コンラッド 東京 Executive City Suite
Conrad Tokyo
2009.04.25(土)
東京都港区
怒-3

「セリーズ」店内
 
一流にしがみつけ! 高級ホテルは洗練された空間で満たされている。優れたデザイン、ゆとりあるスペース、豪華な装飾、花々の香り、心地よい音など、さまざまな要素の見事な調和が高度な洗練を感じさせるのだが、完成度が高いだけにわずかにバランスを崩しただけで印象は大きく変わってしまう。

高級ホテルの空間に相応しい服装や振舞いの人々の存在は、互いを引きたてあうのに対し、少々乱暴な言い回しかもしれないが、素養も心づもりもない不釣り合いな人々がいるだけで、たちまち不協和音を生じることになる。

美術館で名作を眺めたり、劇場で舞台を鑑賞する時は、よほどのマナー違反がない限り、客が作品を台無しにすることはないが、ホテル空間は客の存在も含めてステージ上の世界のようなものであるから、客もどこかに演じるような気持ちを保つのが望ましい。

せっかく大枚はたいて素敵な雰囲気を味わおうと出かけたのに、空気が乱れ切っていてそんな気分ではなかったという話はよく耳にする。近頃は高級ホテルも身近な存在になったが、ホテルがその都市の品格を象徴していることには変わりがない。気軽に利用するにしても、自らがその気品に寄与しているかどうかを、常に意識してもらいたいものだ。

この日のコンラッドは、いささかバランスに欠いていた。だが、今のべたような人為的な状況とは真逆であった。それはパブリックスペースがあまりに静かだったからである。高級ホテルの空間を独り占めしているようなものだから、それこそ贅沢と考えればいいのだろうが、ある意味、観衆のいないスタジアムでプレイしてるかのごとくで、かえって落ち着かない。

チェックイン時など、1階のエントランスから28階のロビーを経て、37階のエグゼクティブラウンジに至るまで、客に会わないばかりか、従業員にすら一人も出会わなかった。全員、宇宙人にさらわれたのかと思うような、ちょっと異様な雰囲気すら感じられた。しかし、これもまた偶然のいたずらなのだろう。

これほどのホテルで、誰にも遭遇しないほどにスタッフ配置が手薄であることは考えにくいし、土曜日なのだから客だってどこかには大勢いたはずだ。それだけに、狐につままれたような気分が尾を引いたのであった。

客室は前回と同じシティスイートが、今回は選択するのではなく、あらかじめアサインされ用意してあった。ベッドには復活を強く要望した真っ赤なスローケットが戻っていて、なくしていた大切な宝物が見つかった時のように嬉しかった。やはり、この内装のバランスを保つには、鮮やかなスローケットが欠かせない。

リビングのローテーブルには、ボックスのフラワーアレンジメントとマカロンが用意され、無言で歓迎してくれている。今日もここに来てよかったと思う瞬間である。

客室清掃に関しては概ね満足だったが、細部には至らない点も見られた。前回も気になったバスタブの内側の他、テレビリモコンや電話機など、客がよく触れる部分が清潔ではなかった。

それより問題が大きいのはスパの男性用ロッカールーム。女性用がどんな様子なのかは知らないが、少なくとも男性用ロッカーをメンテナンスするのは、若いアルバイトっぽいスタッフで、仕事ぶりを観察している限りは、どうも適当にパパッと整えているだけのようだ。彼らの仕事はそこまでなのかもしれない。だが、冷水機の受け皿がカビのようなもので汚れていて、まるで排水溝のようなのに、スタッフの誰も気がつかないことには驚いた。

プールサイドの様子も、開業当時からすると徐々に世俗的になり、市民プールのようなムードがじわじわと勢力を強めている。洗練の守り神を担う立場のスタッフはいないのだろうか。もったいない話だ。

夕食はルームサービスで、チキンのサンドイッチを。朝食は「セリーズ」を利用した。中国人団体客が多く、彼らは粥のコーナーに夢中で、そこだけがすっかり食べ尽くされていた。この日に限ってかBGMがいつもより大きく、それに影響されてか知らないが、オープンキッチンでの従業員同士の会話がやたらとうるさく感じた。

しかし、いったい何がサービススタッフの気分を荒々しくさせているのか。レストランでは通常ありえないようなサービスぶりだった。係が料理を持ってきた時、テーブルには前の料理の皿がまだ残っていた。すでに食べ終わっているので、もう下げてもらって構わないし、いったいいつになったら下げてくれるのかと、待ち続けていたところだった。

そんな状況のところに料理を持ってきた係は、テーブル脇に立ちつくしたまま、皿をどかしてくれと目で訴えてきたのである。申し訳ないがそれはあなたの仕事だと言うと、一瞬ムカッとした顔を見せ、一度料理を置きに戻ってから、本来の順序でサービスに当たった。

いったい基本をどのように教育しているのか知らないが、呆れてものも言えない。このような状態が続けば、よく見積もって「一流半」という現状から、二流に転落する日も遠くないものになってしまうだろう。何が何でも一流の域にしがみついていてもらいたいものだ。

 
リビングルーム リビングルーム ベッドルーム

ベッドルーム ベッドルーム ベッドルーム

バスルーム バスルーム 景色

ウェルカムフラワー ウェルカムマカロン ルームサービスのサンドイッチ

ラウンジ「トゥエンティエイト」 ラウンジ「トゥエンティエイト」 フロントカウンター前

ビジネスセンター デューティマネジャーデスク ロビーで振舞われる無料のモーニングコーヒー

 コンラッド東京(公式サイト)
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