最後のパイ
2006.12.17(日)
パーク ハイアット 東京 Park Deluxe Room
Park Hyatt Tokyo
楽-4

レセプションへの通路にあるライブラリー 日曜日の午後。パークハイアットのメインエントランスは、にわかに賑わっていた。ちょうど新宿駅へ向かうシャトルバスが出発する時間で、それに乗り込もうとする人や、バレーパーキングの出庫を待つ人、そして今しがたタクシーで到着した人などで、小さなエントランスはちょっとしたラッシュアワーだった。

そんな様子を横目にしながら、これではドアマンにも気づいてもらえそうにないと思って荷物を抱えて車から降りたが、少しタイミングを逸したものの、離れた場所から笑顔を投げかけてくれた。そして、エントランスを入ったところで、ベルアテンダントが後ろから追いかけてきて、レセプションデスクまで荷物を運んでくれた。

メインエントランスからレセプションデスクまでのアプローチは、まさに新鮮な驚きの連続で、オープンから12年が経った今でも非常にエキサイティングだ。シーンが変わるごとに空気感も変わり、レセプションに到着する頃には、まったくもって別世界に至した心境になる。国内にこの秀逸な演出を越えるホテルは、未だ出現していない。ラグジュアリーホテルが軒を連ねるようになった東京においても、パークハイアットはある種、孤高の存在である。

レセプションでのチェックインはあっという間に終わった。イスに座って、すでに用意されていたレジストレーションカードにサインをすると、すぐにルームキーが渡された。その間、わずか数秒だった。スムーズと言えばスムーズだが、あまりにそっけなく、まるで入国審査のよう。まぁ、カードのプリントがどうだとか、出発は何時だとか、そういった面倒も一切ないわけで、これは時間の節約になったと喜ぶべきなのかもしれない。

用意された客室は使い慣れた55平米のパークデラックスルーム。以前はパークルームと呼ばれていたが、2005年以降、呼称が変更されている。現在、パークルームと呼ばれているのは、かつてのゲストルーム。なんとなく、ややこしい。室内はよくメンテナンスされており、古さは一切感じさせないのは見事。パブリックスペースやレストランを含め、館内は順次改装しているが、元のテイストに完全に調和するよう配慮が行き届いてるので、デザイン面での破綻や妥協はまったくない。

だが、清掃に関しては、バスルームに落ちている数多くの毛髪や、部屋の隅に転がるヘアピンや小さなゴミなど、見落としている箇所が散見された。また、水周りのパッキン部分が赤く変色していることも気になった。タオルはフカフカでよかったが、バスローブはスパでも利用されているらしく、アロマテラピーで使用するオイルが染み込んで、酸化油のいやな臭いがした。ベッドマットレスは、かつて硬めだと感じていたが、いささかヘタッて来ているのか、不自然にやわらかい印象があった。

前回は不十分に感じたターンダウンだが、今回はしっかりと丁寧にやってくれた。夕方、3人の係が来て、ベッドを整えた後、タオルを交換したり使用したアメニティを補充。ミネラルウォーターを枕元にセットし、ゴミ箱を空にした他、氷もたっぷりと用意された。また、もう10年も前にリクエストしたエキストラのタオルやアメニティを、今でも再現してくれることには感心した。現在のアメニティはイソップ。天然ハーブのリッチな香りが楽しめるだけでなく、シンプルなパッケージデザインがこのホテルによくマッチしている。

夕食には「ジランドール」を利用しようと思い、午後7時前に電話で空席があるか尋ねてみたが、あいにくその時点では満席だった。空席ができたら部屋に連絡をくれるよう頼んで待っていると、午後8時頃になって電話が掛かってきた。店に出向いてみると、そこは多くの客で賑わっていた。活気があり、大都会の雰囲気が溢れている。用意されたのは奥にある窓側のテーブルだった。周辺にはカップルが多いが、中央では女性ばかり10名ほどのグループ客が、周囲を気にすることもなく、かなり盛り上がっちゃっている。早めの忘年会だろうか。

スタッフたちは丁寧なサービスを心掛けながら頑張っているのだが、受け持つテーブル数が多すぎて、物理的に無理が生じている。人数も多いけれど、仕事量はもっと多い。そのため、動作はバタバタと慌しいばかりで、落ち着いて食事ができない。まるで大衆的な居酒屋のようだ。もう少しスタッフの負担を軽くしてやるべきだと思う。料理は以前に比べて値段が高くなった。コースはオープン当時の倍近い値段になっている。いずれにしても、もう午後8時を回っているのだから、ヘビーなコースを食べる気分ではない。軽めにスープとメインディッシュだけをオーダーした。

食後には洋梨のパイを追加。焼きたての熱々が運ばれてくるはずだったが、来た時にはすでに冷め切っていた。作り直すように言い、重ねて待つこと十数分。パイの代わりにマネジャーがやって来た。何と、先ほどの冷めていたパイが最後のひとつだったとかで、もう作れないと言う。散々待たせて今更言うかという気にさせられたが、ないものは仕方がない。マネジャーは熱心に他のデザートを勧めたが、時間が経ちすぎて腹が落ち着いてしまったし、喫煙席から流れてくるタバコの臭いがつらかったので、デザートは食べずに部屋へ帰ることにした。

部屋に戻るとマネジャーから電話があり、不手際を重ねて詫びた上に、せめて食後の飲み物だけでもお届けしたいと申し出があった。せっかくなのでそのようにしてもらうと、コーヒーと共にフルーツの盛り合わせが振舞われた。新鮮なフルーツで気分がリフレッシュできただけでなく、店の真摯な態度を感じ取ることができた。

翌朝はルームサービスで「ジランドールブレックファスト」2,640円を。内容はコンチネンタルブレックファストで、5種類のパン、ジュース、ホットドリンクというシンプルな内容だ。指定した時間の5分後に運ばれてきたが、パンはどれも美味しくて、5種類全部食べ切ってしまった。

チェックアウトもスムーズに行われた。デューティーマネジャーも顔を出し、前夜のレストランでのことについて詫びがあった。若いマネジャーだったが、こちらの話にもしっかりと耳を傾けてくれるなど、好感の持てる態度だった。サービスについては軽々しいという印象が強かったパークハイアットだが、確実に洗練を重ねつつあるようだ。

 
12年間変わらないテイストのモダンルーム テレビやミニバーの収納家具 ベッドは妙なやわらかさだった

テレビは37インチプラズマ デスクから入口方向を見る デスクから窓を見る

朝の景色 装飾的なミニバー 広いウォークインクローゼット

バスルームは11平米で天井高は285センチ ユニークなレイアウト バスタブからベイシンを見る

幻想的なプール 客室階廊下 客室階廊下

レセプションロビー前 エレベータホール メインエントランスロビー

 
パークハイアット東京 950324 960518 970104 970216 990412 990530 011225 030629


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