Shanghai morning, Nanxiang evening

上海は時間帯によって大きく表情を変えますが、私が好きなのは昼の活気でも鮮やかな夜景でもなく、朝独特のけだるさです。

少なくとも私がこれまで目にしてきた上海の朝は、いつも薄い靄につつまれており、スッキリと晴れ渡るという方が珍しいようです。浦東の向こうから上がる太陽に近代的なビルが影絵のよう。黄浦江を行き交う船もまだわずか。

朝食は早めの時間に。今日はサラダとフルーツ、ブランのマフィンとホールウィートのクロワッサン、そしてデトックスジュース。中国のスイカは大好物。

その後は、まだ誰もいない穏やかなホテルロビーで、この日一日に向けて心の状態をチューニング。一番好きな時間です。

部屋に戻る時も、ゆっくりと館内の雰囲気を味わいながら。ちょっとしたところにも、心を動かすものたちが潜んでいますから、見逃さないように。

そして支度を整え、本日の公演に出発。どんなコンサートになるかワクワク半分、何か問題でもなけりゃいいけどと不安半分で。

結果的にはワクワク5パーセント、心配95パーセントという感じ。こうも演奏の集中力を削ぐ出来事が重なると、障害物競争以外の何ものでもありません。

とにかくハプニング満載ながらも2公演を終えましたが、一気に10年歳を喰ったようにどっぷり疲れました。

今日は上海郊外にある南翔で教育コンサートだったので、オーディエンスは小学生から高校生までの学生たち。目を丸くしながら聞き入ってくれる姿に、私がどんなに不本意でも決して手を抜いてはいけないんだと教えられました。

一冊の本が書けそうなほどのエピソードの中から、公開しても差し支えないものをひとつ。今日のコンサート会場が、不思議な構造だったという話題です。

ホールには舞台と客席の他に、ホワイエや楽屋など、さまざまな付帯設備があります。今日のホールにも舞台袖近くに楽屋がありました。

楽屋のすぐ隣は駐車場への扉です。まあそれはどうでもいいのですが、楽屋からホワイエには客席を通らなければ出られません。更によくわからないのは、楽屋前廊下と客席の間にある扉は、オートロック式で、一度閉じると客席側からしか開けられないのです。

もっと困ったことに、舞台袖の扉も同様で、一度閉じると舞台側からしか開けられません。

開演直前にそれらの扉が主催者側の係によって閉じられましたが、その結果、出演者が舞台に行けないという状態になってしまいました。拍手で迎えられても、ロックされていて出られないのです。

インターフォンで管理事務所に連絡をし、警備員に開けに来てもらうという騒ぎに。どうもそこは閉じてはいけなかったらしいのですが、ということはチケットがなくても、駐車場出入り口から誰でも入れるわけですね。本当によくわからない構造です。

でも、子供たちは本当にかわいいです。

さて南翔といえば小龍包。この地が起源だと言われているそうです。終演後に1871年から続く老舗の小龍包店につれて行ってもらいました。

店の名は「上海古猗園餐庁」。南翔の名勝地に隣接しており、中国式の建物がこれまた興味深い感じ。望鶴楼と呼ばれる建物に入ると、高い天井のホールにたくさんのテーブルが並んでいます。

極めて実務的な係に案内されると、テーブルにビニールの使い捨てカバーが掛けられます。まあ、ある意味衛生的。窓の外には庭が少々見えていますし、窓枠にも風情があります。

酸辛湯は20元。

小龍包は20個で25元。

10個追加!

しめて800円弱。安上がりに満腹になりました。

さあ、明日は更にものすごいことになっています。今から胃に穴が空きそうですが、負けずにしたたかに、そしてオーディエンスのために弾きます。それだけは譲れませんから。