ガーデンからホテルを見上げると、ほぼすべての客室に灯りが点いている。この混雑に、ホテルはしっかり対応できているだろうか。嬉しい悲鳴が本当の悲鳴になっていないだろうか。ちょっと心配である。

今回利用したのは最上階ロイヤルフロアのロイヤルダブル。かつてはジュニアスイートとして売られていた部屋で、改装前には何度か利用したことがあるが、ロイヤルダブルと呼ぶようになってからは初めてだ。面積は45平米。ワンルームタイプで横幅の広い部屋である。

改装といっても、部屋のレイアウトはまったく変更せず、ファブリック類と照明器具やイスを新調するにとどめている。だが、印象は大きく変わった。使われている布や色調が入れ替わっただけで、まるで見違えるように明るくなった。基本的に収納家具やデスクは以前のままだが、表面を塗り替えたらしく、艶やかに見える。元来立派な家具を揃えているので、下手に新調しなかったのは賢い選択だったと思う。

だが、デスクに添えられた新しいイスは、キャスター付きなのに4本足で不安定。ゴールドを思わせる二人掛けのソファは、もう一回り大きいサイズでもよかった。それに、せっかく液晶テレビとDVDプレイヤーを導入し、地デジにも対応したのに、ディスプレイが26インチとは小さすぎる。特別階なのだから頑張って45インチくらいのものは入れて欲しかった。

一方、ベッド周辺は完全に新しくし、心地よいマットレスとデュベを使って、快適な眠りを実現した。かつての低くて硬いベッドから思えば、まさに天国の寝心地である。艶やかで上品なスローケットやクッションもまた、日中でもベッドに彩りを添えている。ナイトテーブルには2口のコンセントが設けられ、便利になった。

当然のことながら相変わらず天井は低い。しかし、ダークブラウンの縁取りと、窓際の間接照明がアクセントとなり、退屈させない。また、天井には調光可能なダウンライトも埋め込まれている。そして、ワイドな窓によって、採光も眺望も申し分ない。

バスルームは金具を新調した程度で、ほとんど変わっていない。全体が大理石仕上げで、スタンド型のベイシン、バスタブ、トイレを配しているが、シャワーブースはない。部屋の入口付近に無駄とも思えるスペースがあるので、もう少し大胆な改装工事をすれば、より魅力的なバスルームになったことだろう。

だが、内装よりも給水をどうにかして欲しい。140センチの長さしかない小さなバスタブに湯を張るだけで、15分をも要する。ヒラメのような形状をしたシャワーヘッドも、高水圧あってこそ真価を発揮するタイプなのに、このちょろちょろ水流では心地よさを味わえずにじれったかった。アメニティはアロマテラピューティクス。タオルは3枚ずつ用意され、バスローブはタオル棚の上段にたたんで置かれている。

翌日は正午のチェックアウトまで室内でゆっくりと過ごした。時間になったのでロビーにおりると、そこにはチェックアウトの長い行列ができていた。満室だったのだから仕方がない。フロントも総動員で手続きに追われてる。

チェックアウトを終えてから、ベルに荷物を預け、「パティオ」に向かった。ここもまた混雑していたので、狭い席に押し込められ、やや窮屈な思いをしながらメニューを開いた。だが、注文が決まっても一向に係が来ない。これじゃファミレス以下だ。押しボタンが欲しいところ。

やっとの思いで係の気を引き注文を済ませたが、今度は待てど暮らせど料理が来ない。なんとスープが出てくるまでに40分を要した。その後も料理の順番を取り違えたので、一度下げさせたが、再度タイミングが来て運ばれたのは、放置されて冷え切った先ほどの皿だった。

文句を言いたかったが、隣の席では老人に対してお冷のブッカケをやらかすし、誰も彼もがパニック状態で仕事をしていた。それみたことか。暇な時にあれだけいい加減な仕事をしてサボっていたツケが廻ってきたのである。暇な時なら冷静な判断とともに丁寧な仕事が可能。そういう時にこそ、必要以上の注意を払って、仕事の流れを体に叩き込まなければならない。慌しい時には頭など使っているヒマはないのだ。体が無意識に動くようでなければ、満席のレストランでサービス料を取れる給仕などできっこない。こんな仕事ぶりでは、この日一日、従業員にとっては時間が経つのがやけに遅いことだろう。