完熟金柑

12日間の関西滞在を終えて、久しぶりに東京へ戻ってきました。
暮らしていた時期を除けば、これほど長く関西にとどまっていたのは初めてのことでした。

大阪、神戸、京都。近接していながらも、それぞれに土地柄があり、暮らしている人々の気質にも個性が際立っているのが、深く印象に残りました。

関東地方にも、東京を中心として大都市圏が広がっていますが、東京の存在があまりに圧倒的すぎて、関西のようなバランス感はありません。
そして、いまや東京には世界中から来たの人々が溢れかえり、暮らしてる日本人も出身地はさまざまです。

そのせいでしょうか、東京では人とのコミュニケーションに際し、無意識のうちに慎重になります。

その点、地方に行くと、気持ちが通じやすいというか、相手が考えていることも理解しやすいと感じることが多いように思います。

今回の関西でも、そう実感する機会がたくさんあり、基本的に人見知りの激しい私ですが、滞在中は人々と接することにワクワクするような気持ちになれました。

東京に戻り、山のような郵便物と宅配を整理していると、中に宮崎からの荷物がありました。
これはもしや!と思い、逸る気持ちで開封すると、期待通りのオレンジ色の宝石がぎっしり詰まっていました。

これぞ宮崎名産の完熟金柑です。
宮崎といえば、地鶏やマンゴーが有名ですし、他にも日向夏や焼酎、最近では優れたワインも産出しています。
でも、私のイチオシはこの金柑。甘さと酸味の完ぺきなバランスは、まさに太陽の恵みを感じさせます。

送り主は宮崎の友人。バリバリのキャリアウーマンで、ダークスーツやヒール靴がよく似合うタイプですが、彼女には横顔があります。
ゆくゆくは農業に関わりたいという夢を抱いていて、安全な食を通じて、命を授かった人々が争うことなく暮らしていける世の中に貢献したいというのです。

彼女の外見からは、とても土いじりしているところなど想像もつかないのですが、そのことを話題にしている時の表情は間違いなく本心を語っており、瞳はひときわ輝いてみえます。
そんな彼女が厳選して送ってくれた金柑は、ひとつ頬張るごとに、未来の子供たちの笑顔がまぶしく弾けるのでした。