空想の旅

馴染みのホテルレストランに、いつも優れたサービスでくつろがせてくれる外国人がいます。たいへん忙しい店なので、必要な会話しかしたことがありませんでしたが、珍しく閑散としている時に、生まれ故郷について尋ねることができました。

そこは東京から飛行機を3度乗り継いで着く、ヒマラヤのふもと。訪ねたことのない場所の話を聞きながら、心でイメージを膨らませます。

目の前に巨大な雪山が迫って見えていても、それほど近いわけでなく、故郷の街に雪が降ることはないそうです。

穏やかで誠実な給仕から出る言葉のひとつひとつが、心に浮かぶ風景に、絵具のように彩りを添えて行きます。

10月には国を挙げての祭があり、久しぶりに帰郷するとのこと。両親に初孫を披露するのが何よりの楽しみだと微笑んでいました。

よい休暇になることを祈りつつ、土産話を聞くのが楽しみです。こうして何の縁もなかった果ての街が、訪ねてみたい場所のひとつになりました。