佐賀の小学校を訪ねて

この3日間は、今年で5年目となる佐賀県小学校巡回コンサートでした。サクソフォーンの波多江史朗さん、パーカッションの石川昇平さん、そしてピアノの米津真浩さんという豪華な顔ぶれとともに巡る旅は、音楽的にも、気の置けない友人たちとの時間としても、心を豊かに満たしてくれます。

各学校では、それぞれに個性のある子供たちが熱烈に歓迎してくれ、ふたつとして同じ雰囲気はなく、音楽も毎回違った仕上がりになります。わずかな乱れも感じさせないアンサンブルは、お互いを知り尽くした長年の経験によるもの。仮に何かが起こりそうになっても、瞬時に誰かが手を差し伸べ、サポートし合える関係ですから、安心して音楽に集中することができます。

コンサートは1日に2回。午前と午後で異なる学校を訪ねるので、毎回ステージセッティングから始めなければなりません。エレクトーンの運送、組み立て、配線は、毎年ツアーに同行してくれているベテランのスタッフがきちんとやってくれます。ドラムスは9つに分けてパッキングされたものを、手分けして組み立てます。ピアノは望ましい位置に移動。ものの15分でステージが出来上がります。

リハーサルはしません。時間まで、それぞれに響きを確かめたり、必要な稽古をしながら過ごします。その間にも、お互い無関心のようでいて、コンディションを感じあっています。

時間になると子どもたちが体育館へ続々と集まり始めます。そして盛大な拍手に迎えられてステージへ。見慣れない雰囲気の男性4人ですから、やもすると威圧感があるかもしれませんので、親しみのある振る舞いを心がけます。しかし、さりげなく気品をまとうことも忘れません。

ソロやアンサンブルの演奏に加えて、それぞれの楽器に関する丁寧な説明や、子どもたちを巻き込んでの体験コーナーなどもあり、70分のコンサートはあっという間です。集中して聞く。くつろいで楽しむ。そんなメリハリを1年生から6年生までみんなが示してくれるので、コンサートはいつもスムーズに進みます。

午前のコンサートが終わると、速やかに片付けて次の学校へ。みんなでお昼を食べたら、また午前と同じようにステージを整え、コンサートをします。まだ活気の余韻が残ったままの会場を後にするのは、後ろ髪引かれる思いですが、また次のコンサートのために体力を取り戻すことも大切ですので、その日の宿へと向かいます。

こうして慌ただしく過ごしているうちに、たちまち3日が過ぎました。4人でのアンサンブルは、新しい発見の連続。また、ソロとはまったく違う体の使い方をするので、体力的にはソロより消耗しますが、気分的には比較にならないほど楽です。そして子どもたちと接していると、その間は元気がどんどん湧いてきて一緒になって盛り上がり、後にひとりになった時、調子に乗り過ぎたと反省することしばしば。でも、これも忘れがたい思い出です。

また、今回は、空き時間を利用して、コンサートを数多く控えている米津さんのオーケストラ合わせの代役稽古をしました。本番がなくても、合わせて弾くだけでも実に幸せでした。

最終回の学校でのこと。体育館の脇でエレクトーンを解体していると、一年生が3人、私を見つけ、「あ、ベートーベンだ!」と言いながら駆け寄って来ました。「ベートーベン知ってるの?」「音楽室に写真が掛けてある」「似てるかなぁ?」「似ちょる」「光栄だなぁ」「あ、足の鍵盤だ!どうなってるの?」「触ってごらん」。ほんの数分ですが、触れ合いの時間でした。

長崎空港では、姜建華さん、楊宝元さん、チ・ブルグッドさん、長尾博子さんのグループと遭遇。久しぶりの再会に、会話もおおいに盛り上がりました。

考えてみれば、波多江さんとは今年3度目ですが、石川さんや米津さんとは昨年の佐賀以来、1年ぶり。会えばたちまちブランクが埋まる間柄の仲間がいることを、とても幸せに思います。

しかし、先日もお伝えしたように、エレクトーン運搬の費用が増加の一途をたどっており、このままでは継続が困難です。音楽に触れ合う子どもたちを見ると、この活動には大きな価値があり、たとえ困難でも誰かが為すべきことだと感じずにはいられません。なんとか解決策を見出し、継続したいと強く願っています。

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