街中のオーベルジュ
2007.03.03(土)
アリマックスホテル渋谷 Suite
Arimax Hotel Shibuya
楽-4

ベッドルーム 渋谷駅から歩くこと10分少々。東急本店の脇の道を進み、周辺の雰囲気が少し落ち着いてきたと感じた頃、小規模なビルや店舗に並んだアリマックスホテル渋谷が見えてくる。一方通行の細い道に面しているのだが、この道は渋谷駅方面への抜け道にもなっており、車の通行量は少なくない。それでも、渋谷駅周辺の喧騒と比較すれば、随分と静かな環境に感じられるはずだ。ホテルのエントランスも非常に控えめに造られており、初めて訪れる時には注意して歩かないとうっかり見過ごしてしまうかもしれない。

館内に入ると、正面には小さなティーラウンジがあり、右側にエレベータホールとダイニング、左側にフロントの役を果たすレセプションデスクがある。チェックインはこのデスクに添えられたイスに腰掛けて行なわれる。館内に入ってしまえば、外の世界とは隔絶され、ゆったりとした時間を過ごせそうな期待を感じることだろう。バブル期の建築だけあって、小規模ながら贅沢な内装が施されている。ヨーロピアンクラシックの家具や、ふんだんに使われた大理石が高級感を醸す。エレベータは2基あり、エレベータホールにはモザイクタイルやアールデコ調のシャンデリアをあしらい、とても立派だ。

客室は2階と3階に用意されている。インテリアやレイアウトは部屋によって異なるそうだ。今回利用したのは3階にある39平米のスイート。スイートなのに40平米に満たないというのは、それだけでも珍しいことだが、部屋の中はもっと珍しいことのオンパレードだ。まず、客室廊下も薄暗い印象だったが、室内はもっと暗い。リビングが手前にあり、ベッドルームが奥にあって、窓はベッドルームにしかないという設計なのだが、採光に恵まれないのなら、むしろ主に夜を過ごすベッドルームを手前に、昼を過ごすリビングを奥にした方がよかったような気がする。

部屋によっては窓が複数あるようだが、結局周囲が開けた環境ではないので、採光条件にそれほど大差はない。眺めについても同様で、窓からの景色を重要視する場合には、このホテルはとてもオススメできない。だが、互いに見つめあったり、身を寄せ合って過ごそうと思うのなら、ここがピッタリ。更に、人目を忍ぶ仲なら最高のロケーションである。

部屋の入口を入るとすぐに木製のパーテーションがあり、直接リビングが見えないように工夫されている。パーテーションの向うがリビングになっており、ややイタリアンテイスト(この部屋のコンセプトはイングリッシュテイストなのだが)のソファセットとテレビとミニバーを収めたキャビネットがある。家具はいずれも重厚かつ立派な品物を揃え、ファブリックの質感も高い。リビングの照明はダウンライトとスタンドで構成されており、いずれも調光が可能。テレビはCATVチャンネルが充実しており、ミニバーはソフトドリンクが200円と手頃だ。リビングとベッドルームの間には、様々なエンブレムをエッチングしたガラスがはめ込まれた格子状のパーテーションと内扉があり、上部が少し開いているものの、ほぼ完全に独立させている。

ベッドは2台あって、一方は120センチ幅、そしてもう一方は110センチ幅となっている。今では珍しい厚手のベッドスプレッドが掛けられ、それを外すとむき出しのデュベが現れる。ベッドリネンにホテルのロゴが刺繍してあるのも珍しい。ベッドと小さな窓の間には、どっしりとしたアームチェアが置かれ、濃厚な柄のクッションがアクセントとして添えられている。テーブルの天板には大理石を格子状にはめ込んであり、チェス板としても利用できる。ドレープは電動式で、レースには裾と隅に飾りが施されている。ベッドの足元側壁に沿っては、バゲージ台、ライティングデスク、テレビがところ狭しと並んでいる。客室の天井高は255センチだが、やはり広さ的な余裕はあまり感じられない。

バスルームはアウトベイシンの部分までがカーペット敷きで、クローゼットもここにある。大理石のベイシントップ、レリーフ付きのミラー、エレガントなスツールなど、なかなか雰囲気のあるコーナーだ。シャンプー類はスーパーマイルドだが、バスソルトやミニコスメティックセットなども備え、品数は充実した印象。タオルは大小2枚ずつで、バスローブも備えている。バスタブとトイレは160×180センチのユニットに収まっているが、大理石仕上げで、サーモスタット付きカランを備えるなど、高級感を保っている。シャワーカーテンの代わりにオークラのようなサッシ扉を設けたが、本来はアームレスト代わりに利用できるバスタブの縁が、サッシのせいで使えなくなっているのが不便。カランの給湯やシャワーは超強力だ。

日が暮れると、日中は気が滅入るほど薄暗かった室内が、控えめな照明にやわらかく照らされて、いい雰囲気になってきた。そして、予約した時間にレストランへ。ホテルの規模に倣い、レストランもこぢんまりとしている。だが、天井が高く、教会を思わせる内装とやさしい照明により、温かさの感じられる雰囲気が漂う。6千円台でフルコースが提供され、料理はいずれもオーセンティックで懐かしい味。けれんはないが、安心して楽しめる内容だった。サービススタッフの人数も少ないものの、満席になってもタイミングが損なわれたり、サービスが滞ることがなかったのは見事。BGMにはバロックが静かに流れている。ふと気が付くと、なんだか小さなリゾートホテルに来ているような気分になっていた。

ここは街中のオーベルジュ。聞けば、これから改装に入るそうだが、このクラシカルでリッチな雰囲気は維持して欲しいものだ。決して古いわけではないが、十分に懐かしさを感じさせるこのホテルは、最近ちょっと倦怠期を迎えてしまったカップルにオススメしたい。アリマックスホテルにステイして、まだワクワクしていた「ちょっと前」の自分たちに戻れば、あの頃のトキメキをもう一度思い出させてくれるかもしれない。

 

リビングルーム 重厚感のあるテレビキャビネット ソファはイタリア風デザイン

ベッドは左右でサイズが異なる ベッドからデスク側を見る ゲームテーブルとアームチェア

リビングとベッドルームの仕切りは格子ガラス デスクとバゲージ台 ロゴが刺繍されたリネン類

アウトベイシン アメニティの一部 大理石張りのバスルーム

フロントレセプション ティーラウンジ ダイニングルーム

 
アリマックスホテル渋谷


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