米子クラシック

米子労音は30年以上もクラシック音楽を聴き続けている音楽鑑賞団体です。今回初めてエレクトーンによるクラシック音楽演奏を取り上げてくれることになり、3月28日に米子文化ホールで演奏会が開催されました。山陰でのソロ演奏会は私にとって初めての経験。皆さんに音楽の本質を味わってもらえるよう、精一杯準備して出掛けましたが、いつにない緊張感と不安がありました。

演奏会前夜に姫路まで行き、当日は姫路労音の車で米子まで連れて行ってもらうことに。天候にも恵まれ、快適なドライブでした。午後、会場入ったら、セッティングをしてひたすらリハーサル。当日のプログラムに入る前に、来月以降のアンサンブル予定曲から2作品を選んで練習を。それだけで2時間経過。それから当日のプログラムを一通り弾きながら、前夜にベッドで考えた工夫を取り入れて試してみることに。今回7カ国7人の作曲家による作品を取り上げているので、いつもよりその国独特のリズム感や間合いを積極的に表現しようと思ったのですが、やってみると自分でも新鮮に感じられて気に入りました。

演奏会はオンタイムでスタート。開演直前まで楽しげなおしゃべりが聞こえていた客席も、照明が変わると一瞬で静寂に。怖い先生が入ってきた時の学校の教室を思い出します。さて、いろいろと不安はありますが、胸を張って出て行くとしましょう。

シンプルな照明も心地よく、美しい響の会場にも手伝われながら、落ち着いた気分で演奏が進んで行きました。でもお客様の反応はどうでしょう。先月の北九州同様、拍手は淡々としていて、表情も厳しいように見えます。私の実力では、米子の皆さんを満足させることはできないのかと思うと、広い舞台がとてつもなく広く感じられました。こんな時、アンサンブルなら共演者が救いになりますが、ソロの孤独が身に沁みます。でも、自分で決めたプログラムは、最後の一音まで責任を持って奏でなければなりません。

更に私を悩ませたのが、鍵盤のコンディション。客席は寒いくらいだったと聞きましたが、舞台は暑く、次第に汗ばんで来ました。鍵盤が湿り、特に黒鍵は圧力を掛ける度に滑り落ちそうになります。圧力バランスが狂うのは、表現の観点では致命的。せっかく緻密に練り上げた音楽設計が台無しになるので、派手なミスタッチ以上に後悔の原因となり、時にはトラウマにもなります。エレクトーンでベストコンディションを得るには、まだまだ工夫が必要だと痛感しました。

終演後は演奏を労う集まりを設けていただき、親しく和やかなひとときを過ごしました。さすがクラシック音楽を聴き続けてきた皆さんだけあって、とても深いところに気づいてくれますし、エレクトーンの可能性にも期待を寄せてくれたのが嬉しかったです。でも、本当の意味で皆さんに満足してもらうには、まだまだ探求が必要です。米子の皆さんには、更に先を目指す新たな意欲をいただきました。早速、取り組んで行きます。

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