昭和的ノスタルジー
2007.08.04(土)
東京プリンスホテル Princess Suite
Tokyo Prince Hotel
楽-3

リビングのキャンドル型ブラケット 改装が進むプリンスホテルの中で、東京プリンスはどうも改装をする気配がない。館内は昭和のレトロな雰囲気が満ち溢れ、それがむしろ新しいホテルでは感じることのない懐古の情を湧き上がらせる。特に、全体に漂うしっとりとした空気は、新築のホテルには真似のできない落ち着きを醸す。

このホテルもクラシックホテルというにはまだまだ若いけれど、それなりに年月を重ねて貫禄もつき、流行に遅れているどころか、流行に左右されない域に突入したようにも見受けられる。そんな姿になんとなく同世代の仲間意識みたいなものを刺激され、さまざまな部分に共感すら覚えてしまうのだ。だから、変にこじゃれた風にならず、このまま我が道を行って欲しいという気もするが、それでは新しいもの好きの世間様から取り残されてしまうのだろうか。いや、そんなこともないようだ。

少なくとも、今年一番の暑さとなったこの週末、東京プリンスホテルは多くの客で賑わっていた。今では貴重な存在となった都心のホテル屋外プールには、ファミリーを中心に大勢の人が詰めかけ、江ノ島海岸に負けない活気を呈してる。プールの利用は宿泊客でも1,000円掛かり、他にロッカー代300円、デッキチェアは2,000円が必要。設備は古く、プール自体もシンプルな四角いもので、特に仕掛けも演出もない。

それでもここが人気なのは、もう長い間ここを愛用しているという客が多いからだろう。客層を見ていると、軽井沢あたりの雰囲気に似ている。多少の古さや垢抜けなさは織り込み済みで、ムードよりも堅実なところを好みそうな感じだ。そんな人たちに囲まれているだけで、日本がもっと高いところに向かっていたあの頃の記憶が呼び覚まされる。

チェックインはスムーズだったが、予約していた部屋が仕上がっておらず、10分ほどロビーで待った。今回の客室はプリンセススイート58平米。多くのホテルでは高層階にスイートを配置しているが、このホテルでは客室としては最も低層部にあたる4階に集めている。4階には7室のスイートがあり、それ以外に一般客室と小宴会場が同居。エレベータホールや廊下も、他のフロアより少し立派に造られているようだ。

スイートはエントランスドアも凝ったデザインになっており、リビングとベッドルームがセパレートになった2ルームタイプ。室内インテリアは、時代を感じずにはいられない。新規の内装で、この造りを採用することはまずありえないだろう。リビングはアイボリーを基調とした淡いカラースキームの中に、ロココのモチーフを散りばめている。天井高は265センチ。外観からだと一般階と差がないように見えるが、実際は20センチ程度高いようだ。それでもロココの内装をあしらうには閉塞感のある空間である。

入口の脇にはミラーを添えたコンソール。そして、壁に向かったテーブルにイスを添え、ダイニング代わりに。その脇にはむき出しになった黒いブラウン管テレビが載った台があり、中央にはソファセットを設えている。ソファは最近入れ替えたらしく、割と新しいデザイン。このインテリアにはマッチせず、ソファだけが浮き上がっている。テーブル類はすべて大理石トップ。照明はスタンド、ブラケット、シーリングを併用し、やわらかいが明るさは十分に感じられた。

ベッドルームとの間仕切りには、アーチ窓風の意匠を施してあるが、実際に開くことはできない。そしてこの間仕切りはリビングから見ると両脇が収納になっており、ベッドルームから見ると中央が8段の引き出しになっている。ベッドルームもデザインテーマやカラースキームはリビングと共通だが、ピンクのベッドスプレッドがアクセントになり、リビングよりも一層「プリンセス」の名に相応しい雰囲気を醸している。

ベッドボードの上方はカーテンでデコレーションされ、天蓋のようなイメージ。220×203センチというワイドなベッドは、軽やかなデュベと格子柄のデュベカバーを使っており、思っていたよりも寝心地がよかった。また、窓際には、オットマンと合体したユニークなソファ置かれている。デザインといいファブリックといい、ここにキルスティン・ダンストを座らせて、周りにお菓子を並べれば、まさにマリー・アントワネットの世界。ベッドルームの奥側の壁に沿ってデスク兼ドレッサーがあるが、この部分には照明が十分になく、特に夜には薄暗い印象があった。

バスルームは145×240センチと、レギュラールームのものと同じ面積しかないが、壁材や金具、照明器具などに工夫が見られ、華やかに造られている。バスルーム前のクローゼットは十分に広く、扉はバスルームドアと共通のデザインで、スイートらしさを感じさせている。全体的に、機能面では最新ホテルに敵うはずもないが、個性という点では際立った存在だ。たまにはこんなお部屋でお姫様ごっこでもいかがだろうか。

 
リビングルーム全景 リビングの窓側から入口方向を見る ソファセット

壁に向かったテーブル ベッドサイドの安楽椅子 ベッドは220センチ幅

ピンクのベッドスプレッドがプリンセステイスト 間仕切りのベッドルーム側は引き出し ベッドルームのドレッサー

クローゼットとベッドルーム側の入口 バスルームのノブ バスルーム

バスルームの照明器具は華やか アメニティに目新しさはない 4階の廊下

 
東京プリンスホテル 000316 030621 031224 040911 050206 050903


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