ぞうの国のクリスマス

沖縄から都心に戻ったら、やっぱり寒く感じます。でも、上海の寒さを思えば、このくらいへっちゃら。羽田からはアクアラインを通って木更津に直行。スケジュールの合間を見て、念願の市原ぞうの国を訪ねました。

市原ぞうの国には、9頭のゾウのほかにも、さまざまな動物たちが暮らしています。コンパクトで素朴な動物園といった趣きで、動物たちとスタッフの大家族の家に招かれたような気分で過ごせます。この日も、真冬の寒さにもかかわらず、多くの人たちが来場していました。ほとんどが小さな子どもを連れたファミリー。みんなゾウが大好きなんですね。

そして最大の見どころはゾウのショータイム。冬の間でも1日2回の公演があります。大御所のゾウたちは20年以上続けて出演しているのですから、私よりも舞台経験が豊富。最年長のゾウは私と同年齢です。

市原ぞうの国に暮らすゾウのうち、8頭がインドゾウで、1頭がアフリカゾウ。生物学上かなり遠い種族のインドゾウとアフリカゾウが同じショーに出るのは極めて稀です。

今回の出演は私のお気に入りテリーを除く8頭。これだけの数のゾウを一度に見ることが出来るのは、国内ではここだけ。立派な牙を持つテリーが降板とは残念ですが、その分、他のメンバーに張り切ってもらいましょう。

さあ、ゾウたちがパレードしてきました。8頭のパレードはかなりの迫力。サンタに扮した調教師たち、そしてクリスマスキルトに身を包んだゾウたち。観客席の子どもたちだけでなく、おとなたちも大喜びです。

司会を務めるのは、園長の坂本小百合さん。よどみない口調でゾウと調教師をひとり(そして一頭)ずつ紹介していきます。園長さんも本当にゾウが大好きだし、調教師たちのことを信頼しているのが伝わってきました。

ショーでは、ゾウたちがさまざまな芸を披露します。どうやって芸を覚えさせるのかというプロセスは、資料館に丁寧な解説が掲示されています。大人気の芸は、やっぱりお絵かき。調教師の指示で筆を運んでいるとのことですが、目の前で絵が仕上がるのを見ても、どうしてできるのか不思議でなりません。

迫力があるのはサッカー。最年長のヨウコがゴールキーパーをして、ここで産まれて今年5歳になったゆめ花がキック。微笑ましいだけでなく、結構スカッとします。

フィナーレは調教師たちがゾウの上に立ちあがって手を振るのですが、ゾウの上は下から見ているのと違ってかなりの高さですので、とてもスリリングです。そして調教師を立たせたまま、ゾウたちは楽しそうにパレード。いや~、盛り上がりました。

さて、アジアゾウとアフリカゾウの違いってご存知ですか?相違点はたくさんありますが、一発で見分けるには、耳の大きさ、顎のラインや頭のコブがヒントになります。

アジアゾウは森で暮らすので、わりと丸っこいボディをしていて、耳は小さめ。コブはふたつあります。アフリカゾウはサバンナ暮らしで、シャープなボディ。耳が大きくあごのラインがシュッと引き締まって、コブはひとつです。

パッと見はアフリカゾウの方がカッコいいです。大きな牙のあるオスならなおのこと。でも、賢さではアジアゾウの方が圧倒的に勝ちだそうです。下の写真はアフリカゾウのサンディ。

ショーの後は丘の上のレストランでランチ。この寒いのにアウトドア席なんてと思うかもしれませんが、日が差して気持ちがいいですし、動物の声が聞こえて楽しいんです。

さっきまでショーの司会をしていた小百合園長が、今度は店先で焼き鳥を焼いているではありませんか。昔、焼鳥屋をやっていたことがあるんですよと園長。香ばしい焼き鳥に秘伝のたれをつけて。

他にも園長手作りのカレーやケーキなどが揃っています。このゾウの国を守るために、想いを実現するために、本当に何でもする人なんだなぁと、胸を打たれました。

私にできるのはこうして時折足を運んで、楽しんで帰ることだけ。でも、それがゾウにとって、そして園長にとって、何よりの励みになることを、私は自分の演奏会を通じて知っています。