エレクトーンのタッチコントロール

飛行機が大阪に着き、稽古のため弟子のところへ向かう道すがら、幼稚園児3人組と遭遇。雨の中、傘もささない私を指さして「あ、アメリカ人」と一言。閑静な住宅街で、私はどれほど浮いていたのでしょうか。

さて、余計な話はこのくらいにして、エレクトーンのタッチについてお伝えしましょう。

どんなジャンルの音楽を弾くにせよ、現代のエレクトーンではタッチコントロールの習得がとても大切です。特に、クラシック作品を演奏する場合は、タッチがすべてと言えるほど重要かもしれません。

音のニュアンスをコントロールするのは、イニシャルタッチ、アフタータッチ、ホリゾンタルタッチの3つ。ホリゾンタルは音程をコントロールする特殊効果ですので、ここでは主にイニシャルとアフターについて考えます。

イニシャルタッチでは、音の立ちあがりをコントロールできます。ピアノや太鼓同様、強く叩けば張りのある明るい音がし、弱く叩けば柔らかい音がし、比例して音量も変化します。

エレクトーンの鍵盤が感知しているのは、鍵盤が動く速度であって、力学的な強さではありません。そのため、イニシャルタッチを自在にコントロールするには、打鍵の速度を的確にコントロールする必要があります。

まずは姿勢が重要。イスは楽器に近すぎないように置き、腹と鍵盤の間に適度な間隔を作って座ります。腕は肘が自由に動くよう、脇を付けずに構えます。

この状態で、十分な高さから自由落下運動を利用してスピーディな打鍵をすれば、イニシャルタッチは必ずフルレンジで掛かります。むしろイニシャルを弱くしたい時の方が、速度を制御するために筋肉を使うことになります。

また、タッチには明確なイメージを持つことが大切です。単に強いとか弱いではなく、晴天の霹靂のようなとか、眠る恋人の肩に触れるようなとか、誰も開けたことのない扉を開く時のような緊張とためらいとか、その音が要求する明確なイメージを生み出すことも同時に楽しんで下さい。

アフタータッチは、同じ鍵盤楽器でもピアノには無縁のコントロール法です。鍵盤を押した瞬間から離す瞬間まで、アフタータッチコントロールは延々と続き、一瞬たりとも気を抜くことはできません。

多くの人がアフタータッチを「必要に応じて圧力を掛けるもの」だと考えていますが、私の場合は「必要に応じて圧力を抜くもの」です。つまり、鍵盤を押している間は、ほとんど常に圧力が掛かっており、息を抜くにつれ、あるいは弓を離すにつれ、圧力を抜いていくのです。

音から音に移る時にも、アフタータッチのレンジは引き継がれなければならず、これを自在にコントロールするには、かなりの鍛錬が求められます。

特に子どもたちは、力に任せて圧力を増していくことはすぐに習得しますが、圧力で音を減衰させるテクニックに関してはぎこちない場合がほとんどです。

体が小さいと十分な圧力が掛けられないと考えている講師もいるようですが、アフタータッチに必要な圧力は、小学生低学年でも十分に持っています。うまく圧が入らないのは、圧の掛け方が間違っているのかもしれません。

私の経験上、指先でコントロールしようとしても、繊細な調整は困難ですが、腕を軸にしながら胸を使ってコントロールすれば巧くいきます。この体勢に慣れるには、腕立て伏せのように、自分が鍵盤を押すのではなく、鍵盤に自分の体を押し返してもらうというイメージを持つといいと思います。

アフタータッチが大切なのは、表現上欠かせないものであるのはもちろんのこと、エレクトーンの音色自体、ブリリアンス(音の華やかさを調節する機能)で明るくした音よりも、アフタータッチで圧を掛けた音の方が、ずっと芯があって豊かに響くからです。

明確なイメージを持った繊細なタッチコントロールにより、エレクトーンの本当の音を引き出して、より魅力的な演奏を目指してみてはいかがでしょうか。