チェックインを済ませて向かった部屋はこのホテルで2番目に広い部屋であるオーシャンスイート。110平米の面積があり、通常料金は196,750円もする。それほどの価値はどこにもないが、バブル期に計画されただけに、最近のホテルには考えられない過剰な投資の成果が見られる。扉は片開きだが、ホワイエは長い廊下状になっており、大理石の床と凝った意匠のエレガントな壁に囲まれている。ここにはゲスト用のクローゼットがあるが、収納力には乏しい。ホワイエの先にふたつの扉があり、ひとつはベッドルームへ、もうひとつはリビングルームへと通じている。

リビングルームはコーナーのワイドな窓が印象的。レザーの大型ソファセット、ライティングデスク、8名用のダイニングセットにキッチンカウンターを備え、ちょっとしたパーティにはぴったりな設えになっている。ダイニングテーブルはガラス製で、その大理石の脚もユニークなデザインだ。ハロゲンのダウンライトやシーリング、シャンデリアなど、様々な照明器具が設置され、それぞれに調光可能なものが多く、多彩な雰囲気作りが可能。キッチンカウンターの下部には、旧式ながらテレビやオーディオセットが収納されており、ライティングデスクの後ろには、書斎風の棚が設けられている。

また、ゲスト用のトイレも付帯するが、以前はホワイエ側にあったトイレの扉を、リビングから直接行ける位置に付け替えたようだ。これは、リビングとベッドルームを完全に分けて、切り売りが出来るようにするためだと思われる。リビングの扉を閉鎖すれば、独立した空間として、パーティルームや控室に利用できるからだろう。外部からリビングへの扉は、キッチン側にもうひとつ設けられているので、出入りには問題ない。だが、リビングを失った客室はスイートとして売るわけにはいかない。立派なバスルームの付いた変なツインということにでもなろうか。しかも、困ったことにライティングデスクや全室完備なはずのLANもリビングにしかないので、立派ではあるが不完全な部屋になってしまう。

ベッドルームは部分的に改装されている。床はフローリングになり、ウォークインクローゼットだったと思われる場所は、まるでカラオケボックスのような奇妙なシッティングスペースになった。寝具やファブリックも一新されている。一方、バスルームは開業当時の姿をそのまま残している。総大理石造りで、ソープトレーやペーやーホルダーにオニキスを用いるなど、スイートのバスルームらしいグレード感だ。

広さは10平米。バスタブはブラウンで、ジェットバスを装備しているが、音が賑やかな割にはパワーがない。上部に排水口がないので、すれすれまで湯を張って、ザブーンと行きたいところだが、周囲の造りを見る限り、そういった使い方は想定していないようだ。これではかえって使いにくい。バスタブの脇には窓もある。シャワーブースは広く固定シャワーとハンドシャワーを備えているが、トイレは洗浄機能付き便座ではない。タオルは十分に用意されているが、アメニティはレギュラールームと大差なく、ゴージャスな空間には貧弱だ。

夕食は「グランカフェ」のディナーブッフェ3,800円を利用した。北海道フェアを開催中で、ちゃんちゃん焼き、ジンギスカン、札幌ラーメンなどが並び、とりわけ美味しいのは焼きもろこしだった。デザートにはチョコレートファウンテンもあり、ファミリーで楽しむのにピッタリのブッフェだ。フロントのサービスは係によって差があるが、ベテラン勢は感じがよく親切な印象があった。若い人たちもそれを見習って、早く一人前になるよう願っている。