この憎めなさ、まさにガヴローシュ Brasserie GAVROCHE, Singapore

今回のシンガポールグルメ第3弾は、シンガポールのショップハウスストリートにある小粋なパリをご紹介します。

レ・ミゼラブルに登場する浮浪少年の名を冠したブラッセリー・ガヴローシュは、パリ生まれパリ育ちのフレデリックコリンが腕をふるう小さな店。シンガポールにいながらにしてパリを味わえると、おしゃれなシンガポーリアンに大人気。そう聞けば行ってみるほかありません。

場所はタンジョンパガー駅から歩いて数分。ベルジャヤのあるダクストン通りもすぐ近くです。少々曲がりくねった道にショップハウスが建ち並ぶ風景は、まさにシンガポール。ガヴローシュはその一角にあり、街の雰囲気に見事に溶け込んでいます。

でも、一歩入ればそこはパリ。しかも気取ったパリではなく、ちょっと下町風なところが小粋です。そうはいってもご心配なく、料理やサービスは正統派。味と雰囲気にうるさい欧米人たちもこぞって愛用しています。

私にとっては初めての店ですが、一緒に行った友人は顔馴染み。であれば、即、私も顔馴染み。そんな感じのフレンドリーさが新鮮でした。シェフもメートルドテルも、友人を自宅に招いた時のようにお客を楽しませようと、自然で温かみのあるタッチで接してくれます。


つき出しはポークリエット。武骨さのある味わいに触れたら、メニュー選びが一気に楽しくなりました。でも、店が暗くてよぼよぼの目には、字が読みにくくて・・・。こんな時は、シェフに「任せるから美味しいものを作って!」とおねだり。

すると「ちょうど1周年記念のスペシャルオードブルを用意しているから、それを味わって」とスマイル。


で、運ばれてきたのが、こちらのパイ。さくさくで香ばしいパイの中には、オマール海老とキノコがたっぷり。そこにビスク風ソースを掛けて食べます。いやいやこれは素晴らしい!

次はなに?と聞けば「好きなものを自分で選びなよ」とスマイルでかわされました。この辺の憎めなさがガヴローシュそのもの。


「Grandpa Henri’s traditional onion soup」。その名の通り、素朴で家庭的な味わいです。チーズのチョイスも一味違いますよ。


「Lemon sole with brown butter, lemon and parsley」。こちらも王道のトラディショナル料理。まったくけれんがなく、直球勝負です。いいですね~。


「Grandpa Henri’s pork hotpot with cabbage and garden vegetables」。シェフではなくメートルに「肉なら何が美味しいかな?」と尋ねて勧められたのがこちら。ポトフのような感じで、クセのない味わいです。一緒に入っているソーセージが素晴らしく美味。


「Crepes with Grand Marnier」。クレープシュゼットは、目の前でリキュールを燃やして香りと炎を楽しませてくれます。


もう一品、今日のお勧めはスフレだというので飛び付いた私。あっという間でに出て来たので、あれ?と思ったら、スフレ型のエアーインアイスクリーム。想像と違ったけれど、これはこれで美味しく食べました。

このように、料理はオーソドックスなものを揃えています。おじいちゃんのレシピによる料理がいくつかあることからもわかるように、シェフは自分の血に染み込んだ味を表現する中で、自分のルーツを探しているのかもしれません。

この店を開く前は、ファイブスターホテルのファインダイニングでシェフをしていたのだとか。シェフの様子を見れば、比較するまでもなく、今の方が幸せで楽しくて仕方ないのだろうということが伝わってきます。

ぜひガヴローシュのホームページもご覧を。陽気な音楽が流れて来ますのでご用心。素敵な挿絵もお見逃しなく。