旅は道連れ

関西での全スケジュールを終え、帰京途中でのエピソード。それは身も心も疲れ果て、願わくば誰とも接したくない時に起こりました。

大阪から羽田までは、JALから送られてきたアップグレード券を使ってファーストクラスに乗り、ゆったりご機嫌。でも、食欲がなくて機内食は遠慮して、目を閉じました。

そうしたら10分ほどの睡眠が取れたのです。乗り物では決して眠ることが出来なかったのに、弾けなかった曲を無傷で弾けた時のような驚きです。ま、それはどうでもいいんです。

羽田に着いて、やっぱり気になったのが、5番のりば。次の新宿便まであと5分だったので、バスカウンターで急いでチケットを買いました。

手にしたチケットを見ると、バスの出発は20分後。どうやら満席のため次の便になったようです。

で、今回も5番のりばのホスピタリティには触れられず終い。その上、バスは満席で、補助席まで使っての混雑ぶりでした。

私の脇には、出発ギリギリに乗って来た子ども連れのうち、男の子が座りました。すぐに私に興味を示し、長い会話が始まったのです。

保育園で年長の彼は、英才教育を受けていると胸を張り、すでに小学校4年生レベルの算術を使っていると、2ケタ×2ケタの暗算を披露してくれました。

ほめると調子に乗ると思ってクールな反応をしたところ、今度は身の上話が始まりました。見知らぬ私が、そこまで赤裸々に家族の秘密を聞いていいのかと動揺するような内容です。

2列前に座っている彼の母親は、至近距離でこんな会話がなされているとも知らずに居眠り中。

私は余計なことを言わず、ひたすら話を聞いていただけですが、彼は思いがけず友達が出来たと大歓び。誰にでもそうなのか、何か感じるものがあってこうなったのか、10倍も長生きしている私は余計なことばかり勘ぐってしまいます。

ちょっと大人びた年長でしたが、これが本当の大人なら、うんざりしていたかもしれません。子どもの持つ軽快なテンポ感は、むしろ気持ちを軽くしてくれました。

渋滞でいつもの倍近い時間を要したバスですが、無言で渋滞に苛立つよりは、ずっと穏やかに過ごせたような気がします。