部屋でくつろいでいると、上階からドタバタと音がしてきたので、上まで様子を見に行ってみた。すると、廊下まであえぎ声が響いており、「お取り込み中」のご様子。それならじきに収まるだろうと思って部屋に引き返した。だが、まるで子供が走り回っているかのような音は、0時を過ぎても収まらなかった。仕方なく、フロントに電話をして対応を依頼したのだが、電話口からは消極的な雰囲気がありありと伝わってきた。客が困って頼みごとをしているのに、きちんと対処せずにお茶を濁すとは感じが悪い。

結局、深夜1時を過ぎてもまだ騒々しかったので、改めてナイトマネジャーに相談を持ちかけた。先ほどもお願いしたが、そのままにされてしまったことを付け加えると、マネジャーは直接部屋に行って様子を見てくると約束して電話を切った。しばらくしてマネジャーが部屋にやってきた。上の部屋の客と話してきたが、普通に過ごしているだけだと言っているとのこと。これが普通だと言うのなら、部屋でのダンスパーティーも普通の範囲内になってしまう。それほどうるさいのだ。

マネジャーはこちらに部屋を移ってくれと頼んできた。他の部屋に迷惑を掛けているのは上階の客であって、こちらは誰にも迷惑など掛けていないし、迷惑を受けている側なのに、なぜ、こちらが動かなければならないのか。マネジャーにそう言うと、「ですから、こうしてお願いをしているんです」と威張り返された。冗談じゃない。先ほどこちらが「お願い」したことは無視したくせに。付け加えれば、これまでこのホテルを何度利用しているが、一度も特別親切にしてもらったことなどない。長く利用するうちに互いに信頼が生まれたホテルの願いならいくらでも聞くが、こことはまだそういう関係にはない。努力を怠っているのは、日頃からこなし仕事に終始してきたホテルの方だ。

だが、夜も遅くなり、時間が惜しくなってきた。仕方なく、荷物をまとめて部屋を移ることにした。そうしている間にも、ドシドシと人が転げ回るような音が響いていた。翌日のチェックアウト時には、リージェンシークラブのマネジャーからも挨拶と詫びがあった。マネジャーは「すべてのお客様に快適にお過ごしいただきたい」と繰り返していたが、その鍵を握っているのは他ならないホテルのスタッフであり、客に譲歩を求めたときに受け入れてもらえるかどうかは、ホテル側の日ごろの行いに掛かっている。まずは、客から何か頼まれたら、柔軟で迅速な対応を心がけて欲しい。