演奏会前夜の緊迫感

夜が明ければコンサートの一日が始まります。もう何年も続けて開催してるシリーズの演奏会ながら、準備の大変さでは文句なしにトップクラス。とりわけ今回はギリギリの今になっても、自分が納得できずに試行錯誤を重ねています。

テーマは日本の童謡や唱歌。プログラムは誰もが知っているシンプルな曲ばかりですが、これらの作品は、まるで短歌のように、余計なものをすべて削ぎ落しながらも、驚くほど多くのものを訴えかけてきます。

そうした抒情にマッチするよう、注意深く音色を選び、弾き方を工夫しているのですが、なかなかしっくりときません。

さらに困ったことに、1曲ごとにはなんとか仕上げられても、プログラムとして連続して弾いてみると、やっぱり何かが違う、でも何が違うのかわからないというジレンマに陥ります。

プログラムの多くは、ゆったりとしたテンポのものや、軽やかで優しいタッチのもの。リズミカルで明るい曲は、ほんのわずかです。

シンフォニーの世界に置き換えれば、第2楽章だけを次々と演奏するような静けさと緊張感。この抑制したテンションを終始保つことにも戸惑いがあります。

名曲揃いなのに、そのよさを活かしきれなければ、それは演奏者の責任です。今回のプログラムはこれまでに経験した演奏会の中で、最も困難かもしれません。

おそらく私のライフスタイルでは、この先100年生きても、このプログラムに求められる感性は成熟しないでしょう。

それなのに、残された時間はあと半日ほど。かといって、私は諦めたりはしません。私の理解さえ及ばないものに一歩でも近づくため、最後の1秒まで粘ってみます。

コンサートは当日券もあります。プロデューサーいわく、舞台は演奏者が苦しんでいるほど面白いのだそうです。その観点では、今回の演奏会は間違いなく面白いですよ。