観光ホテルえらぶシーワールド Ocean Room
Hotel Sea World
2008.11.26(水)
鹿児島県大島郡
楽-3

機内からの眺め
 
島人情 鹿児島空港から日本エアコミューター便で、沖永良部島へ向かった。南の島へのフライトはいつも心躍る気分になるが、初めての島となるとそれもひとしおである。機内もきっとハワイ便やグアム便のようなバカンス気分の客が多いのだろうと想像していたが、ビジネスでの利用客がほとんど。窓から見る美しい雲だけが、「南国へようこそ」と手招きしているようだった。小さなプロペラ機だが、サービスは丁寧で心地よく、航空会社黄金期のテイストを思い起こさせるものがあった。

沖永良部空港はとても小さくてシンプル。タラップを降りると、温かい空気が南の島を感じさせる。そのままターミナルビルまで歩き、搭乗口脇のテーブルに荷物が運ばれるのを待つ。駐機場とターミナルを隔てるものは搭乗口だけで、ローカル線の駅のような雰囲気だ。沖永良部島は鹿児島県の南端近くに位置するが、奄美大島同様に、文化的には薩摩より琉球の影響が強いように感じられる。サトウキビ畑がどこまでも続くのどかな風景は、まさに沖縄的である。

到着後はその足で公演会場に向かった。コンサートホールではなく、普段は町民たちが体育館として利用している施設だと聞いてたので、あまり演奏環境には期待していなかった。特に、この夜はラフマニノフのピアノ協奏曲を披露することになっていたので、エレクトーンだけでなくピアノが用意されるのだが、きっとピアノは古くて手入れの悪いものだろうと覚悟を決めていた。

ところが、体育館の舞台に用意されたのは、YAMAHAのフルコンサートグランドだった。型番は確かに古い。聞けば、この体育館が落成した際に、町の名士が寄贈したとのこと。その古いグランドを昨年200万円を投じてフルメンテナンスしたばかりだという。そしてエレクトーンは島で音楽教室を営んでいる先生が、ご自分の大切な楽器を貸して下さった。こうして、当初は不可能だと思っていた離島でのコンサートが実現したのである。

体育館だから、楽屋らしい楽屋もないのだが、袖に設えられた控え室には、この島の伝統菓子がずらりとならび、フラワーアレンジメントまで用意してくれている。こうした歓待は、演奏に向かう気持ちを劇的に高めてくれ、移動に次ぐ移動で疲れきった心身を、瞬時にリフレッシュしてくれた。本番も出演者一同、気持ちのよい演奏ができたと、喜び合った。体育館にしては響きにも恵まれ、違和感もなかった。

ただ、ひとつだけ残念なのは、来場予定だったお客様のうち、結構な人数が来れなかったことである。ここのところの天候不順で、例年なら終わっているはずの作物収穫が、まさにこの日にピークになってしまったとか。演奏会が天候の影響を受けることは珍しくはないが、このパターンは初めてだった。

終演後は主催者やボランティアの皆さんと、そのまま会場で打ち上げがあった。テーブルを賑わすのは、ボランティアの皆さんによる手作り料理の数々。そして、コンサートが終わったステージでは、島の皆さんによる演奏や島歌が、打ち上げのムードを盛り上げてくれた。どこまでもピュアで、もてなし上手。そして自分たちも楽しみ上手。これこそ、ホテルの泊まり歩きだけでは体験できないディープな島人情であった。

この夜の宿に到着したのは日付が変わる直前だった。ホテルシーワールドの目の前には海が広がっているのだが、港に近く、護岸工事によって景観は完全に破壊されている。ホテル周辺にもレジャー施設はなく、リゾート気分を満喫するには不向きだろう。なのに、他では味わえない何かが、深い印象を刻んでくれたことは確かである。

エントランスには踏み込みがあり、かつては靴を脱いで上がるのだったかもしれないが、今では靴のまま入るようになっている。ロビーは広くないが、いくつかのソファが配され、南国風の花や観葉植物があって、離島の雰囲気が感じられる。フロントも小さく、対応はさっぱりと素朴な印象だったが、それがまたこのロケーションには合っている。建物は古く、エレベータはない。

用意されたのは2室しかないオーシャンルーム。イメージとしてはスイート的な位置づけのようだ。他のメンバーやマネジャーたちも自らの部屋を目指して荷物を持ちながら進んでいくが、なにしろ打ち上げが盛り上がったものだから、かなり「出来上がって」いて、やたらと声が大きくなっていた。自分がホテル滞在中に廊下で騒がしい客を不快に思うことしばしばなので、迷惑だから静かにするよう注意すると、皆、肩をすくめて大人しく部屋へ散っていった。

その時である。もうひとつのオーシャンルームからイカツいおっさんが浴衣のまま出てきた。見るからにご立腹である。用件を聞くまでもなく、何が言いたいかは理解できたので、「とんだ時間にお騒がせして申し訳ございません」と深く頭を下げると、一瞬こちらを睨み付けて部屋へ戻った。

やれやれと思いつつ部屋に入り、とりあえず荷物を整理。室内は洋室のベッドルームと和室の2室構造で、思ったより広々している。和室部分は卓とテレビがあるだけで、床の間にも何ら装飾がなく、やや寂しい感じがする。押入れもなく寝具はないので、純粋に居間として使うようだ。逆にベッドルーム部分にテレビはない。襖を開け放てば、和室のテレビが見えないこともないが、それにはテレビが小さすぎる。

ベッドは140センチ幅で、7インチ厚のマットレスとカバーと一体化した寝具を使用。ソフトな寝心地だった。ベッドと窓の間には、籐椅子とテーブルのセットが置かれ、窓の方を向いている。窓は横幅一杯だが、開閉は不可。椅子に座って海を眺めるには窓が高すぎるし、吹き付ける潮によって汚れてしまっている。

デスクは部屋の片隅に置かれ、ドレッサーを兼ねるようにミラーが取り付けられている。家具は、このデスクを除いては比較的新しく見える。壁紙なども含め、改装してそれほど経っていないようだ。その割に、冷蔵庫なし、ドライヤーなし、メモ用紙とボールペンもなしと、不便な面も置き去りになっているが、需要もないのかもしれない。

バスルームは140×180センチの旧式のユニット。洗浄機能付き便座もなく、シャワーやカランの水圧も低い。その上、排水に問題があるらしく、バスタブの栓を抜くと、排水口から湯が溢れてくる。タオルはオレンジ色で、大小2枚ずつ。バスマットはひどくボロボロだった。アメニティも少なく、シャンプーやコンディショナーもないので、自分のものを持参する必要がある。

朝食は7:30からだが、8:00には出発しなければならないので、7:15に用意してもらえないかと頼んだら、応じてくれた。朝食の前に、周辺を散歩してみた。夜にはわからなかったが、ここは和泊ニュータウンという地域で、やや新しいアパートなどが並んでいる。その中途半端な新しさが島の風情を遠ざけており、すでに寂れているような感じを醸していた。

ホテルの敷地内には、ジャングルのような庭園があり、そこに歴代社長の石像が飾ってある。沖永良部のモアイ像という感じ。外壁にはホテル名とともに、開業年がペイントされている。それによると開業は1975年らしい。ホテルとして、設備の充実度は高くないが、その滞在はユニークな思い出を残すことが出来るだろう。

 
プロペラ機でのフライト 機体までは歩いて搭乗する 到着ターミナル

和洋室のオーシャンルーム 広々とした洋室部分 窓側から入口方向を見る

ポップな柄の籐椅子 シンプルな和室 コンパクトなユニットバス

窓からは和泊港を望む 部屋の扉 廊下

階段 ロビー フロントカウンター

レストラン前に並んだ黒糖焼酎のビン レストラン内 朝食

正面側の外観 サイドには丸窓がある 港側からの外観

 観光ホテルえらぶシーワールド(公式サイトはありません) 鹿児島県大島郡和泊町字手々知名512の128 TEL/FAX :0997-92-1234
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