グランド ハイアット 東京 Grand Executive Suite
Grand Hyatt Tokyo
2008.03.22(土)
東京都港区
哀-5

グランドエグゼクティブスイートのベッド
 
お部屋番号は? 週末の六本木は活気に満ちている。街全体が躍っているようだ。グランドハイアットのロビーもまた例外ではない。次々に到着する車。エントランスから館内に吸い込まれていく人の流れ。その様子を見ているだけで目が回りそうになる。スタッフたちも優雅に振舞っている場合でもないのだろう。次々と降りかかる作業に追われ、いっぱいいっぱいに違いない。この体制で一組ごとの客に十分なサービスを提供するのは難しい。

そう考えるとスタッフたちはよくやっている。だが、ラグジュアリーホテルを自負するのなら、同情を買ってもいられまい。東京でも屈指の高額宿泊料金を踏まえた上で、改めてこのロビーの様子を眺めれば、殺伐とした空気が浮き彫りになってくる。スタッフは力量を超えた仕事を背負わされ、客に極上のサービスを提供するどころか、いつしか工場でモノをさばくような態度に陥って、歩き方や表情も苦しそうだ。この空気感はどうしても好きになれない。

チェックインをしようと思ったが、フロントカウンターは混雑して列ができていた。ならば10階のクラブラウンジに直行して、そこで手続きをすることに。ラウンジに客の姿はなく、ひっそりとしていた。フードカウンターでは、やがて始まるカクテルアワーに向けた準備が進められている。チェックインもスムーズに行なわれた。

担当した係によれば、今回の宿泊で一定回数に達したので、ホテルからギフトがあるとのこと。そして続けざまにデポジットを要求された。繰り返し利用していることの感謝を述べると同時に、「あなたは信用に値しない」と言わんばかりの要求をするとは気分が悪い。乗せられて落とされるとはこのことだ。

このホテルでは、これまで一度として満足してチェックアウトした試しがない。毎回欠かさず、すなわちその「一定回数」の分だけ、何かしらの貧乏くじを引かされ続けてきたのだ。十分なサービスを提供できないくせに、どの面下げてデポジットなどと言えるのか。という具合に、感じた不満をそのまま言葉にして伝えたところ、当然のことながらデポジットは不要となった。これで、担当した係も、この顔を見たら要注意と心得たことだろう。

案内されて部屋まで行ってみると、隣の部屋から子供が大はしゃぎしている声と振動が伝わってきた。すぐさま代わりの部屋を用意するように頼み、部屋の用意が出来るまでラウンジへと戻って待つことになった。そこへマネジャーが挨拶に来た。到着時の対応を詫びると共に、部屋のアサインについて配慮が足りなかったと頭を下げた。隣室の騒音で苦情を言ったのは、これが始めてではない。であれば、ホテルは学習をしているはずである。

実際、マネジャーは静かな環境がリクエストされていることは把握していた。そこで出た言い訳は「チェックインした客の中に子供が含まれているかはわからない」というものだった。大人の名前だけで登録され、子供が人数に含まれない場合が多いのだという。だが、それでは災害時に全員避難したかどうかの確認が不可能になってしまうではないか。

いずれにしても、静かな部屋を確保する方法などいくらでもあるのに、それをひとつとして実行しなかった結果がこれである。最初から知恵を絞っていれば、こちらも隣室もホテルもみんなハッピーなのだし、そのためにリクエストを出してあるのだから、きちんと注意を払って欲しいものだ。

結局、週末で混みあっており、今となってはリクエスト条件にマッチした「静かな部屋」は皆無であるという。であれば出来る範囲でのベストで我慢をするしかない。新たに用意された部屋も、上階からの足音が響くし、廊下を歩く人の声が聞こえてくるが、興奮した子供が騒いでいる部屋の隣よりは幾分マシであった。

今回の部屋は100平米のグランドエグゼクティブスイート。以前にも利用したタイプである。それぞれにゆとりの広さを持ったリビングとベッドルームに分かれており、インテリアはレギュラールームのテイストと共通だが、そのシンプルさの中にもスイートらしいクオリティが感じられるよう工夫されている。

ところが、この部屋はここ数日は使われていなかったようだ。なぜなら、棚にかなりのホコリが積もっているからである。加えて窓には脂や唾液が固まったような子供の手跡が多数付いており、それを浴室のタオルで軽く拭いたら、タオルがまっ茶色になった。タバコのせいだろう。ここが禁煙室ではなく、消臭対応である証拠。それに、窓は相当長い期間、拭かれることがなかったわけだ。その他の木目部分も同様に汚れていたが、それは目立たないので見て見ぬ振りをすることにした。

リビングにはバング&オルフセンのオーディオセットの他、DVDプレイヤー、iPodドック付きのBOSEスピーカーなどが設置されており、好みのスタイルで音楽や映像を楽しめるが、テレビは32インチと小さいのが残念。また、ミニバーにはネスプレッソマシンが用意されるようになった。

バスアメニティは「REN」。これまでスイートだけは特別なガラス瓶入り無料ミネラルウォーターを置いていたのだが、今ではレギュラールームのと同じペットボトルになった。ウェルカムアメニティは「Moulin Dissan」フルボトルとイチゴ6粒が用意してあった。照明はとても効果的だが、リビングの大きなソファに座った際に、ハロゲンのダウンライトが眩しく感じるのが気になった。調光が可能ならばいいが、リビングのダウンライトはオン/オフのみである。

ラウンジでの朝食は冷たいものばかりだが、野菜やフルーツは新鮮で美味しい。サービスに当たるのは4人だが、誰もが特定の客に付いて話し込んでいる。客とのコミュニケーションも大切だが、ここはキャバクラではない。他の客にサービスが行き届かないような状況を生じさせているのは問題である。

チェックアウト時、チェックインを担当した係が再び対応した。「昨日は失礼しました」と一言あるかと思いきや、「お部屋番号は?」と尋ねられた。これが現実である。見送りにやって来たマネジャーに、このやり取りを報告したら、正面玄関で車が見えなくなるまで最敬礼を続けてくれた。だが、その様子を傍で見ているドアマンやベルマンは「いったい何をしているの?」という他人事のような態度でしかなかった。

 
リビングルーム全景 棚にはいくつかのオブジェがある バング&オルフセンのオーディオ

夕方のリビングルーム リビングの窓側から入口方向を見る ロングソファに座るとダウンライトが眩しい

テレビ前からソファセットを見る ロングソファからテレビを見ると小さい 入口脇のデスク

ベッドルーム ベッドから窓を見る ベッド脇の両開き戸の向こうはバスルーム

ベッドルームのシッティングスペース トイレ ベイシン

ベイシンの脇はウェットエリア バスタブと洗い場 日本では元祖のまともなレインシャワー

 グランド ハイアット 東京(公式サイト)
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