The best of Gordon Ramsay Tokyo

5月末で閉店したコンラッド東京のゴードン・ラムゼイ。お気に入りの店のひとつだったので、閉じると聞いてとても残念です。あまりご馳走を食べようという気分でもない時期でしたが、最後のチャンスに出掛けて来ました。

閉店の月には、ゴードン・ラムゼイの魅力がたっぷり詰まった特別コースが用意されていましたが、今回は無理を言って、オリジナルのコースを仕立ててもらいました。

スターシェフへのオマージュと共に、次の店でもシェフに就任することが決まっている前田シェフのオリジナリティが織り込まれた料理を。それがリクエストです。

週末とあって、店は満席。厨房も給仕も戦場のような慌しさでしょう。でも、ダイニングには、ゆったりとしたいい空気が流れていました。

トラディショナルとモダンのフュージョン。でも、決してモダンさが出しゃばらない。それが私の好みですが、見事にストライクを狙った料理に思わずうっとり。

とりわけ、前菜のフォアグラは、実に滑らかな舌触り。添えられたトリュフ入りブリオッシュのくらくらするような香りが食欲をそそります。

どの皿も、細心の注意を払って丁寧に盛り付けられています。サンプル写真を撮る時以上の細やかさかもしれません。

しかも、見た目だけではありません。まさに食べ頃という温度で迅速に運ばれてくるので、いかにも美味しそうに見えますし、実際にとびきりの美味しさです。

そして、香りの素晴らしいことと言ったら。時に爽やかなハーブが、時に濃厚なスパイスが。これ以上に食欲をそそるものないと思えるくらい幸せな香りがテーブルいっぱいに広がります。

こうしたパーフェクトな料理の価値を、給仕長の見事なサービスが一層高めてくれました。料理がよければよいほどに、給仕の責任は重大です。

見渡してみると、私はラッキーでした。ホテルのダイニングは、どうしても給仕の質にばらつきがあります。明らかに経験が乏しく、努力はしているけれど洗練に欠ける給仕も数多くいます。

彼らが、エレガントで完ぺきな先輩給仕長のサービスを見て、憧れや目標を感じてくれているといいのですが。

帰り際には、世界最高のオーケストラが演奏する人類の最高傑作を聞いた気分だと感想を述べました。

今回のような極めて質の高いディナーは、この店を何度も利用して来た中で初めての経験です。やればできるけれど、ふだんはできていないと言っては意地悪かもしれませんが、もっと上を目指し続けてくれることを願います。

ミニラディッシュ クリームとオリーブで

グリーンピースの冷製スープ ポレンタとパルメザンチーズ

フォアグラのテリーヌ ソーテルヌとカモミールのゼリー 季節野菜のギリシャ風マリネ トリュフ香るブリオッシュと共に

アスパラガスのグリル うずらの卵とピンクグレープフルーツのオランデーズ

真鯛のヴァプール 蟹と根セロリのカネロニ アーティチョークのロースト添え レモンタイムのヴルーテ

牛フィレのロースト じゃが芋のブーランジェール ほうれん草のソテー 玉葱のピューレ トリュフとマデラ酒のジュ

パイナップルのキャラメリゼ グラニテと共に

タルト・タタン焼きたて林檎のパイ ヴァニラアイスクリーム添え