1階にはフロントとロビーがあり、ロビーにはふんわりとしたカーペット、ラベンダー色の装飾照明、ゆったりとしたソファが配置され、ビジネスホテルというより、温泉地の旅館型ホテルを彷彿とさせる趣きだ。フロントには冷水機とおしぼりウォーマーがあり、到着時に自由に使えるようになっていて、一角には土産物を扱うショーケースが置いてある。

チェックインはスムーズに行われた。スタッフは昼間は女性、夜は男性と顔ぶれが変わり、いずれも無口で控えめだが、客の顔はよく覚えているらしく、外出から戻ると名乗るまでもなくルームキーが差しだされた。

最初用意された部屋はセミダブルルームだったが、エレベータのすぐ脇で、作動音が気になったためルームチェンジを希望。混雑している中、なんとか調整してデラックスシングルを3連泊で利用できることになった。

セミダブルの部屋には140センチ幅ベッドとロングソファが置いてあったが、デラックスシングルは160センチ幅ベッドを置いている。おそらく部屋の面積は同じなので、ベッドが大きくなった分、それ以外のスペースは減少したという印象だ。ベッドは窓に平行して設置してあるのだが、部屋の幅が狭いため、ベッドの半分近くがバスルーム扉のある壁面から飛び出しており、ベッドの前は通るのが精いっぱいで、何も置くことができない。

ベッドに並んで、ふたつのブラケットとミラーを設けたドレッサー兼デスクがあり、その天端には天然石を使っている。そして、窓際には同じ天然石のテーブルとアームチェアを置いているが、デスクに添えられているのは背もたれのないスツール。しかも天端が狭いので、デスクとしてはあまり使い勝手がよくない。デスクの背中側の壁には、テレビ台があり、その下には空の冷蔵庫が設置されている。

家具は温かみのある木製で、真鍮色の照明金具が華やかさを添えるなど、ビジネスホテルとしてはハイクオリティな内装だ。しかし、クローゼットが狭く、そのほかに収納できる引き出しもバゲージ台もないなど、荷物の整理整頓には苦労した。照明はナイトランプ、デスクブラケット、シーリングがすべてだが、狭い室内を照らすには十分だった。窓からの眺めは、裏側向きなので、これといって魅力はなかった。

バスルームは120×180センチのタイル張りユニット式。タオルは大小1枚ずつで、妙なにおいがするし、アメニティは最低限の品揃えと、バスルームとしては三流ビジネスホテルの域を出ない。

朝食は1階フロント脇のティールームで無料サービスされる。このティールームは、おそらく以前はソファなどが配置されたラウンジ風だったのだろうが、今では社員食堂のようなそっけない内装になっている。日中は喫茶室として営業しているようだが、この居心地では利用客がいないのも無理はない。無料で振舞われるのはコーヒー、ジュース、焼き立てパン。この焼き立てパンが、種類も豊富でなかなかの味だった。

他に、有料の朝食が2階の料亭「西條柿」で提供されている。こちらはすべて個室の座敷。和洋がチョイスでき、別の日にそれぞれ試してみたが、圧倒的に和の方が充実しており、洋の方はこれなら1階の無料サービスで十分という印象だった。それより気になったのは、朝っぱらから板場で従業員同士が激しく罵り合う声が店中に響き渡っていたこと。何があったのか知らないが、気分が悪いしみっともない。

それとこれとが関連しているのか知らないが、このホテルは、チェックアウトした翌日から亀の井ホテル山口徳山に変わったらしい。そのような案内は館内のどこにもなかったし、そんな気配すら感じなかった。チェックアウトの際もなんら変わった様子がなかっただけに、これを知った時には驚いた。