入湯手形で巡る温泉郷
2006.11.15(水)
壱の井 和室
Ichinoi
喜-2

部屋の前の小さな滝 身軽になったところで、まずは組合事務所に立ち寄って入湯手形を購入した。この入湯手形は、黒川温泉が発祥の地であり、最近では各地の温泉郷にも広がっているという。この手形はひとつ1,200円で、3回の日帰り入浴ができるというもの。組合に加盟している二十数軒の宿ならどこでも対応してくれるので、気軽に湯めぐりが楽しめる。どこの湯に入ろうか、選ぶのもウキウキするが、組合に用意されているパンフレットで目星をつけて、あとは実際に街を歩きながら、直接雰囲気を確かめてから入館するといい。中心部には宿が密集しているので、ぐるりと一回りしてもたいした距離ではないし、途中には土産物屋や飲食店もあるので、散策するのに退屈することはないだろう。

早速手形を持って街を歩いてみた。狭い路地や坂道が多いが、それも風情のうち。すれ違う人と気軽に挨拶を交わせる打ち解けた雰囲気もいいものだ。最初の入浴は、黒川荘に決めた。中心部からはやや離れているが、素晴らしい天気だったので、散歩がてらあるくことに。田舎道を歩いていると、急に景観が変わり、古い民家や畑が多くなる。人様の家の軒先を抜けたり、小さな橋を渡ったりと、ちょっとした冒険を味わいながら黒川荘へとたどり着いた。内湯、岩風呂、屏風岩を見上げる露天風呂と3箇所の湯があり、清掃が行き届いていて、客が少なく、とてものんびりできた。

連れの叔母は、風呂で他の旅行客と会話が弾んだらしく、あそこの風呂がよかったらしいと、早速情報収集をしてきた。実際に各所を回ってきた人の意見なので、そのオススメに従って見たいということになり、再度黒川の中心部へ戻った。炎天下を歩いたので、甘味処で一服。抹茶アイスクリーム添えの白玉アズキが800円と結構いい値段だった。

午後になって、中心部は急に人が多くなってきた。ウワサに聞いた「いこい旅館」に行くと、TVの取材撮影中だとかで門前払い。14:30になればオープンするというので、それまで近所の「水明館」に入ることにした。叔母の話によると、この宿はテレビの黒川温泉特集の際に紹介されていたらしく、主人自ら掘った洞窟風呂が名物になっているという。テレビの影響なのか、ここの風呂にはひときわ人が多かった。川沿いにあり、簡素なついたてをしただけの露天風呂は、対岸からも丸見えという開放感。古びた雰囲気は味わえたものの、湯そのものはこれまでの宿に軍配があがる。

ここの露天風呂で耳にした話だが、友人を連れて黒川に来た熊本県民の立場から言うと、有名になる前の黒川温泉は、どの宿も手頃な料金で気軽に泊まれたが、最近では料金が1.5倍から2倍に跳ね上がり、予約も取りにくくなってしまって、異常事態だとのこと。値段や混雑の現状を考えれば、他にもっといい温泉がたくさんあるのだという。

14:30になったので「いこい旅館」に行ってみたが、まだ撮影の最中で、しばらく待つことに。結局中に入れたのは15時近くだったが、待つだけのことのある変化に富んだ風呂だった。竹筒から落ちる打たせ湯、川の滝が見える覗き穴、岩場の段差を生かした立体的な浴槽配置など、バラエティに富んでいて、人気があるのも頷ける。女湯には背が立たないほどに深い「たち湯」というのもあるらしい。

3軒の入浴を楽しんでから、ロールケーキやぬれせんべいなどを買い込んで、徒歩で「壱の井」へ向かった。案内図に従ってひと気のない道を歩いていくが、本当にこの先に温泉宿があるのか不安になるような風景だった。やっと宿を見つけて安心。「壱の井」は個性的な宿の多い黒川では、最もオーソドックスな宿かもしれない。サッシ扉のエントランス、蛍光灯が照らすこぢんまりとしたロビーやフロントなど、ムードはないが、真面目な印象だ。

チェックインは丁寧に行われ、部屋へと案内された。茶でもいれてくれれば、タイミングを見計らってチップを渡そうとポチ袋に入れて用意してあったのだが、何もせずにサッと下がってしまったので、渡せなかった。この宿は傾斜地にあるため、ロビー階は1階だったが、ロビーから階段を下った地下1階と地下2階が客室階になっている。全体でもわずか16室の小さな宿だ。

今回利用した客室は地下2階の和室で、独立したトイレと洗い場付き浴室を備えている。コーナールームだったので入口付近に他の部屋よりもゆとりがある。また、都合上は地下2階だが、窓の外は地上に面しており、実質的には地上1階にあるのと同じ。せせらぎや小さな滝もがって、のどかな雰囲気がある環境だ。

大浴場は、24時間利用可能の内湯と家族風呂に加え、7:00から23:00までの露天風呂がある。野趣溢れる露天風呂もいいが、ここの内湯は雰囲気があっていい。秘湯的な風情が感じられる古びた浴槽から見上げる木の屋根は壮観だった。また、ほとんど人に出会うことがなく、貸切状態で使えたのもありがたかった。

夕食は部屋に運ばれた。黒川温泉でも味で定評のある宿だけに、料理は満足できる味わいだった。無理に新しいものを追い求めず、この地で昔から美味しいと言われてきたものを、丁寧に料理して提供しているという印象。かなりのボリュームだったが、なにひとつ残さずキレイに完食した。朝食は大広間で。特にとうふと山芋の陶板焼が美味しかった。

黒川の温泉宿2軒に泊まってみて、それぞれに個性を楽しむことができた。料理も風呂も部屋も、まったくもって趣向の違う2軒だったが、共通しているのは女将が部屋に挨拶にくるというセレモニーがなかったことだ。女将でないにしても、宿の責任者が挨拶するというのが旅館の常識なのかと思っていたので、ホテルのようにさっぱりしたサービスというのは予想外だった。だが、いずれも家族的で、温かいもてなしをしてくれるという素敵な共通点があった。それぞれの宿が対抗心を燃やすのではなく、共存しているところが黒川が魅力である秘密なのかもしれない。

 

黒川荘の露天風呂 黒川荘からの眺め 甘味でちょっと一息(でも観光地プライス・・・)

黒川温泉郷の中心部 いこい旅館の入口 川沿いにも色づいた木々がある

新明館の外観 新明館洞窟風呂 いこい旅館の美人湯

部屋の入口から奥を見る 清潔感のある和室 部屋の奥から入口方向を見る

ベイシン(奥の扉はトイレ) 室内のバスルーム 内湯も岩造り

内湯の屋根 野趣溢れる露天風呂 露天風呂からは自然の木々が見える

夕食の前菜 ヒラタケと肥後牛 朝食

正面玄関 フロント コーヒーコーナー

 
壱の井


公開中リスト | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
| ホテル別リスト | レストラン別リスト | 「楽5」「喜5」ベストコレクション |