。コーヒーの器がマグカップというのも好みに合わないし、使い終わって皿に揃えて置いたカトラリーを係がカトラリーレストに戻すというのも気に入らない。まるで、テーマパークのレストランのようだった。

滞在中は、ずっと晴天に恵まれた。シーガイアには様々なレクリエーションプログラムが用意されているが、今回はレンタサイクルを借りて周辺を回ってみることにした。近くには動物園があり、園内でフラミンゴのショーとゾウの行進を見物。車に乗っていたのでは見えないものが、風を切って走る自転車だといろいろと感じられて楽しい。期待通り、夜には見事な月を眺めることができた。6日の夜は中秋の名月。水平線から昇った月が段々高くなるごとに、色や大きさが変化すると、その光を反射する海面も表情を変えてゆく。この美しい月もまた、宮崎の名物になりそうだ。

 
リビングルームのソファ ソファからベッドルーム方向を見る 入口からリビングルームへのアプローチ

窓を背にしたソファセット 窓に向かったデスク リビングの床にも十分な余裕がある

140センチ幅ベッドが2台並ぶ スライドドアの両脇に収納スペースがあるが狭い 窓の外には中秋の名月が

ベイシンコーナー バスタブ脇のスペースは洗い場ではない ショボいアメニティ

ガーデンプール 屋内プール 屋内プールから続くベランダ

40階のラウンジ コンシェルジュデスク メインエントランス

朝日が入る「パインテラス」 「パインテラス」のオープンキッチン 松泉宮への通路

「新月」 「新月」の屋内浴槽 「新月」の屋外浴槽

フラミンゴの行進 ゾウの行進 芸を披露するゾウ

 
シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート 041002


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