おわかれの春

春は出会いと別れの季節です。そして、それらは時として突然やってくるもの。いつもそこにあるのが当たり前のようになっているものが、いざ失われるとなると切ないものですね。

今日は演奏会に備えて髪を切って来ました。悩み事が多いと急に白髪になることがあるという話は聞いたことがありますが、まさか自分がそのようになるとは。一気に白髪が増えました。

もう10年通っている馴染みの店。担当の人以外に、ハサミをあてさせたことはありません。そこは小さな店で、ふたりの美容師とひとりの見習いが働いています。

見習いは、20代の男性。初めて会ったのはいつだったか記憶にありませんが、それくらい前から働いています。店に入ったばかりの頃は、スタイルも垢抜けず、いなかの青年という印象でした。

でも、仕事に慣れるにつれ、髪型がカッコよくなり、服装は素朴ながらもよく着こなすようになり、会話もスマートに。シャンプーの腕は素晴らしく、夢のような心地よさです。

その見習いが今月で辞めるとのこと。どうしてまた?と尋ねると、やりたいことはこれから考えますという返事。思いの丈はわかりませんが、きっと新しい何かをつかむために、とにかく飛び出したい気持ちでいっぱいなのでしょう。男なんてそんなものです。よくわかります。

中年を代表して一言二言アドバイスをと思いつつも、野暮な口出しはしないことに。とりあえず旅行したいとの言葉に、それがいいとだけ答えました。

また会いましょう。どこで接点があるかはわからないけれど。よい人生を。そういって手を差し出すと、照れくさそうに握り返してくれました。後悔したとしても、それは自分の選択。そうやって人や強くなっていくのかもしれません。