ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ Deluxe Room
Hyatt Regency Hakone Resort & Spa
2008.04.10(木)
神奈川県足柄下郡
楽-3

山を渡る雲
 
箱根の長い夜 この日は叔母を連れて箱根へ行った。叔母はかつてとてもカッコイイ女だった。自らデザインした家に住み、愛犬に囲まれた生活を愉しんでいるかと思えば、スポーツカーを駆ってふと富士山までドライブに行ったり、ボディビルディングに夢中になったりと、タフな女でもあった。ホテルでの快適な過ごし方の手本を見せてくれたのも彼女であった。

だが、そんな叔母もすでに70歳を過ぎ、すっかり大人しくなった。健康を損なったわけではないが、あれだけアクティブな人生を送っていたのが、今では一瞬一瞬を噛み締めるように歩んでいる。振り返れば、これまでずっと、お互いに自分の人生に精一杯で、じっくりと対話する機会も持てずに来たが、やっとその穴埋めをする時期が訪れた。たった1泊の旅行だが、話も尽きず、長い夜になることだろう。

叔母とは新宿駅で待ち合わせをしていた。この日、中央線の国分寺駅付近で火災があった影響で、ダイヤが大幅に乱れていた。加えて山手線でも故障が発生し、平常時でも人の多い新宿駅が凄まじい混雑を呈していた。ホームは人で溢れそうになっており、歩行するにも自分の身の安全を確保するのがやっとの状態である。階段には駅係員が立ち、ホームへの人の流れを制御していて、行き来することすら難しい。

こんな状態で叔母と落ち合えるのか不安だったが、携帯電話のお陰で何とか合流できた。しかし、チケットを買ってあったロマンスカーはすでに発車してしまったので、次のロマンスカーを予約。駅の喫茶店でしばらく休み、気を取り直して出発した。JRトラブルの影響なのか、ロマンスカーも登山電車も、いつになく空席が目立った。

ホテルに到着したのは13時頃だった。エントランスに係の姿はなく、アテンドされることなくフロントへ向かったが、チェックインはスムーズに行なわれた。手続きしている時、通りかかった老夫婦が、係に化粧室はどこかと尋ねた。レセプションには4名の係がいたので、そちらに対応する余裕は十分にあるのに、「右側にございます」と方向を指し示すのみで済ませた。老夫婦はやっぱり迷っていたが、その後は手助けしなかった。客の様子から判断して、必要で適切なサービスを提供する機会があったのに、それを実践しないとは残念なことだ。

案内された部屋は先月と同じタイプだったが、より廊下の手前の部屋がアサインされた。室内に違いはないが、眺めには大きな差があることがわかった。これまでアサインされていた廊下奥の部屋だと、窓の前に大きな木があって、景観が遮られているのに対し、今回の部屋からは木が邪魔にならずに、相模湾まで見渡すことが出来る。この開けた景色の得られるデラックスルームは非常に数が少ないようだ。その点、今回はラッキーであった。

部屋に荷物を置いた後は、まずはランチを食べようということになったので、このホテルのシンボル的な空間である「リビングルーム」にて、暖炉のそばに陣取った。ランチセットは2,750円で、スープかサラダ、ボロネーズパスタかシュリンプサラダ、アイスクリーム、コーヒーという内容。メインディッシュをチキンソテーにすると880円加算される。

注文を取りに来たのは男性のスタッフだった。スノッブなバーのように、ニコリともせずオーダーを取る。そこにくつろいだ雰囲気はまったくなく、リビングルームというよりストレンジャーズルームという感じ。そして料理はスープとパスタを選んだが、これまた最悪だった。空港やフードコート以下の不味いパスタは、盛り付けも酷く、「ネコにやったが気に入られず食べ残されました」みたいな状態だった。好き嫌いを言わないさすがの叔母も「これはちょっとねぇ」と、半分以上を残していた。実に珍しい。それほど酷いということである。

更に、暖炉のそばに座ったのも失敗だった。自分達が燻製になって、素肌まで匂いが染み込んでしまっていた。あとは夕食まで温泉三昧。叔母は湯に浸からせておけばご機嫌なのである。露天風呂もないし、いわゆる温泉宿の風情が感じられる風呂ではないのだが、「静かでいい」と気に入った様子だった。

夕方には客室係がターンダウンに来た。ミネラルウォーターを沸かし、かつて一度リクエストしたことのある追加のレターセットを持ってきた。丁寧な仕事ぶりには好感が持てた。ベッドに入りやすいようデュベを整えることも忘れずにやってくれただけでなく、「これでよろしいでしょうか」と確認があった。デュベをめくる作業は、このホテルでは実施しないことになっている。そのことについて「気取っているだけで、不便で困る」と述べると「私どももそう思います」と答えた。実際に従事するものと、現場を知らずしてマニュアルを作っているものとに温度差があるようだ。

夕食は19時を希望したが、予約で埋まっていたために、20時からということになった。もし席が早く空いたら連絡をくれるように頼んでおいたところ、19時過ぎに電話が入った。だが叔母は「食事の前に一風呂」と、またも温泉に行っていたので、戻ってくるのを待ってレストランへと向かった。店内は賑わっていた。見れば外国人の姿も多い。

料理は平日のみ提供しているというアラカルトからチョイスして、オマールえびのサラダ、トマトのカプレーゼ、平目のソテー、牛フィレのグリル、バニラアイスクリーム、クレームブリュレという注文になった。トマトは甘く美味しかったが、叔母の感想によればオマールは味がまったくなく、平目はパサパサだったらしい。口に合わない料理でも、甥っ子と一緒にテーブルを囲めるのが何よりのご馳走だと、叔母は終始ご機嫌だった。

翌日には天気が回復し、客室の窓から見る朝の景色はとても清々しかった。朝食時は、だいふスタッフとも顔馴染みになり、雰囲気も和らいできた。チェックアウトもスムーズで、丁寧に見送ってくれた。あれこれ不快なこともあったけれど、気持ちよく出発できれば、イヤなことは帳消しだ。

 
霧雨の箱根を見渡すサンルーム サンルームから室内を見る ホテルの庭

窓からの眺め 大文字焼 ちょっとわかりにくいが山の向こうは海

 ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ(公式サイト)
 以前のレビューはこちら→ 061216 071211 080320


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